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弓張月の御息所

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大人のためのお伽話、こころの奥底にしまっていた胸のトキメキを美しい言葉で綴ります❤️
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2020年10月の記事一覧

ウィリアム・メレル・ヴォーリズ

ウィリアム・メレル・ヴォーリズ

 セピア色に染められたその表情を見て「ベビーフェイス」が乙女ごころをくすぐったのねと感じた。
 そしてその横にしっかりと寄り添う夫人。ウィリアム・メレル・ヴォーリズの妻、満喜子さん。湖国、近江八幡の発展に多大なる影響をもたらした二人。
 ヴォーリズは英語教師として来日したけれど、その才能はキリスト教の布教という信念に支えられ、輸入業、建築設計監修、音楽、習字、デザインとその活動は多岐に渡った。

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甘い拘束

甘い拘束

身に付けるもの全ては鎧のはずだった
刺すような瞳を飾るアイラインも
唇からこぼれる吐息で濡らす口紅も
自己主張を代弁するアクセサリーも
みんな弱い私を覆い隠す武器

だから一旦玄関のドアを閉めると
とたんに身につけたものが重く感じるのです
ここは私のシェルターだから
全て脱ぎ捨てても無防備になれる場所

ひとつひとつ身から引き離すたびに
こころの解放との相乗効果で
気持ちは自由で身軽になり
至福の

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「君が手も まじるなるべし 花すすき」

「君が手も まじるなるべし 花すすき」

「君が手も まじるなるべし 花すすき」
向井去来が長崎は日見峠で詠んだ歌
愛する人の手がすすきに交じって
いつまでも振られていたという

ホームでお別れのとき
「もう振り向かなくていいから」
そういわれても言うことを聞かないの
だって、あなたはやっぱりそこにいるのですもの
車を降りて、「もう寒いから家に入って」って言われてもテールランプを追えなくなるまで手を振るの
きっとあなたはミラー越しに見てい

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翠玉(エメラルド)

翠玉(エメラルド)

ブレスが惑星のように散らばりました
何かに引っかけた感覚もなく
それは仕事を終え自宅に戻り
ふっと玄関で鞄を置いた瞬間のことでした

石のタイルの筋をなぞりながら走る
散らばり広がるブルーアゲートの玉を目で追いながら
あまり動揺しなかった自分がいました

もういいんだよね
お役目が終わった時、身を護ってくれた時
自ら離れていくのだと
どこかで予感があったのです

時はライオンズゲート
新しいものを

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惚れ抜く

惚れ抜く

「あの人は、ほんとうに ”真っ白” な人なんです。
それで最後までついていけたんやと思います。
破産したといえば、ほんとうに一銭もないんです。
破産したと言いながら、どこかに少しは隠していたりとか、
細工したりとか、そういうことがまったくないんです。
もしそんな人やったら、離婚してたかもしれまへんな」

中村玉緒が故勝新太郎との回顧録で語ったのだそう

いいなと素直に思えました
私もそうなりたいと

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