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柿渋と本草学者のミイラ

「柿渋」に抗コロナ効果… 「人に有効かどうかはまだ不明」  奈良県立医科大学は塗料などに使われる『柿渋』が「新型コロナウイルスの感染力を抑えるかもしれない」と発表)というニュース(2020.9.15)に、科博の「ミイラ展」を思い出しました。2020年1月に書いた日記を載せておきます。

☆。” 科学博物館の特別展「ミイラ」はすでに終了しましたが、巡回展が、新潟・富山・福岡でこれから予定されています。(2020.9.17記)

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ミイラ展 ネコとワニと柿の種

 科学博物館の特別展「ミイラ」~「永遠の命」を求めて を観て  

世界各地域からいろんなタイプの貴重なミイラが集まってきていた。
その数なんと43体。すごい!

エジプトのミイラ、素晴らしい。アンデスのミイラも!
でも、日本のミイラ「即身仏」の静謐も、また格別だ。
圧巻は、江戸時代の本草学者のミイラだろう。1832年に亡くなったこの先生は、自説を証明するために、自らを実験台にしてミイラになった。現代の科学的な調査(CTスキャンなど)によって、死の直前に「柿の種子」を大量に摂取していたことがわかったそうだ。先生、きっと本望に違いない。
 というのも、彼は高温多湿な日本でもミイラは作れるのでは? と考えて、干し柿を見て柿渋の防腐作用に着目し、自らの死体を腐りにくくすることを計画した。
―― ご遺体干し柿化計画。
そのころ「タンニン」という物質はもちろん発見されていない。でも、柿渋は、漁師さんの使う魚網や釣り糸の防腐や強度を増すため、古くから用いられていたし、本草学者の見立ては正しかった。実験はみごと成功、それが180年後に証明されたのだ。そういえば、柿タンニンの影響なのか、ミイラの皮膚もなんとなく柿色になっていた。
(注:渋柿や柿の種を食べれば新型コロナを予防できる、というわけではありません。念のため)

ほかにも、特別展「ミイラ」では、現代の科学が解き明かしてくれた事実がたくさん展示されていて、驚きの連続だった。

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ミイラの作られ方は様々だけれど、死者をいたむ気持や未来や来世への想いみたいなものは、世界のどの地域でも似ている。多様なもの、普遍のもの。

エジプトのネコのミイラは、死んじゃってからも猫を飼いたい人への贈り物だ。ネコは愛の女神バステトの化身だから、お守りでもあるのかもしれない。ワニのミイラも可愛らしかった。

今回はじめて、偶然ミイラになってしまった人たちのミイラを見た。酸素のない沼の底や乾燥した土地など、良い条件が重なって、遺体がミイラ化してというケース。ショックだった。
わたしにとってミイラは”なりたい”ものだった。それが生け贄でも人身御供でも、誰かの役に立つのなら、みんなが幸せになるならいいよね、というような。
2007年に「インカ・マヤ・アステカ展」に行ったときにも「ミイラになってみたい」とか「犬のミイラがほしい」などと日記にしている。
2012年の「インカ帝国展」のときも、「ミイラにもミイラ包みにも、親近感」など。(笑)

じつは、中南米のミイラにも、遺体が自然にミイラになってしまった事例は多い。それなのに、なぜだろう、迂闊にもわたしは今回ようやく、ミイラになることをこれっぽちも想像しなかっただろう人たちのミイラの存在に気がついたのだ。死生観抜きのミイラ . . . 。

帰りの電車の中でもずっと、わたし自身の死について、草冠のお葬式「有機還元葬」のことも、あらためて考えたり . . . ほんとうに刺激的な、おなかの底が揺さぶられるような「ミイラ展」だった。


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特別展「ミイラ」~「永遠の命」を求めて
 展示はブースごとに工夫が凝らされ、説明も楽しくわかりやすかったです。
◆ 巡回展:熊本 2020/5/21〜9/5 (終了)
新潟 2020/10/10〜12/23 #新潟市新津美術館  前売り券発売中
https://www.ohbsn.com/event/art-other/miira.php
富山 2021/1〜2021/3(予定)
福岡 2021春(予定)

ありがとうございます。🕊️🌈