【100文字ドラマ】【「人生リハーサル」シナリオ】「きっと明日も完璧な1日になるだろう」

abさんの100文字ドラマ「人生リハーサル」をもとにシナリオを書かせていただきました。

【あらすじ】

リハーサルと本番がある人生を幸せに暮らしていた主人公の二郎。彼は何でも完璧にできる優等生。そんなある日、リハーサル日には来なかった転校生、薫がやってきた。が、それ以降リハーサルと本番で異なる出来事は起きなかったので気にも留めていなかった。
先生から成績の悪い薫の勉強を見るように頼まれる。すると、次のテストで薫は全て満点を取り、学年1位になった。テスト返却のリハーサル日に自我を忘れ薫を殴ってしまうが、翌日の本番日に薫から「今日は殴らないの?」と言われ、彼もリハーサル日を持っている人間だったのだと知る。
そこから二人は仲良くなっていくが、リハーサルと同じ行動をとらない薫に恐怖心も抱いていた。そして、あるきっかけで、自分にリハーサル日があるようになったのは優秀な兄を殺し、彼の『人生』を奪ったからだったということを思い出す。
薫のせいでうまくいかなくなりだした人生に対する不満や、このままだと自分も殺されてしまうかもしれない恐怖により二郎は薫のことを殺してしまうが、薫の『リハーサル日』は殺人を繰り返していたため膨大な日数となっていた。

【登場人物】

①高坂二郎(主人公) 高校生 男
リハーサル日と本番日を持っている。
学校ではなんでもできる優等生。親や先生からも期待されている。全てのことが完璧で自分の思い通りにならないと気が済まない性格。
リハーサル日と本番日が自分でもわからなくならないように、リハーサル日は青のネクタイ、本番日は赤のネクタイをつけるようにしている。過去に一度リハーサル日と本番日を間違えてしまったことがあったためそうしている。

②立花薫
二郎のクラスに転校してくる暗めの男。
二郎と同じでリハーサルと本番を持っていた。

③A男
小学校、中学校、高校とたまたま同じなクラスメイト。
勉強もあまり得意ではないがそこそこ幸せに暮らしている。

【リハーサルのある人生は幸せなのか?】

「リハーサルのある人生とリハーサルのない人生のどちらが幸せか?」を
・リハーサルあり、自分では幸せだと思っている二郎
・リハーサルあり、不幸せになってしまった薫
・リハーサル無し、そこそこ幸せに暮らしてるA男
・リハーサル無し、不幸せな過去の二郎

で対比させたいです。

【起】シナリオ

〇学校・教室
席に座り二郎を見つめるA男
二郎が活躍している回想
テストは必ず学年1位、人間関係も上手、クラスの人気者……
A男M「僕のクラスには、なんでも完璧にできる優等生がいる。彼のことを『僕は』小学1年生の頃から知っている。昔の彼はそんなに優等生という感じじゃなかった。だから、きっととても努力をしたんだと思う。彼は僕の憧れだ」

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〇自宅・二郎の部屋(朝)
学校に行く準備をする二郎

二郎M「俺には毎日が二回ずつある。一週間で言うと、月月 火火 水水、と計14日で構成されていて、同じ出来事が二日続けて起こる。一日目はリハーサル日なのだ。
悪い事が起これば本番はそれを避ける。良い事なら繰り返す。だから俺の人生に『失敗』というものはない」

〇自宅・食卓
家族三人(母、父、二郎)で朝ご飯を食べている
父「今回のテストはどんな感じだ?」
二郎「安心して。もちろん今回も一位を取るよ」
父「二郎は一位しかとったことないしな。心配はしていないぞ」
母「あなたが高坂家の長男でよかったわぁ」
成績表を見ながらうっとりする母
母「ご近所さんからも『二郎君は優秀でいいわね』っていつも褒められるのよ」
父「二郎は自慢の息子だからな」
二郎、嬉しそうに照れている
「そんなことないよ。こんなの当たり前だよ」

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〇学校・教室・二学期中間テスト日(朝)【本番日】
先生「今日は転校生を紹介します」
薫「立花薫です。宜しくお願いします」
暗い、ぼさっとしている、生きる気力がない感じの薫
先生「じゃあ立花君は一番後ろの空いている席に座ってください」

二郎は薫のことをガン見する
うつろな目をした薫はそれには気が付かない

二郎M(おかしい。昨日のリハーサルにあいつは……転校なんてしてこなかった)

リハーサル日と本番日に違うことが起きた初めての日
うろたえる二郎だがテストが始まるので、そこまで深く考えなかった
リハーサル日と違うことが起きることもあるんだなって感じ

先生「それではテストを始めます。一枚とったら後ろの席に回してください」
テストが始まり、難なく問題を解く二郎。

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〇学校・二学期中間テスト返却日【リハーサル日】
薫が転校してからは今まで通り一度もリハーサルと本番がちがうことがなかったので薫が転校してきたことも忘れていた。
先生「今回もうちのクラスから学年一位が出ました!高坂二郎君です!」
盛り上がるクラス、嬉しそうな二郎。

先生からほぼ満点のテストを受け取った二郎。
先生「高坂くん。あとで職員室に来てくれるかしら?」
二郎「わかりました」

〇学校・職員室
先生「あのね、転校してきた立花君のことなんだけど、彼ほぼすべて赤点なのよ。だから勉強を教えてあげてくれないかしら?」
二郎「わかりました……」
自分の勉強する時間が減るのが嫌だなと思いつつ、仕方なく引き受ける二郎


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〇学校・図書館(午後)
二人は一緒に数学の参考書を開いている
二郎「ここはこうして、式変形をすれば簡単に解けるよ!」
薫「うん……」
一度教えれば完璧に理解する薫。
二郎「一回しか教えてないのにこんなにすぐに覚えられるって立花君やればできるんじゃない?」
薫「ありがとう……」
二郎M「立花薫は変なやつだった毎日毎日表情も変えなければ、返事もあいまいで、適当で。口数も少ない」

その日から毎日一緒に図書館で勉強を始めることになる二人。

【承】シナリオ


〇学校・教室・二学期期末テスト返却日【本番】
先生「なんと今回の学年1位は立花薫くんでした!」
A男M「すごいことが起きた。なんでも完璧にこなせる二郎君が負けたのだ。中間テストではほぼすべて赤点だった薫君に」

薫が学年1位になる。

女A「高坂くん~!私のも勉強教えてよ!」
男B「俺にも教えてくれよ!」
クラスのみんなが集まってくる。
赤点ばかりだった薫が1位になったことにより二郎のクラスでの人気はうなぎのぼり。
しかし、自分が一位でなくなってしまったことのショックが大きい二郎はそれには気が付かない。
悔しそうに唇をかむ二郎。
薫のことをにらみつけている。

二郎M「いくら1日のリハーサル日があっても、この現状を打開することはできなかった。たった1日のリハーサルくらいじゃどうにもならないこともある、俺は、その日初めて知った」

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【回想】
〇学校・教室・二学期期末テスト返却日【リハーサル日】

先生「なんと今回の学年1位は立花薫くんでした!」
クラスみんなが拍手を送る中驚いた顔をする二郎

二郎「嘘……だろ……」
薫の方を振り向く二郎
薫「……」
薫はいつも通り表情一つ変えない
作り笑顔で薫に近づく二郎
二郎「おめでとう……。おまえ何点だったんだ?」
薫は全てのテストを机の上に出す。
全部100点のテスト。
焦る二郎
二郎「全部満点……?」
薫「高坂君が教えてくれたから」
(二郎は全ての教科で百点を取ったことはなかった。毎回学年1位だったが、リハーサル日があったところで人間なので本番でケアレスミスをしてしまうこともあったから)

二郎「くっそ……」
二郎はリハーサル日だからといって思いっきり薫のことを殴ってしまう。
薫は表情を変えない。

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〇学校・教室・二学期期末テスト返却日【本番】

二郎M「昨日リハーサルで薫が一位になることが分かっていても、この状況はつらかった。返却日に『失敗していた』ことがわかっても、もう巻き戻すことはできないしあいつに勝つ術はないのだ」
ジッと薫を見ていると、それに気が付いた薫もこちらを見てきた。
ムカついたがリハーサル日と違い、薫に点数も聞かなかったし殴りもしなかった。
悔しさを胸にすぐに次のテストに向けて勉強を始める二郎。
二郎のもとに歩いてくる薫
薫「今日は僕の事、殴らないの?」
二郎「えっ……?」
リハーサル日のことを覚えている薫に驚く二郎。
B子「なになに~?昨日薫君のこと殴ったの?」
二郎「殴ってねーよ!」
薫の口を押えて耳元でささやく二郎
二郎「その話は放課後しよう」

〇学校・教室(放課後) 
いつもうつろな目をしているのに嬉々とした表情の薫。
薫「もしかして高坂くんもリハーサル日と本番日があるの!?」
二郎「そうだけど……」
目をそらす二郎
薫「嬉しい!嬉しい!なんで今まで気が付かなかったんだろう!僕と同じようにリハーサルがある人と会えるなんて!」
二郎の手と取る薫
すぐさまその手を振り払う二郎
二郎「もしかして、テストの点数が良かったのって……」
薫「そうだよ!あれだけ同じことを何度も教えてもらったら嫌でも100点になるよね!」
嫌味のない感じで薫は言ったが、二郎には癇に障った。
二郎「これからはもう話しかけないでくれ」
薫「なんで!?せっかく同じ境遇のひとに会えたのに!」
二郎「じゃあ俺、帰るから」
呼び止める薫を残して鞄を持って教室の外にでる。


〇自宅・リビング
母「おかえりなさい。今回のテストどうだった?」
二郎「…………」
母「一位じゃなかったのね……?」
二郎「ごめんなさい……」
母「別に責めてるわけじゃないけれど……」
そういいつつも不機嫌さがあらわになる母。
二郎「次は絶対に一位を取るから!」
とてつもない不安感に襲われる二郎。

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次の日から毎日二郎にまとわりつくようになった薫。
薫は自分と同じ境遇の人に出会えてうれしい。明るくなる。
一方、二郎としては自分の思い通りにいかない人物なので薫が怖い。
薫のせいで少しずつ毎日がうまくいかなくなりだす。
二郎の家庭環境が悪くなる。
放課後は毎日図書館で勉強する二郎。
それを追って薫も毎日図書館で勉強をしていた。
二郎は薫に付きまとわれるのは嫌だが、家では親の圧がすごく居心地が悪かったので仕方なく図書館で勉強していた。
本番もリハーサル日も、毎日勉強。
最初はうざがっていた二郎だが徐々に仲良くなる二人。
偶にリハーサル日だけ、薫と遊ぶようになった。
自分のリハーサル日は薫にとってもリハーサル日なので、遊んだところで本番には影響ないと思っていたから。
また、家に帰ってからも自分は勉強していたので、今回は薫には負けるはずがないと思っていたから。


【転】シナリオ

〇学校・教室・テストの日・月曜日【リハーサル日)】
二郎「今回は絶対に負けないからな」
自信満々な二郎は薫に宣戦布告
薫「なんでそんなに二郎君は1位にこだわるの?」
二郎「なんでって……。そりゃ親から比べられるし、期待されているから」
薫「兄弟が優秀なのか~」
二郎「え、いや、俺に兄弟はいない」
二郎NA(あれ……比べられるって誰と……?)
薫「そーなの。二郎だから次男なのかと思ってたよ。じゃあ両親が優秀だったんだね」
二郎「多分……」

テスト用紙が配られる。

しかし二郎は先ほど薫に言われた言葉が気になって集中できない。
二郎NA「そういえば確かになんで俺は長男なのに二郎なんて名前なんだろう……」
そのことを考えると頭が痛くなった二郎。

×××
フラッシュバック
【二郎回想】
優秀な兄(一郎)がいた。兄と比べられていた。兄が羨ましかった。
彼が何でもうまくやろうとし、完璧を目指すのは兄のようになりたいという思いがあったから。
いつも兄と比べられ、家では居場所がなかった。
「兄さえいなければ」と兄を殺した。
(しかし、兄は兄で親からの期待や重圧に耐えかねていた)
兄「俺の分まで生きてくれよ……」
次の日より、兄の存在はなくなり、二郎にはリハーサル日と本番があるようになった。
兄の一週間を奪い貰ったために人生のリハーサルを得た。

×××

兄がいたころの過去の自分は不幸せだった。
どんくさくて何でも失敗する。頭も悪かった。
失敗したら怒られる➡何もできなくなるという思考回路。
リハーサルがあるようになってからは「失敗してもこれはリハーサルだから大丈夫」という気持ちになり、どんどんいろんなことにも挑戦するようになる。
色々成功してリハーサルのある人生で幸せをつかんだ二郎。

全て思い出した二郎
すごい汗が出てくる
二郎M「自分が他人を殺したことによりこの能力を得たのだとしたら薫も誰かを殺している!!ということはこいつのことは殺さないと俺が殺されてしまう……。もしかして薫は俺よりもたくさんリハーサル日を持っているのかもしれない……!(この時に二郎がそう思うような伏線をいくつかこれより前に入れておく)」

〇学校・教室(放課後)
二郎「今日の夜、星を見に行かない?」
薫「行く!!!」
二郎「じゃあ、今夜迎えに行くわ」

〇山(夜)
二郎は「星を見に行く」と薫を呼び出すが、本当は殺すためだった。
二郎「お前さえいなければ、お前さえいなければ俺の人生は狂わなかったのに」
薫に詰め寄る。
二郎「兄貴まで殺して手に入れたリハーサル日。だから、本番は完璧じゃないと絶対にいけないんだ」
薫「そっか……。二郎君はお兄さんのことを殺して手に入れたんだね。てことはお兄さんも死にたかったのかな」
二郎「何を言ってるんだ!俺が勝手に殺したんだよ。気に食わなかったから」
薫「そんなことはないと思うよ」
二郎「うるさい、うるさい。俺の『完璧』を邪魔するやつは殺す」
二郎「完璧じゃなきゃダメなんだ、完璧じゃなきゃダメなんだ、完璧じゃなきゃ……」
薫「ダメ!僕のことは殺しちゃだめだ……!」
必死で逃げる薫。
追いかける二郎。
二郎「お前さえいなければ俺の人生に『失敗』なんて存在しないんだ!」
薫「失敗したっていいじゃないか、明日がくるんだから」
二郎「失敗するくらいなら、明日なんて来なくていい。完璧じゃない明日なんて」
薫「僕の話を聞いて!!」
薫の声には耳も傾けず殺す。
罪悪感はあった。恨みの言葉でも投げかけられるかと思っていたが、薫は最後に言った。
薫「ありがとう」
嬉しそうに笑っている薫。
その意味が分からず、二郎は死体をそのままに山から駆け下りた。
どうせ次の日にはなかったことになっているから。
手に残る感触を振り払うようにして。

【結】シナリオ

〇学校・テスト・月曜日【本番……のはず】
二郎M「次の日。薫は元から『存在しない』ことになっていた。空席、斜め後ろの席。いつも通り始まる月曜日。俺にとってのテスト本番日」

テスト用紙が配られる。
全て完璧に回答する二郎。

二郎M「取り戻された日常と平穏。これですべて元通りだ」

〇学校・テスト・月曜日【本番……のはず】
昨日と同じテスト用紙が配られる

二郎NA「もしかしてリハーサル日と本番日を間違えたか……?」
不思議に思いながらも全て完璧に回答する二郎……

〇学校・テスト当日・月曜日【本番……のはず】
昨日と同じテスト用紙が配られる。
焦る二郎。
いつまでたっても火曜日が来ない。
繰り返される月曜日。
虚無感が出てくる。

二郎NA「なんで?なんで?なんで?なんで?????なんで本番日が来ない?火曜日が来ない?明日が来ない?」

ーーーーーーーーーー

〇【薫 過去】
当時付き合っていたD男が自殺しようとする。
それを止めた薫。「なんで止めるの?殺して」と言われる。
それでも彼に死んでほしくない薫。
「薫君が殺してくれないなら、俺は自分で死ぬから。お願い、最後は好きな人に殺して欲しいの」
薫は好きな人の最後の望みをかなえてあげたいと思い、D男の殺す。
D男「薫君、俺の分まで生きてね……」
次の日、D男の存在はなくなっていて薫にはリハーサル日と本番日があるようになっていた。

リハーサル日と本番があるからと言って、D男は戻ってこない。
同じ毎日を2回も繰り返さなくてはならないなんて薫は面倒で仕方なかった。
退屈していた頃、同じリハーサル能力を持った人物と出会う。
仲良くなる。
その人はもうリハーサル人生を終らせたいと思っていたが、その人曰く、リハーサルを持つ体質になると自殺ができないらしかった。
自殺しても次の日には生き返っており、本番の日が待っている。
そして薫はその人に頼まれてまた殺してしまう➡薫のリハーサルが伸びる。
自分の一日が四日になってしまう。(リハーサル3日の本番1日)
➡そこから薫はネットなどで同じような境遇で毎日をつまらなく思っていた人たちのことを殺して回ってあげていた。なので莫大な……リハーサル日を持っていた。もう自分ではどれがリハーサルでどれが本番かがわからなくなっていた。
薫の膨大な毎日の中で、二日間だけ二郎がいつもとちがう行動をしていた。三日目以降は二日目の二郎にとっての本番日と同じ行動を繰り返していた。それでも薫にとってはたった二日でも違う動きをする二郎の存在が嬉しかった。


薫M「二郎君はもちろん知らなかったよね。僕が何日リハーサルをしているのか。僕にとって君だけが、この世界で『生きている人間』だった。君以外の人間は全て人形だった。毎日毎日同じ行動しかしない、人形だ。君と過ごす、『生きた人間』と過ごす二日間がどれだけ楽しかったか」

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〇学校・テスト・月曜日【本番……のはず】
テストが配られる。
頭を抱えながらもいつが本番かわからないので、もう何十回も見たテスト用紙に答えを書き込む二郎。

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〇学校・テスト・月曜日【本番】
二郎のことを見つめるA男。
A男NA「僕のクラスには優等生がいる。なんでも完璧にこなせるすごい人。僕も彼みたいになりたいといつも思っている。でも最近、その眼はうつろで、どこか寂しそうだった」

転校したての薫のように虚無な顔の二郎。


【終わり】


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