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冨樫由美子
2020年12月26日 07:46
その国を、虚無がむしばんでいた。 住民たちは恐怖におののいていた。 ドイツの児童文学者、ミヒャエル・エンデによる長編ファンタジー『はてしない物語』(上田真而子・佐藤真理子訳)を三十数年ぶりに読み返したくなったのは、緊急事態宣言のさなかだった。 あかがね色の布張りの、ずっしりした本のページは黄ばみ、奥付を見ると「一九八六年一○月一日 第二四刷発行」とある。 その年の十二月下旬、父方の祖母