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92歳母の引っ越し③住み替え先がまだまだ見つからない!

2020年、コロナ禍となり高齢者施設の見学もままならない状況だったが、秋になりどうにか2件のサ高住を見学することができた。

私一人で見に行き、なかなか良いなと思った場所について母に勧めてみたところ、母の答えは「なんで私がそんなところに引っ越さなきゃならないのよ」だった。
それには、住みなれた自宅を離れたくない、という他にも理由があった。

いつも誰かしら孫がそばにいた

母の家は東京・杉並区にある。

私は妹と二人姉妹なのだが、結婚後早い時期に妹は長野県、私は栃木県に移住してしまった。

それぞれの子供たちは、田舎でのびのび成長した…のはよかったが、大学や専門学校へ進学となると、やはり東京という選択肢が出てくる。

この点、東京に実家があって両親が健在だったのは、本当にありがたかった。私たちは、進学で上京する子供を実家に居候させてもらって、なんとか全員育て上げたのだ。

特に私の息子は、2009年から6年間に渡って私の父母と同居した。2015年に父が他界し、翌年息子は結婚・就職・子供が生まれて隣家に引っ越したけれど、ときどき様子を見に来て子供を曽祖母と遊ばせたりしていた。

また、私の娘も演劇関係の大学に進学して、2年間はこの家の世話になった。舞台の裏方を仕事にした関係上、卒業後も公演の都合で宿にさせてもらうことがたびたびあった。

娘のあとに妹の長男が、美容専門学校に進学して2年間世話になり、就職後もたびたびやってきて一緒にご飯を食べた。

コロナ禍が始まった2020年には、妹の次男が社会人一年生となり、大学の寮を出てひとり暮らしとなるタイミングで1年間同居した。
この年の前半には、舞台の公演準備中にコロナ禍に突入し、無期待機のような状態に陥った私の娘も同居していた。

2020年秋、軽い脳梗塞で入院した母が退院し、周りの孫たち・そのパートナーたちが快気祝いパーティーをした。

そんなわけで、母の周辺には必ず誰かしら孫がいて、老人と若者の共棲とも言うべき暮らしが成立していた。

「なんで私がそんなところに引っ越さなきゃならないのよ」
という母のセリフは、いつも若者がそばにいて、母なりの居心地のよさが実現しているからに他ならなかった。
またそれは、年の割にはシッカリしていて、とりあえず自分のことは自分でできるという自負からでもあった。

やがてみんないなくなった

若者と老人の同居生活は、はた目には微笑ましいものかもしれないが、実際にはギャップが大きすぎて「同居」というにはほど遠いディスコミュニケーションをはらんでいる。

まず、若者は日中、それも夜遅くなるまで帰ってこないし、朝は朝でギリギリまで寝ていて駆け出していく。かと思えば、休日には昼になっても起きてこなかったり。

年寄りというものは規則正しい日常を送っているので、毎日違った若者のスケジュールにまずついていけない。

若者の方でも、ばっちゃんのゴミ出しや買い物を手伝う気持ちはあっても、自分のスケジュール上不可能な場合が多い(甘えもあるかも)。
同じ家に住んでいても、まず朝ちょこっと顔を見るかどうかという生活で、実際上「独居」と変わりない。それでも、誰かが同じ家に住んでいるだけで気配というものはあり、母はその暮らしに満足していたのだろう。

ただ、<その①>に書いたとおり母の身体的・知的状態が年々低下していく中で、いつまでもこの暮らしが続けられるとは思えなかった。

若者たちのほうでも、無事に卒業して仕事を見つけ、通勤に便利な場所に引っ越したり、彼女・彼氏と住むために出ていったり、あるいはめでたく結婚したり子供が産まれたり、といった具合に人生を歩み始める。

2021年の夏、私の息子のファミリーが逗子に家を見つけて引っ越していった結果、母は完全にひとりになった。

東京にこだわる必要はなかった

いろいろなタイプのサ高住について調べているうちに、複雑に見える契約条件が案外わかりやすい仕組みに基づいていることがわかってきた。

それは、介護型であれ住宅型であれ、サ高住のメリットと考えられる介護のサービス料金は基本的には介護保険制度で決められている「要介護1〜5」の自己負担分の金額であり、介護型なら、プラス賃貸料と食費と光熱費、というような構成で、住宅型なら介護サービスは個別に契約する形だけれど、負担金額とサービス内容に変わりはない。

ざっくりと言ってしまえば、サ高住の料金の高い安いは居住スペースの賃貸料で決まってしまうのだ。

もう一つ。介護型であれ住宅型であれ、サ高住で介護サービスを受ける場合は要介護1~5が想定されていることが多い。介護型のサ高住は、ほとんどの場合、有料老人ホーム同様に「要介護1以上」が入居条件になっている。

「要支援」で受けられるサポートはごく限定されているので、住宅型に入居した場合、今の母の状態では自力で生活するのが難しい。

母が自力で生活できないのなら、自宅周辺で探す必要はなく、東京にこだわる必要もない。

那須に連れてきちゃえば?

ということで、私は地元(栃木県北)でサ高住や有料老人ホームの情報を集め始めた。
案の定、ここでなら母の年金の範囲内で充分やっていける施設がいくつも見つかった。

また、選択支を増やすため今の介護区分「要支援」という状態から「要介護」に昇格(?)させてもらえるよう、いろいろ根回しをして介護認定をもう一度受けてもらおうと画策し始めた。

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