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ハラカミインタビュー

2005年に大学で特別講義をしてもらった際にインタビューを行い、研究室で配布していたフリーペーパーに掲載したものを転載します。

ー音楽の仕事について
最初からいうのもなんですが、自分のアルバムの売り上げで生活できてるわけではなくて、CMなどの外注仕事が大きな収入になっています。去年CM音楽をいくつかやったので、それについてお話したいと思います。去年の8月ごろから放映されていた、日立のホームセキュリティのCM音楽の依頼がCMディレクターから来ました。30年ほど前の小坂明子のヒット曲である「あなた」の編曲をやって欲しいとリクエストされました。ボーカルは決まっていなかったので、同じレーベルの人にお願いしたのですが、彼女は東京に住んでいて、インターネットを利用して曲を送り、東京でいくつかのパターンで歌の録音をしてもらい、修正をして歌のパートを完成させました。今回はCMのプランナーとか監督が、僕のプロデュースで曲を作って欲しいという依頼だったので、すごく仕事はしやすかったですね。その後、同じCMスタッフからのもう一つやりました。

ーメジャーレーベルとインディーズレーベルについて
CMの仕事などは収入になるので嬉しいのですが、いろいろと制約もあります。制約の無い音楽制作として自分のアルバムを制作しています。音楽にはメジャーとインディーという2種類のレーベルがありますが、僕は今インディーズレーベルに所属しています。単純に何が違うのかといえば、資本力が違います。メジャーレーベルのアーティストはよく雑誌やテレビにでますが、その分宣伝費も多くかかっています。レコード会社の下にマネージメント会社(いわゆる事務所)が入っていて、アーティストのスケジュール計画や、イメージ作りをしています。それらの会社がアーティストを商品として商売をしているわけです。かかった費用分だけ儲けなくてはならないわけですね。僕は事務所には所属していなくて、個人でレーベルと契約しています。年間の計画なども無くて、アルバムができたら販売してもらうことになります。無理に作品制作させられることも無くて、いいのですが、その分実入りも少ないです。メジャーレーベルではこうは行きませんね。
メジャーレーベルでは印税の他に月給までもらえますが、その分マネージメント会社の計画に基づいて活動し、売れるものを制作しなければなりません。僕には計画もなければ月給もありません。その分自由に制作をすることができます。インディーレーベルには制約の無い中で、自由に音楽制作をしようという場所です。そのかわり、あまりお金にはならないので、音楽制作の他に仕事をしている人が多いです。
僕は、京都の自宅で一人で制作をしています。音楽機材もすべて自宅にあるので、制作にはあまりお金はかかりませんし、CMなどの音楽の仕事が割と舞い込んで来るので、音楽だけで生活はできています。
メジャーとインディーのどちらがいいのかということではなくて、どのようにしたいのかということが重要です。自分がいいと思うものを作りたいのか、他人にいいと思ってもらえるものを作っていきたいのかを選んでいるという感じですね。

ー音楽機材について
音楽制作環境は10年以上前から基本的には変わっていません。コンピュータで作曲をしているのですが、そのソフトウェアも変わっていないですね。もうそのソフトウェアを作っていた会社も倒産してしまって、新しいバージョンもでていませんし。よく、楽器やソフトウェアは最新のものを使っていて、たくさん持っているように思われているのですが、今使用しているのは、趣味でカラオケなどをこれから作る人が買うような、初心者向けの音楽セットです。別にお金がなくて機材が買えないわけではないのですが、使い続けている機材に不満は無いですね。それどころかまだ何か知らない機能や、使い方があるのではないかと思っています。現在の機材やソフトウェアは多機能でいろんなことができるようになっています。その反面、操作が非常に複雑になっています。今使っている機材は機能は少ないのですが、音楽制作時に何をどうすればいいのかをすべて覚えていますし、作曲をする時の手順もすべて決まっています。つまり、イメージを具体化するためのプロセスに悩むことなく作業できることが大事だと思っています。そのため、新しいソフトウェアや楽器を導入することで、作曲のプロセスが変わってしまって、音楽が変わってしまうような気がします。今は反対に、今使っている環境でいかにいろいろな音楽が制作できるのかを考え、実践しています。使用する音もあまり変えていないですしね。もともとオーケストラなども使用する楽器は決まっていて、その中で様々な音楽が作られてきました。楽器がシンセサイザーになったからといって、常に新しい音を出し続けないといけない訳ではないと思います。色々なものがある現在において、楽器やソフトウェア、機材が制限された中で作曲を行うことが重要なんです。

2005年7月

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