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タイムスリップ

今年は、夫の実家を整理する予定があって、カフェを閉めてからずっと物置に預けてあった物を自宅に引きあげることになった。

そうは言うものの、ほとんど処分していて残っているのは数点だけ。

たまたま、最近我が家で手作り餃子熱が復活していて、野菜を刻む事が増えていたので、「あっ、そうだ、クイジナート、あれ使おう」と、なった。

久しぶりに棚の奥から段ボールを引き出して、しっかり梱包されたクイジナートを持ち帰りキッチンに出してみた。

4年ぶりに見たそれは、なんとなく薄っすらと汚れているようだった。

しまう時にしっかり磨いて、アルコールで拭きあげておいたはずなのに、随所にシミの様な、油汚れの様な茶色い箇所があった。

「どうしてだろう?」と呟いている私に、「時間が経ってるとそういう事もあるよ」と、後からいつも優しい夫の声。

カフェをしていた頃は、毎日の様にカレーやミートソースの仕込みに使っていた、相棒の様な存在の一つだったクイジナート。

部品をビニールから出してスッキリ洗い、本体のシミをゴシゴシ拭きながら、「ごめんね、ちゃんと綺麗にしたつもりだったのに、汚れが付いたままにしちゃって・・・」と、ひとり言の様に声をかけていたら、なぜかボロボロ泣けてきた。


この涙は、なんだろう。。。

あの頃の、毎日必死に頑張っていた私を思い出したからなのかもしれない。

クイジナートへの声掛けを通して、辛い思いをさせていた過去の自分自身への「ごめんね」だったのかもしれない。

今の私がもうあの頃の私ではない事を、肚の奥底から実感出来たからかもしれない。


そして私は、身体じゅうに広がっている、過ぎ去った全てへの感謝と、今この瞬間の幸せを同時に味わっていた。



みずのゆみ https://lit.link/yumimizuno

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