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対談企画 第二回目 高槻市の英語教育について AI時代における英語との向き合い方とは?

高槻市議会議員の西村ゆみが、株式会社豆電球の代表取締役であり英語講師の武藤一也先生と対談をし、英語との向き合い方について幅広くお話を伺いました。

<武藤先生のプロフィール>

武藤 一也(むとう かずや)
大手映像予備校講師。英語の発音を可視化するアプリ「音読メーター」を開発、運営する「株式会社豆電球」代表取締役。
Cambridge CELTA Pass Grade A(ネイティブスピーカーを含む合格者の上位約 5 %)。英検 1 級。TOEIC990点満点。TOEIC S / W各200点満点。著書に「イチから鍛える英語長文」シリーズ、(学研プラス)、「やり直し英語の『キリトリ式でペラっとスタディ! 中学英語の総復習ドリル(ペラスタ)』」「【共通テスト】英語〔リスニング〕ドリル」(東進ブックス)、「英文速読マスター」シリーズ(桐原書店)など多数。企業研修・学校での講演も多数。Cambridge CELTAを日本式にアレンジした授業は、多くの生徒に支持されている。これまでの常識にとらわれない次世代の英語講師。

https://mutokazu.com/

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2023年5月17日に文部科学省は、2022年度「英語教育実施状況調査」の結果を公表しました。(※1)

全国平均、CEFR A1レベル(英検3級)相当以上の中学生は49.2%。高校生はCEFR A2レベル(英検準2級)相当以上48.7%、CEFR B1レベル(英検2級)相当以上は21.2%でした。

大阪府高槻市もこの調査に参加しており、教育委員会からお話を伺うと、高槻市の中学校ではCEFR A1レベル(英検3級)、51%と平均を超えているようです。(※2)

しかしながら、「さいたま市」86.6%、「福井県」86.4%など、他の市や県と比べてしまうと高槻市の51%はまだまだ低い数字です。

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西村:地域格差が生じている要因には何が考えられるでしょうか?

武藤先生:地域格差が生まれる要因は、ご家庭での英語に対する熱意の違いなど様々な要因があるので、学校の教育現場だけの側面でお話します。おそらく2つ要因があって、学校の教科書を使って先生がどのような授業をしているか?自治体として英語教育どうとらえているか?の差がかなり大きいです。学校の教科書は本当にすばらしく、よくできています。中学1年生から3年生まで教科書を隅から隅まで理解していれば十分な英語力がつきます。だからこそ義務教育の期間においては学校で学習した内容を、教科書を使って先生が授業でどれくらい生徒に定着させることができるか否かが大事です。また、英語力が高い自治体は4技能、読む、聞く、書く、話す、そのバランスがすごくよく鍛えられているのだと思います。

西村:バランスよく鍛えるとは具体的にどんなことをしているのでしょうか?

武藤先生:インプットとアウトプットのバランスが大切になってきます。英語力はインプットしたものをアウトプットに変えていくことが非常に大事です。アウトプットしないと英語を使えるようにはなりません。自分で使ってみるということがすごく大切になります。じゃあ、話す、アウトプットだけできたらいいじゃないか?という声もありますが、アウトプットだけではいつも同じ表現、いつも同じ単語になってしまいます。

西村:高槻市だと2015年度から全中学校にALTの先生を配置しています。(※3)インプットとアウトプットのバランスをとるうえでどう活用するのが望ましいのでしょうか?

武藤先生:全国の市町村の先生方とお話をすると、ALTの先生自体も何をしたらいいか分からないという悩みを聞きます。ALTの先生をどう活用すればいいか?日本人の先生とどう連携をとっていくのが悩ましいところなのかもしれません。ALTの先生がCDプレイやーのような、ただ英語を読む人になっていることもあります。それは非常にもったいない。せっかくALTの先生がいるのであれば、発話を促す授業にしたほうがいいです。ちなみに発話を促すには、「問い」がすごく大事になってきます。どういう問いを生徒に投げかけるかによって発話が変わります。

西村:問いですか?

武藤先生:はい。例えば、I like ~ような型を学習したら、そのあとに、先生が、または生徒同士で “What do you like?”と問を投げます。その問いに “I like ~.”と答える際、~に当たる部分は自分のことを話します。つまり、生徒がI like ~の表現をパーソナライズできるようにする問いが大切です。

西村:先生自体が問いかけの仕方を学ばないといけないですね・・

武藤先生:そうなんです。私はCambridge CELTAで学びました。CELTAでは、先生が話す時間をいかに減らすか、そして生徒から答えを引き出すか主体的に考えて発するかが大事と言われています。難しい問いだと答えられない。そんなときは、Do you like oranges, or apples?など2択のクローズドクエスチョンで答えやすい問いに変えていくそんな積み重ねでインプットとアウトプットのバランスをとることが大切です。

西村:なるほど。ちなみに小学校、中学校、高校と、英語学習において段階的、効率的な学習方法あるのでしょうか?

武藤先生:それぞれの学年に応じて、求められる単語があるので、しっかりとその単語をおさえることが大事です。覚えるだけでなくて使えるようにする。小学校では基本的なことが聞き取れるが主に重きをおかれ、その次に、話すこと、中学校になると、読むこと、書くことが入ってきます。

西村:学ぶ順番があるのですね。単語を覚えるのはなかなか難しいのですがどうやって武藤先生は覚えましたか?

武藤先生:小中であれば何度も音読すれば身につきます。また、先ほどお伝えしたアウトプットをして何度も使っていくことです。

西村:日本にいるとなかなか英語を使う機会がないのでアウトプットする機会がないのですがどうしたらいいでしょうか?

武藤先生:それこそALTの先生の出番です。ALTと話す、そのあとに生徒同士がペアワークなどで話す。これが一番大事です。私は大手予備校で映像授業を担当していますが、インプットはできてもアウトプットが難しい。だから、対話はすごく大事だと痛感しています。

西村:画面のむこうの人と話せないですよね。

武藤先生:学校でグループワークをしたりみんなで対話をしたりすることは、非常に意義があります。だからこそ先ほどお伝えした先生の「問いを立てる力量」が試されます。

西村:教科書を大切にする、学校の授業を大切にする、当たり前の事を積み重ねることが一番大切なのですね。

武藤先生:そうです。高校になると、大学受験があり、国公立大学か私立大学を狙うかで勉強する科目などは変わってきますが、義務教育の中学校までであれば学校の教科書一択で、参考書など余計なものは必要ありません。教科書と学校の課題、宿題で十分力をつけることができます。そして何度も音読をしてください。

西村:音読と言えば、シャドーイングの重要性をよく聞きますがどうでしょうか?

武藤先生:シャドーイングは表現を自分の中にインプットさせる手段なので、シャドーイングで覚えた単語や表現を使って、何をアウトプットさせるかが大事です。大切なのは、シャドーイングした英文を利用して自分に関する文を作れるようになることです。

西村:シャドーイングは単なる手段であり、先ほど話された、パーソナライズされた自分の話ができるかどうかが大切なのですね。私、シャドーイングが大事だと聞いて昔よく、BBCのニュースをシャドーイングしていましたが、いまいちモチベーションがあがらず、途中で挫折してしまいました・・。
やはり、自分と関係のない内容だからでしょうか?

武藤先生:そうです。最終的には学んだ英語表現をパーソナライズできることが大事です。自分の関心があること、自分の興味のあること。それを使って先生と対話をすること、友達と対話をすること、それが今、教育現場で大切にされている「主体的で対話的で深い学び」になると考えています。
自分のことを自分で考えて、自分で文をつくって、対話を通して学び相手のことを理解していきます。英語教育はよい方向に進んでいると私は思っています。

西村:インプットとアウトプットのバランス、そのためのALTの先生の活用、高槻市として51パーセントでとどまらずにもっと伸ばしていくためにはどうすべきなのか?これからも考えていきたいと思います。

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メディアで目にしない日はないほど話題になっている、「生成AI」と呼ばれる最新AI(人工知能)サービスについて。

文章を生成してくれる「ChatGPT(チャットGPT)」に代表されるように、多彩なコンテンツを生み出す力を持っています。

そんな時代に、お子様から「AIがあるのになぜ英語を勉強する必要があるのか?」と質問をされたらどう答えていきますか?

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西村:テレビやネットニュースで目にしない日はないほど話題になっている生成AIの進化、中でも特に文章を生成してくれる「ChatGPT(チャットGPT)」が英語を勉強する人たちにとって非常に便利なツールになっていますよね?

武藤先生:はい、私も使っています

西村:先生も使っているのですね。英語学習者の一人として思うことなのですが、ChatGPTがあればすぐに英文に翻訳してくれるじゃないですか?便利なツールがあると英語の勉強をする必要があるのか?と思ってしまうのですが、これからの時代どう英語と向き合っていくのがいいのでしょうか?

武藤先生:すごくよく聞かれる質問です!翻訳機械があるから英語学習はいらないのではないか?と巷で言われていますが、答えはノーです。いくつか理由がありますが例えば分かりやすいもので、ChatGPTはプロンプトという文章でAIに指示を出すんですが、そのプロンプトは、日本語よりも英語で書いたほうが圧倒的に精度が高い答えがかえってくるんです。

西村:やはりオープンAIがアメリカだからですか?

武藤先生:そうです。だからChatGPTでプロンプトを書くためにも最低限の英語力は必要になると思います。

西村:確かに。ただ素人からすると精度は落ちてもなんとなく意味が理解できるからいいやと思ってしまう事があります。私は視覚障害者関連の論文を英語から日本語に翻訳かけて読むことが多いのですが、日本語が変でも意味が分かるなぁと。またこれからも精度が上がっていくかなぁと。

武藤先生:西村さん、肝心な事が抜けていますよ。論文の翻訳の前に、その論文をどうやって見つけてきますか?とってきた情報を英語から日本語にする、その逆も翻訳精度は高いですが、どの論文を読むべきなのか?情報をとる時に1つ1つをいちいち翻訳をしているとかなり、時間がかかります。学習効率、仕事なら業務効率がかなり悪いです。

西村:見つけてしまったものの翻訳は簡単だけど、見つけるためにはかなり労力がかかる。
情報へのアクセスは英語ができるほうが有利ですね。私も一応、学生時代まで英語をしっかり勉強してきたので最低限の基礎力がある事を忘れていました。

武藤先生:あと、コロナで主流になったオンライン会議などは、いちいち翻訳を使っていたらその時間が不自然な間になります。タイムラグはオンライン会議では致命傷。ここで主張したいというときに時差なく話せる人材は今後も価値は高いと思います。
今後は、英語はある適度のベースのスキルが求められ、それに対して自分の専門分野があわさっていく。その過程で上手にAIの力を借りていく、そんな人材が求められていくと思います。

西村:自分の興味関心のあるもので学習することが重要なのですね。ただ英語学習はお金がかかるイメージがあります。高槻市として、家庭環境や所得格差などいろんな問題がありますが、その中でも学びたい方が学べる環境を整えるためにはどうでしたらいいのでしょうか?

武藤先生:英語に関してベースの力をつけるなら学校の教科書で十分ですよ!日本の英語の教科書は非常によくつくられています。中学1年生から3年生まで教科書を隅から隅まで理解していれば十分な英語力がつきます。

西村:そうなのですか?参考書など買わないといけないと思っていました。

武藤先生:必要ありません。教科書と学校から出されるプリントなどの課題をしっかり学習すれば十分です。だからこそ、私は学校の先生の負担を減らさないといけないと考えています。先生たちは、教える技術もあるし英語の能力もありますが、教えること以外の業務が非常に多い。結果、授業の準備をする時間が削られてしまっています。授業に集中できる環境をどう整えるのか?学校の先生たちの働く環境をサポートする事が大事かもしれません。

西村:確かに、高槻市として考えていかなければいけないところです。近日また第二回目を宜しくお願いいたします。

<出典>
※1 文部科学省中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)(中教審第197号)」https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1415043_00004.htm
※2 https://www.yumi-nishimura.com/post/%E6%95%99%E8%81%B7%E5%93%A1%E8%AA%B2%E3%81%AB%E3%81%8A%E8%A9%B1%E3%81%97%E3%82%92%E8%81%9E%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%8C%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E3%81%AE%E5%85%88%E7%94%9F%E3%80%8D%E3%81%AE%E9%9B%87%E7%94%A8%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6
※3 第二期高槻市教育振興基本計画

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