「短歌人」2021年6月号掲載作品
「こころ」
春といふ本の栞になりたくてシロツメクサの香りを纏ふ
ツンツンと世界にかほをのぞかせるものの芽たちを包む春雨
到来のお菓子の箱を開くときみたいにそつと心をひらく
巣ごもりのひと日を過ごす端正に英訳された和歌を読みつつ
南へと送る葉書に美しい切手を貼つた祈りのやうに
カフェオレと本とショパンがある午後のひとりの時間ゆるやかであれ
埃まみれの夢を心の戸棚から取り出しきてハタキをかける
(同人2欄 冨樫由美子)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?