お餅の話

 2021年の冬。1月から3月頃の。話だったと思うが、おじいちゃんが突然「一生に一度のお願いなんだけど……、お餅が食べたい!」と言い出した。2020年の5月31日から我が家の4人暮らしが始まって、色々とおじいちゃんの好みや健康状態、性格などがやっと分かってきた頃だった。
 でも、100歳になるまでのここ数年の間に、お餅を食べたことがあるのかどうかは分からなかった。
 
 それまでは、叔母の家(私の父の姉)に住んでいたので、晩年の食生活は叔母しか知らないのだ。しかし、その叔母が2020年5月に突然亡くなってしまったのだ。おじいちゃんにとっては娘である。私の父(おじいちゃんにとって息子)も2018年にガンで亡くなっている。つまり、誰もおじいちゃんの現在の食生活が分からないのだ。叔母の家にも子供(私のいとこ)がいるが、みんな独立してそれぞれの家庭がある。それぞれの子供たち(おじいちゃんにとってひ孫)を連れて実家に帰ることもあったようだが、近年頻繁におじいちゃんに会っていた人たちがことごとく居ない状況。おじいちゃん本人に聞いても、頭はしっかりして呆けているわけではないか、少し要領を得ないことがある。つまり今現在、おじいちゃんにお餅を食べられる能力があるのかどうが誰も分からないということだった。
 
 そんなわけで、2021年のお正月は何食わぬ顔をして、私たちはお雑煮にお餅を入れなかったのだ。

 しかし、その数週間後に「お餅を食べてみたい」との告白……。こりゃバレてたな!!

 それからまた数日、私と母と弟の3人で話し合ったり、おじいちゃんの食べっぷりをよく観察したり、おじいちゃんにも「ちゃんと食べられる?」と話したりして、2月下旬頃ようやくお餅を食べることになったのだ。

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