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「夢洲IR差し止め住民訴訟」経過報告

原告 山田 明

 「夢洲IR差し止め住民訴訟」原告の一人となり、私なりに問題を整理して発信してきた。研究者の「はしくれ」として裁判の原告になるか迷ったが、原告となった以上、最善を尽くしたい。膨大な裁判資料を読みすすめているが、すぐに忘れてしまうので、まずは住民訴訟の経過を簡単に振り返っておきたい。

 2022年7月29日、住民監査請求「合議不調」の結果を受けて、大阪地裁に提訴した。請求の趣旨は次の2点である。被告・大阪市は土地所有者の責任として、大阪IR株式会社(以下、IR会社)による事業のために必要な夢洲の土地改良事業費を負担する旨の合意を締結してはならない。大阪市は夢洲の土地改良事業のため、IR会社に対し、一切の支払いをしてはならない。

 10月18日の第1回期日において、原告が意見陳述を行った。翌日、原告住民は大阪府・市とIR会社が4月に締結した「基本合意」関係文書を情報公開請求した。結果は文書の表紙しか開示されず、文書本体にあたる別紙1〜5は非開示であった。大阪市に対して不服審査請求をするとともに、訴訟においても文書開示を求める第2準備書面、文書提出命令を提出した。

 2023年4月、国は大阪IR区域整備計画を条件付きで認定した。大阪府などは9月8日、国に「実施協定書案」を申請し、国土交通省は22日に認可。28日には、大阪府とIR会社は大阪IR事業実施協定、大阪市とIR会社は事業用定期借地権設定契約などを締結した。住民訴訟をめぐる状況も大きく変化した。

 住民訴訟原告・弁護団は1月13日、市役所で記者会見を行った。原告団が作成した夢洲の地盤課題などについて多くの質問があった。判所所の指示により「カジノ格安賃料差し止め訴訟」共同訴訟となり、期日後の報告集会も合同で行っている。大阪地裁は7月6日、被告大阪市に対し基本合意関係文書開示を決定した。原告に開示された文書は、別紙のごく一部であり、直ちに裁判所に不服申し立てを行った。
その後、被告は9月28日に締結された次の文書を開示した。

  • 大阪・夢洲地区特定複合観光施設地区整備等実施協定書

  • 事業用定期借権設定契約公正証書

  • 大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の立地及び整備に関する協定

  • 大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の立地及び整備に係る土地使用等に関する協定

 そして12月4日から夢洲のIR用地の液状化対策工事が始まった。7日の第7回期日で土地引渡しが行われていないのに、大阪IR会社が工事を実施するのは、どのような根拠に基づくものか問題になった。被告大阪市は27日、9月29日に締結された「土地改良事業に関する協定書」「液状化対策等工事市有財産使用賃借契約書」などを開示。
 これら文書の精査とともに、差し止め請求の一部変更などが当面の課題である。

(2024年1月6日)


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