パブリックコメント「AIと著作権に関する考え方について(素案)」 の下書き

今日締め切りのパブリックコメントに出すつもりの下書きです。ご意見あればコメントに。なお、2000文字しか受け付けてもらえないところ、1995文字の本文であるため、内容の追加はできません……今日の23:59締め切りなので、ご意見あればどうぞ、以下のリンクより入って奮ってコメントしてあげてください。

1.はじめに
全体として、今考えられる懸念事項は1~6までで概ね網羅されていると感じた。一方で、「何が重大な問題の素因となりうるか」については、想定が不十分だと考えられる。各項で詳述するが、
・生成AIの問題は加害者も被害者もこれまでの数万倍という桁違いの規模であり、システムで予防しなければ司法手続きが飽和する
・生成AIは容易に利用できすぎるため、これまで顕在化していなかった潜在的なプチ悪党を「手段」と「意欲」両面でサポートし、いやがらせのためだけにいくらでも被害を”出せる”
・生成AIを含めAI技術は嘘つきにとって便利であるため、便利になるほどに潜在的に悪意を持つ人間によるお手軽ツールになりうる
こと、つまりビッグデータ犯罪と悪意のみの犯罪を後押しすることが予測されるが、対策にその視点がない、あるいは十分でない。

(1)学習・開発段階
「非享受目的」については、悪意の視点が抜けている。例えば、絵を描くという能力はわかりやすく称賛されやすいため嫉妬を受けやすい。それに加えて、「絵柄」はほとんど個人認証に近いレベルで認識される。視点を変えれば、嫌がらせをしたい絵師の絵柄をまねて下品、違法、その他品位を貶める作品を多数投稿すれば、多くの人は疑わない。それはこれまでもあったのであるが、そのためには絵柄をまねるために練習したり、自分で手を動かして出来の悪いコラージュを作るのが関の山であり、多くの人間にとっては「手間>悪意」であった。生成AIというツールはこういった「嘘をつく犯罪」を非常に簡単に実行できるため、これまで潜伏していた潜在犯が多数出現することが予想される。一次創作の中には、二次創作でエログロを表現することを明確に禁じている作品も多数あり、絵柄をまねて出品されては裁判の範囲も膨大である。対策については後述。
(2)生成・利用段階
著作権侵害があったか否かについては、どのような手段を用いても判定困難であり、「侵害があった」「侵害ではなかった」いずれの論証も実務上の困難を伴うと考える。「侵害があった」と結論するためには、文化庁の想定している、データアクセスの有無という状況証拠や高度な類似性を直接判定することになるが、生成AIの作る作品数は膨大であり検証困難なうえ、あまりに多すぎるため「著作権侵害をしていないAI利用者」の作品の中に偶然似たものを見つけることも可能となりうる。つまり、まっとうなAI利用者がスラップ訴訟を受けるリスクが避けられない。AIを利用できなかった2021年ごろの作品ですら、一部の絵師の厄介ファンが勝手に「パクり認定」してしばしば問題となっていたことから言っても、より多数の問題が起こることは確実である。他方、「侵害がなかった」ことを立証するのもまたデータ数の問題があり、また元データの透明性を担保できなければ悪魔の不在証明に近い困難性がある。日本の絵描き、イラストレーター、漫画家、絵師、画像データの創作者に限っても数十万はいると思われるが、生成AIが野放しであればざっと100倍の「AI創作者」が発生することを鑑みれば、著作権侵害訴訟解決の難しさは天文学的になる。また、一人のAI創作者によって100人の絵師に対する侵害が起これば、たった一人の著作権侵害が100人の裁判に波及する、極めて複雑な裁判になる。
(3)生成物の著作物性について
生成AIであろうが、著作性を有しうることに異論はないし、創作の自由は守られるべきである。ただしそれは他の著作物の著作権を侵害しない場合に限る。
(4)その他の論点について
主張したい論点は一つだけ、「生成AIについては二段構えの規制をすべきである」。これは、不正競争防止法の前段として商標法が機能するのと同様である。でなければあまりに膨大、あまりに複雑な生成AIを用いた犯罪を処理しきれない。AIはいくらでも休まずに仕事をする。これまでの法規制ではまったく対処できない相手なのだ。具体的には、一段目として「著作権クリアデータ依存生成AIである」「生成AI作成者がマイナンバー様のシリアルをセットで提示している」の二点を生成AIの最低基準とすることである。シリアル値は、マイナンバーでなくても、マイナンバー当たり一個だけ発行されたサブマイナンバーでよい。これらがクリアされたうえで、二段目の規制、著作権や学習データ規約の検証など具体的な裁判に移る。そして悪質な場合はサブマイナンバーそのものを無効とし、次回からは生成AIの発表そのものを違法とする運用である。生成AIであろうと、創作の自由自体は奪われるべきではない。一方で、その自由はルール無視によって剥奪される、いわば生得的免許、ワンアウトで免許剥奪、という運用である。言い換えれば、「生成方法合法」「著作権合法」の二段で生成AIを規制するのである。

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