見出し画像

新年を迎えて:私の2021年計画

2021年を無事に迎えた皆さま、あけましておめでとうございます。

日本で年が明けてから13時間後、ようやくニューヨークで日付が変わったときの気持ちは、「災禍にあふれたクレージーな1年をなんとか生き延びた」という安堵でした。けれど、朝が来れば、自分は昨日と同じように、この森の中に住んでいて、ただまた新しい1日が始まるだけです。いつものように起床して、コーヒーを淹れ、ニュースをチェックし、インスタライブをやり、ヨガと瞑想をやって・・・と、朝食に雑煮を作った以外は、普段とまったく変わらない1日を送りました。年が変わったからといって旧年から続く問題が解消されるわけではもちろんなく、今むしろ悪化している感さえある災禍を前に、年の区切りや正月にどういう心持ちで向かうべきなのか、抱えていた心もとない気持ちを「日常」が解消してくれたようです。

ニュースに向き合っていてひとつ確実にわかるのは、目の前に広がるCOVIDをめぐる状況は、よい方向に向かう前に、さらに悪化するということです。おそらく精神的に厳しくなるであろう1月を前に、心を整えるための瞑想の時間を長めに取って、自分の過ごしたい1年を夢想することにしました。

2020年は、世の中で起きているムーブメントを観察して書く、というこれまでの自分の方法論が、社会の進化のために文章を書く、と自分の中で逆転した年でした。どこへいってもアウトサイダーの観察者である、ということを大切にしてきた自分が、より積極的に関与して行動に移する主体に変わる、という気持ちになったのですからこれは大きな変化です。自分が取材を通じて学んだことを使わない手はない、という当たり前の事実に気づいたこともありますが(遅い!)、アメリカにおいても日本においても、政治や行政の健全性、ジェンダー、人種、宗教、教育、医療における平等をめぐる環境が、自分がこれまで思っていたよりずっと悪い、ということに気がついたからでもあります。そして何より、今、コロナウィルスという災禍が、社会が変わる最大のチャンスを提供しているのです。

この観点から自分の生業を見直してみると、新たな可能性が見えてきました。ギリギリ2020年刊行を間に合わせることができた「Weの市民革命」(版元Kindle)は、自分にとってはルポであり、時代のスナップショットであると同時に、革命のマニフェストです。けれど、自分の本がリーチできる範囲はたかが知れています。せっかく書いた本のインパクトを最大化するためにはどうすれば良いかを考えてきました。

そこで少し前から口に出し始めたように、2021年は、新たなメディアを立ち上げようと決めました。ヒントは、昨年夏に取材したアクティビストのアダム・イーライが教えてくれた「青鞜」にありました。平塚らいてうが仲間の女性たちと立ち上げた同人誌は、女性による女性のためのコミュニティとして、日本のフェミニズムの息吹となり、また女性たちの集合的アクションを牽引したといいます。それを知ったときに、今の世の中には、具体的なアクションにつなげることを目的としたメディアがあってもいいのではないかと思うようになったのです。

ここ数ヶ月日課になった日々のインスタライブは、気がつけば知らない同士が考えを交わしたり、情報を交換したりする場に成長しました。参加してくれる人たちの体験談や持ちネタを知るごとに、自分の世界も広がっていきます。そこにやってくる様々な職業の人たちの間で自然派生する集合知の拡大や情報交換の様子を見ていたら、みなさんたちと力を合わせれば、何だってできるような気分になってきました。その内外での対話を通じて、参加したいと思ってくれる人たちと一緒に、COOP(共同運営)形式のメディアを作ろう、というアイディアが登場しました。

そこで、とりあえずあれこれ細かいことは心配せずに、メディアを作る、という計画を見切り発車しようと思います。おそらく初期は、そこから生まれたものがこのニュースレターのコンテンツになるかもしれません。実験的に試行錯誤しながら進めるその過程も、記録すれば良いと思うのです。まずは、1月23日から日本時間の毎週土曜日朝10時からズームで、Sakumagを購読してくださっている方にオープンな編集会議を開いてみようと考えています(詳細は有料版で告知します)。

12月の頭頃だったか、セラピストに言われて、自分が2021年にやりたいことを書き出してみたら、すべてのことが「作る」「教える」「行動する」「助ける」の4つの柱に分けられることがわかりました。今は、この4つを作るメディアの柱にするとしたら?と妄想が膨らんでいます。

妄想していて思い出したのは、幻冬舎プラスで開始したはいいけれど、幻冬舎のゴタゴタがきっかけで筆を折ることになった連載のタイトル「みんなウェルカム」です。みんなウェルカムなメディアを作りたい。誰のアイディアも歓迎です。「We」で作るメディアに参加しませんか?

それでは、みなさん、今年もどうかよろしくお付き合いください。

佐久間裕美子

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?