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量産型デジタルという悪癖

 今から20年くらい昔、麻雀界では
「デジタル」と「オカルト」の対立があった。

 これは統計的なアプローチやシミュレーション等で理論の明確な根拠を示したデジタルの勝利に終わった。
 そして2000年代から現代にかけて流れを信じず論理的思考を以て麻雀を攻略してやろうとする所謂デジタル派がかなり増えた。

 その中で、「棒テン即リー出るポン見るチーリーチが来たら中抜きベタオリ」という二極的直線的な打ち方を所謂「量産型デジタル」と、半ば揶揄するような意味合いで呼ばれる人達が多く生まれた。かく言う私もその一人であった。

 この方法、確かに初心者が中級者になるための最短ルートであることは間違いない。

 場況がどうとか、5sを切って安全牌をツモ切った後の2sリーチだから1sは危険だけど満貫放銃しても2着で和了ればトップだから押すとか、

 そういうめんどくさい複雑なことを考えなくても「テンパったからリーチ!ノーテンだからベタオリ!役牌出たらポン!」ってやってるだけで五段(雀魂で言う雀豪くらい)までは到達できるのだ。

 ただ、そこから更に上を目指すのであればいつかこの量産型デジタルというスタイルからは決別しなければならない。鳳凰卓やプロの最上位層のような強者たちは皆さらに一歩上の判断でもって戦っているのである。

 例えば、リーチ判断について。

 初心者のうちは「テンパったからリーチ!何がどうなろうとリーチっていうボタン出たらとにかく押しとけ!」でいいのだ。

 リーチ判断と言っても実際には「リーチ」「ダマ(手替わりしてからリーチするか、ダマで続行するか、さらに先制されたあと追っかけるかダマで押し返すかはたまたオリるかなど選択肢は広い)」「テンパイ外し」の三択になる。

 これは学校のテストなどをイメージしてもらえればわかりやすいだろう。

 「ア、イ、ウの中から一つ選んで答えなさい。10問中7問正解で合格。問題は2022年度共通テスト数学ⅠAレベルの高難易度ですが10問中8問は答えアです。」

 というテストがあったとして、あなたはこの難関問題を解きにかかるだろうか?違うだろう。何も考えず全部にアを書き込めば確実に8点取れて合格なのだ。

この「ア」がすなわちリーチなのである。

下手に全問正解を試みて真面目に解こうとするとかえって4点とか5点とかの低い点数になってしまうことが多くある。

 初心者の無意味なダマによって生まれるピンヅモアカイチナナトーサンとかツモドラドラニセンオールとかいう悲しげな呪文が唱えられることは心苦しいものがある。(天鳳でやってくれたら「安くしてくれてあざっすww」とか思うけども)

 というところから始まって、初心者が中級者になるにつれてオーラスの役ありテンパイはダマにするとか、ダマでハネ満あるならダマでもいいとか、そういった「例外のケース」を学んでいくことになる。そうして「あれはリーチ、これはテンパイ取らない、これはとりあえずダマにするけど数巡手替わりなかったり仕掛け入ったらツモ切りリーチするかも……」と迷妄の霧の中へと入り込んで行くわけだ。

 これはかなり難しい道となる。感覚と読みと理論とデータが複雑に絡み合った茨の道だ。しかし、鳳凰卓で生き残れるような一流の打ち手になるには避けては通れない道のりである。

 そして、これは私が実際に鳳凰卓に行って体感したことだが、

低打点及び役なしテンパイでのダマ判断ができなくなっている。

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 この67p待ちのリーのみシャンポンを曲げた場面だ。

 先ほど挙げた「テンパったからリーチ!」の基準であればこれはリーチしていい。だが、

・終盤である
・手牌に価値が低く和了ってもメリットが小さい
・トップとの点差は離れており2着狙いの方針
・7pが筋引っ掛けになっているとはいえノーテンから67pを切ってくれるような面子ではない(鳳凰卓ならその辺は信用していい)


といった理由からこの手は9pを切ってダマに受け、58pを引いたら4sを切ってリーチしたりリーチを受けたらオリに回ったりの選択肢を取れる方が良い、という結論になる。

また、

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 こういうものもリーチは自重した方が良い。まあ和了れない上に対面がドラポンをしてらっしゃる。カスみたいなカン6sで戦争仕掛けるには割に合わない。確かにラス目ではあるがまだ親番も2回残っておりまだ東3局。無理をするにはまだ早いだろう。

これらは牌譜検討で指摘されて気がついたのだが、このような低打点テンパイからリーチしないということに強い嫌悪感を抱いていることがあった。

「タンヤオのみ門前テンパイとかリーチかけてツモって裏一個載せるだけで満貫やんけ!ダマにするのもったいねえわ!」
「リーチ掛けたら当たり牌出にくくなる?そもそもリーチ掛けないと当たり牌出ても和了れねえだろ!リーチ!!」


 という感じの思考に囚われていたのである。これがタイトルにもなっている

量産型デジタルという悪癖

 であることに気がついたのでこうして今記事にしたということだ。最強AIと名高いsuphxの牌譜を少し見れば分かると思うが、彼はそういった思考ロック的な判断はまずしない。
 ダマで無筋をちょろっと押したかと思えば次の生牌字牌ではやめる。ピンフのみテンパイでドラの役牌を切る時は即リーせずダマで一度切って鳴かれなかったのを確認してツモ切りリーチをしたこともあった。

ある人はsuphxのことを「場末雀荘のおっちゃん最終形態」と形容していた。まさにそうなのだ。

 何かそういうファジーというか、五段くらいまでは高速道路でひょいひょい行けるような道が整備されたけど七段から先はもう訳の分からぬ「この先、日本国憲法通用せず」みたいな世界へと足を踏み込んでいかなければならないというか、新宿御苑と青木ケ原樹海くらい違うというか、よく分からないけどそんなイメージなのだ。

  その先の境地についてもここで書きたいのだが、非常に残念なことに筆者自信がそこら辺に関してわかってないので今回はここまでとする。また何か掴めたら続編を書こうと思う。

 結構書いたけど今回はこの辺で。


  追記 この記事を書いてから一年経った。今私は

めちゃくちゃ負けていた。

これでも実はマシな方になっているのである。50戦の時点では平均順位3.0を記録していた。決して麻雀が下手になったとは思わない。むしろ上達しているはずである。

 当時より思考は柔軟になっているし牌理への理解は深くなったしTwitterの攻撃力は高まった。

こういうのはなくなってないけど。当たり前だが高め三色のある7p切りリーチがいい。わかりやすくミスっている。

 シンプルについてないだけなのか、何か私が掴めてないものがまだあるのか、はたまたこのゲームが欠陥ランダム運だけゴミゲーだからかは分からないが負けている。正直比嘉プロを笑えないくらい負けている。

 また後で原因分析をノートにするかも。

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