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【小説レビュー】『鉄道員(ぽっぽや)』浅田次郎

短編小説を読んでみようと有名な本書を手に取った。映画の方も有名だが、そちらも見ていない。『鉄道員(ぽっぽや)』を含めた8作の短編集だ。

読んでみると、おじさんの古い価値観が気になる。現代でしきりに叫ばれる平等やダイバーシティが必ずしも良いものとも思えない。でもこの時代の、もう男尊女卑も性別役割分業も過去のものという顔をして、実は根深く残っている感じも嫌だったなぁと感じた。
この本が書かれたのは30年ほど前で、その時代背景を考えればこの小説の価値観はそんなにおかしくない。でも、映画の大ヒットも印象深かったし、そんなに古い本を読んでいるつもりがなかった。覚悟をして読む古典と違って、心構えがないまま急に30年前の古い価値観を浴びてしまったので、なんだか嫌な感じがしてしまった。

この小説を、古い価値観で書かれていてあまり好みじゃないと言ってしまうと、きっと反論されると思う。古き良き時代の不器用さを理解できないなんて感性が鈍っているとか。嫌な男はちゃんと嫌な奴として描かれていて、男のわがままを肯定している訳ではないとか。人間にはズルいところもだらしないところもあるんだとか。
わかるよ。その主張は理解できる。でも私は好みではないんだ。昔の価値観で生きる男のすべてをかっこ悪いと言うつもりはないし、当時の価値観を現代に合わないからと全て否定するつもりはない。でも、この本に出てくる男の人たちが、よくない面もあるけどこういう良い所もあるんだとか、これだけ後悔しているのだから本当は良い奴なんだとか、男ってこういうどうしようもないもので女がいつも我慢しているんだよとか、そういう結局は悪くないものとして描かれている感じがなんだか納得いかない。ただ描かれた人たちを自分で悪くない人と評価したいのに、筆者が勝手に悪くないもの評価してしまうから反論したくなってしまう。

この本を世代を超えて感動できる名作という予想で読むから良くなかったのだ。30年前の価値観で描かれた大衆小説だと思って読めば、印象は違っただろう。

『鉄道員(ぽっぽや)』浅田次郎 2.0

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