わたしをわたしにした街

外国から日本に戻ってくると、いつも驚く。

昨日まで日本語以外がとびかい、別世界にいたのに、日本に戻ると、あっという間に日本の生活に埋もれる。
それがあまりにも早くて自然だから、昨日まで外国にいたなんて、まるでなかったことみたいに感じる。

昨日はとりあえず本郷で髪を切り、会社の近くの東銀座のマツエクに行き、退職前にお世話になって人に渡したい贈り物を探しに銀座の三越をふらふら見てまわった。

本郷の家から駅までの道も、銀座から東銀座まで歩いた道も、道に迷うことも地図を見ることもないし、Wi-Fiスポットを探すこともない。

ふと気になったお店に入ってみたり、目的地に向かって人の波を上手に縫って歩く。

銀座はあいかわらず観光客が多い。外国の人が物珍しそうに写真を撮ったりしているのを見て、微笑ましいように思う。

マツエクをしている間、かかっていた東京エフエムから、一時期好きだった曲が流れてきた。

東京 by 口ロロ (くちろろと読む)

この曲を初めて聞いたのは大学生の頃。
とても東京らしい曲だなと思った。憧れだった東京のイメージにしっくりきたのを覚えている。

あれからたぶん五年くらい経って、いまこの曲をふと耳にしたとき、昔の懐かしさが蘇った。
そしてなんだか、昔から知っている仲の良い友人に思いがけず会って、一瞬でうちとけたみたいな気持ちになった。

憧れというよりも、いまはこの街が、自分の居場所で、いちばん親しみやすい場所だと思う。

東京の日々の一瞬一瞬が、わたしは好きだ。知り合った人も、仕事も、文化もすべて。
ここにいることを、今までぜんぶ自分で選んできたからだ。

音楽でも小説でも映画でも、なんでもない日常のことの大切さに気づかせてくれるものは、尊い。

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