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92歳母の引越し④那須まちづくり広場があった!

2021年後半、いよいよ完全な独居状態になった母に、なんとか快適で安全に暮らせる場所を探したいと思っていたが、それはそんなに簡単ではなかった。

フレイルな人のむずかしさ

まず、母は全然要介護な状態ではなかった。
比較的費用が安く抑えられる有料老人ホームや、サ高住でも介護が手厚い施設は、要介護1以上が入居条件になっている。
言い方は悪いかもしれないが、自宅で介護するのが難しくなった年寄りに、家族が相談して施設に入ってもらう。そういう場合の受け皿という感じ。
自分でご飯を食べて、トイレもお風呂も一人で入れて、着替えもできるような人は、対象ではない。

しかし、自立型のサ高住に住めるかというと、それは無理。もともと、自宅での生活が厳しくなってきたので、住み替え先を探しているのだから。

・足腰が衰えていて外出が難しく、近くに商店もないので買い物ができない。

・日用品や食料は宅配便に頼っているが、計画的に注文することができなくなっていて、冷蔵庫の中がカオス。

・自力でゴミ出しが難しく、宅配の梱包材などかさばるゴミが山になる。

・持病が複数あって二つの病院に定期的に通わないといけないが、付き添いが必要。医師の説明を自力で理解できない。

・自宅内に段差が多く、歩行器が使えないため日常的な移動に危険がともなう。

など母の現状は、いわゆる「フレイル」という状態だと思うが、こういう中途半端な人を受け入れてくれる場所が見つからないのだ。

賃料が安い地元で探し始めたが、上記の問題は解決しなかった。栃木県北で見つかる施設は、要介護を条件とする介護型の施設か、ラグジュアリーな自立型サ高住かのどちらかだった。

「那須まちづくり広場」とは

そんな2021年の秋。

あの「那須まちづくり広場」が、バリアフリーの賃貸始めるってよ〜!

という情報が飛び込んできた。
「那須まちづくり広場」というのは、廃校になった小学校の校舎を利用して、地域の交流拠点を作る活動をしている団体ーというのが、その時点での私の認識だった。

 2018年にはカフェと自然食品のマルシェ、音楽室、ギャラリー、多目的工作室、統合医療の出張窓口などができ、講演会やワークショップ、コンサートなど、さまざまなイベントを開催していた。

当初は校舎のリフォームを最小限にとどめ、2階は元の教室のまま貸し出したりしていたので、私が参加している糸紡ぎのグループで使わせていただいたこともあった。

しかし、「まちづくり」という名を冠したこのプロジェクトは、実は多世代の住まいを包括した大規模なものを目指していたということを、後に知ることになる。


広場の代表を務める近山恵子さんのことは、実は十数年前から存じ上げていた。

この元・小学校から国道沿いに7kmほど離れたところに「ゆいま〜る那須」というサ高住があるのだが、その建設が決まる前ー2008年頃か?ーに、運営主体である(株)コミュニティネットの一員として、那須を偵察(?)に来られていた。

うちのカフェの常連Kさんに連れてこられた近山さんは、高齢者の暮らしと住まいについて、いきいきとしたビジョンをお持ちの方だった。一度会ったら誰でもファンになってしまうような、おおらかで快活なキャラクターに引き込まれ、私もその後何回か「ゆいま〜る」の催しに参加したりした。

近山さん自身も「ゆいま〜る」完成と同時に入居し、那須に移住されている。

旧朝日小学校の再活用について那須町でコンペがあった時、近山さんを中心にしたグループがこれに参加し、採用されたという経緯だった。

近山さんがやることなら間違いない。

那須町には近山さんのファンが多いので、「まちづくり広場」の構想についても、そんなふうに受け取られていたと思う。

しかし、そんな壮大な計画の資金がどこから出るのか?
などと半信半疑でいたところ、このプロジェクトが2019年国土交通省の「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル」に採択され、事業費の2/3が補助金として下りることになったという。
その後銀行融資も決まって、いよいよ大規模なリニューアル工事が始まるーまず、カフェとマルシェからーというのが、2021年の状況だった。

2021年10月、リニューアルオープンしたばかりの「カフェ ここ」で、私は担当の方に話を聞いていた。

「ひろばの家」の3タイプ

「那須まちづくり広場」には、3タイプの住宅が建設予定だという。

ひろばの家・那須1
校庭に建設予定の自立型サ高住。49戸の平屋住宅で、「ゆいま〜る那須」に近い感じ。

ひろばの家・那須2
プールを再利用して建設予定の介護型サ高住。どうやってリフォームするのか、興味津々。

ひろばの家・那須3
校舎の二階、教室を半分にした広さの賃貸住宅。バリアフリー設計だが、サ高住ではなく「セーフティーネット住宅」という枠組み。
エレベーターもあり、高齢やハンディキャップを理由として賃貸を断らない。
いろいろな世代の、さまざまな背景を持つ人が住むことを前提としている。お家賃もお手頃だ。

私に届いた「まちづくり広場がバリアフリーの賃貸を始める」という情報は、「ひろばの家・那須3」のものだった。

これは、いけるかもしれない!

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