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『ムーンライト』は純粋すぎる恋愛映画だと思う

今年のアカデミー賞作品賞を受賞した『ムーンライト』。


前評判からは、いったいどんな重い映画なんだろう・・・と思いながら観に行きました。

以下、ネタバレありですので、これから観たい方はくれぐれもご注意を。



一言で言えば、今の時代においてはリアリティがないくらいロマンチックで純粋な恋愛映画だと思いました。

主人公シャロンが、大人になって、初恋にしてただ一人の愛する人ケヴィンと再会し、お互いの気持ちを伝えあうシーンが、ただひたすらに美しい。

この二人の恋が美しいと思った理由は、主に二つあります。

一つ目。やんちゃだったケヴィンは堅気の料理人になり、弱虫でいじめられていたシャロンは薬の売人としてのし上がっている。大人になってからの、二人が生きる場所は、全く違う世界。しかもケヴィンにとってシャロンが薬の売人として成功(?)していたことは、予想外でありショックもあったと思う。

それでも、二人はお互いの中身が変わっていないこと、お互いの気持ちを受け入れることを選んだ。これはとても幸せなことだと思う。

そして二つ目。シャロンの純粋すぎるケヴィンへの想い。大人になって、強くなっても、自分の心も体も、本当に好きだったケヴィン以外の人に許していなかったこと。こんな純粋な恋、今時なかなかないと思う…。リアリティがないくらい、純粋。

でももしかしたら、マイノリティとして虐げられてきた体験があるからこそ、本当の愛を求められたのかもしれない、とも思いました。

黒人であること、貧困地区に生まれたこと、母親が麻薬中毒であること、ゲイであること。マイノリティのなかの、マイノリティの少年が成長して、恋をする話。

でも、彼の社会的な立場がマイノリティであること以外は、まったくもって普遍的で、昔から繰り返し語られ続けてきた純粋な恋愛の話だと思いました。

そういう意味で、これがアカデミー賞作品賞をとるという評価をされたことは、まだまだマイノリティであるという事実自体が、大きな意味を持つのだなぁということを感じたわけです。本当は、「こんな話、よくある話だよ」って、ありふれた話になることが、理想なのかもしれません…。

ちなみに、昨年観た『キャロル』(アカデミー賞ノミネート作品)は、ケイト・ブランシェッドとルーニー・マーラ演じる二人の女性の恋愛映画でした。個人的には、『キャロル』で描かれていた恋愛のほうが、二人の心模様が丁寧に描かれていて、共感もできたし好きです。

しかしこの『ムーンライト』がアカデミー賞を受賞して、こういう人がいるということを日本でも知ることができるのは、とても良いことだなぁと思いました。

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