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「短歌人」2021年5月号掲載作品

「猫踏んぢやつた」

教員として過ごしたる若かりし数年間は猫踏んぢやつた

踏んぢやつた猫踏んぢやつた基礎のなきがむしやらピアノ弾くごとき日々

なぜあのときあの生徒(こ)にああ言へなかつたか二十年(はたとせ)のちも悔いはのこりて

諦めたのか投げ出したのか逃げたのか追はれたのかもしれぬ教職(しごと)を

教室にノスタルジーを抱かざるわれにもかつてゐし佐野朋子

定時制普通科生徒家出して遍路姿で戻り来しあり

たくさんの守れなかつた約束がきらきらしくもわれを苛む

(同人2欄、冨樫由美子)

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