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人間の人間らしいところが馬鹿らしくもあり愛しい

ウッディ・アレン監督の『カフェ・ソサエティ』ぎりぎりで映画館で観ることができました。

封切から2か月たっていないのに、六本木のTOHOシネマズではもう終わっていて驚いた。東京都内では角川シネマ新宿でしかやっていなく、なかなか世知辛いなぁと思いながら、角川シネマに初めて行きました。

ちなみに角川シネマも来週の金曜までだそうで、都内で観たい方は早めに行ったほうがよさそうです。

角川シネマ新宿の「ホームシアターですか?」ていうくらい小さいスクリーンで観てきたのですが、観に行って良かったと思いました。

以下、ネタばれもあります。

この映画は、ニューヨークから夢を見てハリウッドにやってきた青年ボビーが主人公。ハリウッドには映画事業で大成功し、業界の大物になっているおじがいる。そのおじに仕事を頼ってハリウッドまできたわけです。

ボビーはそこでかわいい女の子、ヴォニーに出会い、恋をするのだけど、なんとその女の子はボビーのおじと不倫中。おじがなかなか離婚しないのもありヴォニーはボビーと付き合うけれど、結局はおじが離婚。ヴォニーはもともと付き合っていたおじを選び、結婚します。

恋に破れたボビーはハリウッドを去り、ニューヨークで新しい飲食店を始めます。そこの飲食店が大当たり!業界の大物が来る、時代の社交場としてもてはやされ、ボビーは大成功。奥さんとなるきれいな女性に出会い、結婚し娘も生まれて幸せな家庭を手に入れます。

そこでうまくいかないのが、人生の面白さであり、ウッディ・アレンの面白さ。話題となった飲食店には、おじと妻であるヴォニーが客としてやってきます。

そして久しぶりに出会ったヴォニーとボビーは、お互い別々の幸せを手に入れながらも、心が揺れ動くことに気づいてしまう…。

とまぁストーリーを説明すると、こんなに簡単に終わってしまうような話なのですが、展開がスピーディーで無駄がなく、ウッディ・アレンらしいウィットにとんだセリフが楽しくて、よくできた映画だと思いました。

ハリウッドの描かれ方は、『ラ・ラ・ランド』と通じるものがあり、アメリカでの「ハリウッド」というひとつの街の文化というか、その街が持つイメージがいかに大きいかを、感じられたのも面白かった。

人は誰だって、「もしあのとき、あっちの道を選んでいたら…」と選ばなかったほうを想像することがあると思います。それは『ラ・ラ・ランド』の回想シーンで描かれたことと同じで、『カフェ・ソサエティ』もテーマは同じだと思いました。

どうしても、選ばなかったほうが素晴らしかったんじゃないか、今手に入らないものが輝いて見えるのが、人間の性なのだと思います。

今手に入れているものを幸せと思えることが、一番幸せなのでしょうけれど。『青い鳥』じゃないけれど、これって本当に人間の永遠のテーマなのじゃないかと思います。手に入らない「何か」を永遠に求め続けるのか、それとも「今」をありがたいと思うのか……。

ウッディ・アレンの映画は、総じてそんな人間のどうしようもなくバカだけど、でもすごく人間らしいと思えるような普遍的な心が描かれていて、すごく好きです。劇的なこともおこらないし、アクションもないけれど、共感できる。

他に見どころとしては、1930年代のハリウッド、そしてニューヨークの雰囲気もたっぷり感じられて、ゴージャスな世界観にひたれるところも良かったです。あと、主人公のボビーがユダヤ系なのですが、ユダヤ系の人たちの描かれ方もなかなか日本では知ることがないのでそこも面白かった。

とにかく見どころはたっぷりで、総合的に素敵な映画でした。

本当に、ウッディ・アレンの喜劇の安定感は、裏切らない。この映画を、御年81歳の方が作っているということが、信じられないというか、本物の巨匠だなぁと思います。


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