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お花のサブスクを始め、すぐ解約した

実家では花を花瓶に生けるという文化はなかった。
庭で収穫しなかったアスパラが花を咲かせるようなことはあったし、観葉植物の鉢植えやサボテンやアロエがあったこともあるけれど、それらは花を咲かせることはなかった。

自ら花を買うこともないし、貰ったとしてもそれを生けるための器もない。
そうやって育ってきたが、それで何か困るような場面に出くわしたこともない人生だった。

ある時、『プリンセスメゾン』という漫画を読んだ。

居酒屋で働くヒロインが、女ひとりでマンションを買うという物語が主軸でさまざまな女性が登場する。『誰かと結婚するだけが女の幸せじゃない』がテーマのひとつ。ヒロインは一生懸命仕事をし、せっせと貯金してマンション購入の夢へ向かって行動する。

ほっこりとした表情で、性格ものんびりマイペースで、かつ芯のある心根が素敵。日々の生活で、何か事件が起こるわけではない。夢のマイマンションを買った後でさえ、家具やインテリアなど華やかなものも買わず、ちょっとした娯楽に買うのが花一輪。慎ましすぎる。
そして、憧れた。給料が決して高いとはいえない私が目指すべきはここなんじゃないだろうかと。

ほどなくして私は結婚し家を建てた。
それだけで連載が始まるくらいの出来事があるので詳細は割愛するが、結果として自分の城を手に入れたのだ。

憧れた花一輪だけを飾る生活を実践してみようかと花屋に行ってみた。近所の花屋には贈り物用の花束やプリザーブドフラワーしかなかった。一輪のみ売っている様子もなく、店主は他のお客さんの接客で話しかけられず。早々に花屋で花を一輪だけ買う生活に見切りをつけた。そもそも個人商店の花屋に入って、500円以下の買い物をする勇気がない。「もっと買わなきゃ申し訳ない」と思ってしまいそうだ。もし、何かもっと買うようにオススメされたら断れない。

スーパーに立ち並ぶ仏花たちの脇に、テーブルに飾るような小さなブーケもいたが、いつも同じ花しかない。しかも、元気もない。一回だけ買ってみたけれど花はデリケートだ。食材と一緒に買うと持ち運びになんとなく気を遣う。そしてその後はやはり買う気が起こらなくなった。
スーパーでは10円、20円安いものを買ってなるべく嗜好品を買わないようにしている。もちろん花だって嗜好品。少しでも節約して漫画とかゲームとか買いたいし。私は結局『花を愛でる < エンタメ消費』の俗物なのだ。

そんな日々を送るうち、Twitter広告で『お花のサブスク』が表示され、なんとなく申し込んでみた。2回だけ無料と書いてあって登録。月額料金500円ほどで毎週、小さな花束が届くというもの。申し込んでから詳しくサイトを読んでみると実際は毎回送料が300円ほどかかって800~900円だそうだ。お試しプラン中だし、もし課金されたとしてもそれくらいなら許容範囲かなと思っていた。

そうして楽しみに待ち、ほどなくして最初の花が届いた。

送られてきた花。可愛い。

カーネーションとそれを引き立てる花と実と葉っぱ。可愛い。早速飾ってみたけれど、これがイキイキと元気のまま、次の週になろうとした。次の花が送られてきても飾れる器がない。配達を遅らせられるようなオーダーなかったかな…とマイページを開いてみたら、契約の変更は4回花を受け取ってからしかできないという文言。

2回のお試しで契約を解除すれば多分、無料のままだったけれど、どういうふうに契約変更できるのか試してみたくて4回花を受け取ってから、最初の月だけ課金することにした。せいぜい引き落とされるのは1,000円未満だし…と思っていたものの、結局引き落とされた金額は1,265円。内訳は謎。我が家は動画や漫画などのサブスクに複数入っているため、これ以上固定費を増やす気にはなれない。そうこうしている間に、次の週も1,265円引き落とされた。ワレ、月額料金でもないんかい(怒)

次々送られてきた花たち。花瓶を買い足し、それでも足りなくてボトルに活けた。

正直腹がたった。
しかし冷静になって考えればそれが妥当な金額なんだろうなと納得が行く。

今、よくよくサイトを読んでみたら、普通に送料も書かれていたし、どこにも『月額料金』とは書かれていない。私の注意力不足というわけだ。それに送られてきた花も質はこの上なく良かった。サブスクはサクっと解約して、TwitterとInstagramからは当該アカウントをブロックすることにした。相手方に非はなかろうとも、やっぱりなんか騙されたような気持ちが残っている。これ以降は広告も目も触れないようにしておきたかった。

あと次の『配送をスキップする』というオプションが選べるようになっていたものの、どこにも「スキップした配送にはお金がかかりません」という文言が見つけられなかったため、結局、4回すべての花を受け取った。引き落とされた金額を確認してみると2,600円弱。内訳にして初回謎の100円と、2週間後、その翌週の1,265円ずつだった。おそらく最初の2回はお試しで、そのあと解約しなかったため、次の2回分がレギュラー継続プランとして引き落とされたのだろう。俯瞰してサービス全体を眺めるとお買い得なような気もする。対価に対してサービスは十分だったように思う。

しかしどんなサービスであれサブスクを利用する際、魅力のうちの一つは「プランのわかりやすさ」だと思う。自分が契約したプランが、引き落とされた後にわかるサービスなんてゴメンだ。感情的に解約したものの、やはりその点で当該サービスは解約して正解だったと改めて思った。

それよりも、私が苦手なのは『花屋に行って店員とコミュニケーション』をとること。どんな花なら綺麗に生けられるか、扱いやすいか、枯らさずにいられるかなど一切考えず『選ばず一方的に送られてくるシステム』というのがとても心地よかった。お花のサブスクは、私の性分にあっているということがわかって良かったなと思っている。

花と一緒に撮った朝食。もちろん"映え”を狙って撮影した(俗物)

自分の不注意のせいで余計な出費をしてしまった。しばらく反省して「やっちまった」という心の傷が癒えたら、何か他のサービスがないか探してみようと思う。

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