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【晩夏のゾーッとするクラシック・8】ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲「展覧会の絵」/エフゲニー・スヴェトラーノフ&ソヴィエト国立交響楽団【ロシア民話の妖怪とキリスト教の地下墓地】

絵画が生んだ名曲 ムソルグスキーの「展覧会の絵」

ロシア五人組の一人モデスト・ムソルグスキー(1839~1881)が親友の画家ヴィクトル・ガルトマンの死後開かれた遺作展の10点の絵にインスピレーションを得て作曲された組曲「展覧会の絵」。
もともとはピアノ曲として作曲されましたが、モーリス・ラヴェル(1875~1937)の管弦楽編曲によって、一気に人気曲となりました。

モデスト・ムソルグスキー:管弦楽曲集
エフゲニー・スヴェトラーノフ&ソヴィエト国立交響楽団
ジャケット表

曲目と演奏者

管弦楽版の「展覧会の絵」は、原曲の荒々しさを前面に押し出して演奏するか、ラヴェルの壮麗なオーケストレーションを発揮させて演奏するかのどちらかですが、ここで取りあげるスヴェトラーノフの演奏は原曲の荒削りな迫力を前面に出しています。

モデスト・ムソルグスキー
・スケルツォ
・古典的な間奏曲
・交響詩「禿げ山の一夜」(ニコライ・リムスキー=コルサコフ編曲)
・荘厳な行進曲
・組曲「展覧会の絵」(モーリス・ラヴェル編曲)
  プロムナード~こびと~プロムナード~古城~プロムナード~
  テュイルリーの公園にて~ビドロ~プロムナード~
  殻を出きらないでいるひな鳥のバレエ~
  金持ちのユダヤ人と貧乏なユダヤ人~リモージュの市場~
  カタコンブ~死者の言葉による死者への語りかけ~
  ~バーバ・ヤーガの小屋~キエフの大きな門

このCDには「禿げ山の一夜」も収録されています。前に取りあげたヴラディーミル・フェドセーエフの演奏と同傾向の、野趣あふれる雰囲気を強く表した演奏です。

スヴェトラーノフはロシアのオーケストラの底力のある響きを存分に生かした迫力のある演奏で知られていました。
このCDは1974年の録音で、当時スヴェトラーノフは46歳。心身ともに充実しきった年齢です。土俗的な迫力を強調するため、スコアにない打楽器を追加したりもしています。

後年、手兵のソヴィエト国立交響楽団と運営を巡って対立するようになり、西側諸国で活動することが多くなりました。以後は好々爺っぽい演奏が多くなりましたが、このCDでは若くて元気いっぱいだったスヴェトラーノフの演奏が聴けます。
ただ、この演奏では「こびと」や「カタコンブ」などの不気味な曲よりも、「テュイルリーの公園にて」や「殻を出きらないでいるひな鳥のバレエ」のようなかわいらしい曲の方が充実した出来映えに思えます。

モデスト・ムソルグスキー:管弦楽曲集
エフゲニー・スヴェトラーノフ&ソヴィエト国立交響楽団
ジャケット裏

<次回予告>
【晩夏のゾーッとするクラシック・9】ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」/ズービン・メータ&ニューヨーク・フィルハーモニック【華麗なる音画】

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