地の果てで

さて、今年のGWはどうしようか。去年はどう過ごしたっけ?覚えてないや。少しだけ思い出そうとしたが、すぐに考えるのをやめた。行きたい場所はたくさんはないが、いくつかはある。リスト化はしていないため記憶をめぐらす。広島、福井、沖縄、四国、そして北海道。来る日に備えて海外も良い。練習で中国、韓国辺りはどうだろうか。なんせ10連休だ。時間はある。せっかくなので、行きたい場所へ行くべきだ。そう考えていると燻っていた気持ちが湧いてきた。

あぁ北海道だな。

正確には北海道へ行きたいというよりは、稚内の宗谷岬へ行きたいのである。その理由を思い出すためKindleを開き、影響を受けたマンガを久しぶりに読む。そうハチクロである。
ハチクロについて簡単に説明すると美大を舞台にした学生の青春群像劇であり、話中で竹本君が自電車でどこまで行けるかとペダルを踏みだすのだが、その最終地点が北海道の最北端の宗谷岬である。
そのシーンがなぜか衝撃的で読んだ当時は、うわ~良いな。マネしたいわ~。と憧れていたが、いざ学生になると実行する勇気も資金もなく、ただただ怠惰に時間を浪費しており、憧れのままで終わったのである。
そんな、想いを抱いていたことを思い出した。

そんなこんなで、行き方や移動にかかる時間など調べ始めた。さすがに自電車で行く時間はないので、課金して飛行機で行くことに。

出発日が近づくにつれ自分の気持ちについて考えるようになった。そしてふと思う。
どうしてこんなに憧れているのだろうか。たがが、昔の一瞬の思いなんてたくさん経験している。どうしてこんなに宗谷岬が心に引っかかるのだろうか。それがわからないのである。
きっかけであるハチクロで宗谷岬をいう北の果てを知り、憧れというか、夢というか、この言葉にできない何かがあって、この北の果てに何があるのか知りたいのだろうと。もちろん、頭では海と岬だけで何もないことはわかっているけれど、もしかしたらと思わずにはいられない。何かあるのではないか。この北の果てに辿り着いた時に自分は何を思うのだろうか。何を感じるのだろうか。竹本君と同様に自宅と北の果てが繫がっていることを実感するのだろうか。

そうか。自分はこの想いの答え合わせをしたいのだとふと気づく。

当日、この気持ちを抱きながら、いざ出発し宗谷岬へ。長い時間をかけ岬を目にした自分は、

何も思わなかった

ただ、くそ寒い~、風強い~と環境に文句を言い、ここが北の果てか~と軽い感じでしか思わなかったのである。もちろん何もなかったし、感動も特にない。自分の力で来ていないからとかそういうわけでもなく、単純にそういうことなんだと理解した。そしてやっとすっきりしたのである。これが答えだと。

ただ、景色を知りたかったんだ。


もちろん価値観が変わるのを期待していたわけではないが、行く前は北の果てというレッテルに何かあるではないかとバカみたく期待はしていた。しかし、ただ岬や海があり寒いというだけであった。

なんだか拍子抜けであったが、さすがに無駄とは思わなかった。むしろ、やっと答え合わせができたのだと嬉しくもあるので、行って良かったなと思った。
ついでに最北端以外の南、東、西も行ってみたいとも思った。

宗谷岬にて
宗谷岬周辺の景色

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