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「短歌人」2019年10月号掲載作品

なつあふぎ揺らせばなまぬるき風と蘇州ゆかりの香りのおこる

本棚の扉のうちに閉ぢこめて虫除けにするラベンダーの香

墨の香も筆のみ跡もゆかしかり恋は言の葉よりあふれゐて

思ひのみ海にゆきたり潮の香が肺腑を浸す想像をして

かぐはしき記憶ばかりを詰め込みし匂ひ袋を枕辺におく

プルースト効果なづきを支配して何を嗅いでも何かを偲ぶ

(会員1欄 冨樫由美子)

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