引きこもりと童貞はピューロランドに行け


先日、コロナ前ぶりにピューロランドに行くことが出来た。

以前と変わっていたところ、変わっていないところといろいろあった訳だが、

やはりピューロランドはテーマパークとは無縁の生活を送っている人にこそ行って頂きたい場所だと感じた。

今回はピューロランドのショーに特化して考えていきたい。
※ネタバレを含みます。あらすじを知らずにショーを楽しみたい方は注意!


①主人公は元引きこもり?
「Wish me mellのChance for you」

まずはこちらから。

このショーの主人公、ウィッシュミーメルは2010年にデビューしたキャラクター。

フランス生まれのウサギの女の子。メルシーヒルズという場所に留学生としてやってきて、郵便配達のお手伝いをしている。

そんなメルちゃんが自分にまつわるストーリーを語るのがこのショーだ。

実はメルちゃん、元引きこもりである。

メルちゃんはメルシーヒルズに留学生としてやってきた直後、白かったしっぽが虹色に変わってしまった。

そのことを誰にも相談出来ず、引きこもりがちになってしまったのであった。

そんなメルちゃんの元にたくさんの励ましのお手紙が届き、外へ出ることができるようになった。

お手紙を届けてくれた配達員のルッツ(この子はメルシーヒルズを卒業したケニアからの留学生らしい!)に憧れて、郵便配達のお仕事をするようになったのだった。

平成後期を代表する人気キャラクターであるメルちゃんが過去を打ち明ける姿に胸を打たれ、倉木麻衣さん演じるキャラクターと共に、楽しそうに歌って踊る姿に勇気を貰える。
そんな素晴らしいショーだった。


②大本命!ピューロランドを代表するパレード
「Miracle Gift Parade」

続いてはコチラ。ピューロランドを代表すると言っても過言ではない。 あのミラギフである。

パレードと言っても、ピューロランドは屋内施設。パーク内中央に位置する「知恵の木」とその周りのスペースを使ったショーに近い形式だ。

円形のスペースを使ったパフォーマンスになるため、とにかくどの角度から見ても楽しめるようになっている。
さらに、どこで見るかによって見える景色も変わってくる。
そのため何度見ても飽きることがなく、新しい発見があるところが本当に魅力的だ。

その中でも、最大の注目ポイントはキティさんの劇中に登場する「闇の女王」との向き合い方である。

後から紹介するKAWAII KABUKIにおいても言えることだが、キティちゃんは悪役キャラを倒してめでたしめでたし!というような短絡的な手段をとる女ではない。

昼間が嫌い 光が嫌い 笑顔が嫌い

そう言い放って知恵の木の光を奪った闇の女王。闇の女王を倒そうとするダニエル。

そんな時、キティちゃんは闇の女王にこんな言葉を投げかけるのだった。

 「誰だって暗い気持ちになることがある!
      光を見たくないときも…」


キ、キティさん!!!!

そう。キティさんは闇の女王に敵対するのではなく、その気持ちに共感し、寄り添う姿勢をみせたのだ。

昼間が嫌い 光が嫌い 笑顔が嫌い

確かに、そういうことを考えてしまう心は自分の中にもある。
というか、だいたいいつもそうである。
(それはそれで問題だが)
まあ、みんなあると思う!

いつでも明るく元気に、前を向いて生きるのは決して容易ではないし、ちょっとしたきっかけで人を傷つけてしまうこともある。

よくあるショーやパレードにおける勧善懲悪のストーリーでは描かれてこなかったが、誰もが心の底では分かっていたことだろう。

しかし、キティさんはそれを言葉に出して伝えてくれた。

そうすることによって闇の女王は光を取り戻すことが出来た。

それと同時に見守っていた私たちまでもが、女王と一緒に救われたような気持ちになり、
闇の部分すらも少し肯定できた感覚になる。

演出の観点で言えば黒を基調とした女王たちの衣装が白へと変わるところ。
これがまた素晴らしい!

私が行った日はこのパレードは1日に2公演あり、2公演目の方では闇の女王に近い場所で見ることが出来た。

演出上、下半身が固定された状態でのパフォーマンスなのにも関わらず、闇と光を鮮やかに演じ分けていて素晴らしい表現力だった。

見る人の心の中にスっと入り込むキティさんの優しさ、かわいさを是非生で感じ取って頂きたい。


③真の主人公は弱者男性?
「KAWAII KABUKI ハローキティ一座の桃太郎」


最後に紹介するのがこちら。
「KAWAII KAWAII ハローキティ一座の桃太郎」だ。

タイトルだけ見ると、外国人観光客の来園を見越して歌舞伎のニュアンスを取り入れてみました!みたいな軽い感じに思えるかもしれない。

しかし舐めてはいけない。

あのハローキティさんがそんな中途半端なことをするハズがないのだ。


こちらのショーは撮影が一切禁止。(写真は公式サイトで少し公開されています!)
クオリティにおいても妥協がなく、とにかくガチである。


松竹株式会社が全面監修。
脚本、演出、作詞はスーパー歌舞伎を手掛ける横山謙介さん。
演技指導に市川笑三郎さん。
映像出演に坂東巳之助さん。
声の出演に中村獅童さん。


と、とにかくガチの方々がガチでキティさんと向き合って作り上げている。

舞台設備も歌舞伎座風になっていて、本格的な歌舞伎の技法を取り入れた演出盛りだくさん。
観客も本物の歌舞伎さながら掛け声をかけて盛り上がることができ、歌舞伎とミュージカルの良さを存分に感じられる作品だ。

そんなガチすぎるこのショーのストーリーについても述べていきたい。

このショーのストーリーは劇中劇のような構成になっており、まず通常の桃太郎における定番である鬼退治のシーンをハローキティ一座が演じていく。

ところが、鬼の角が花に変わる演出で、1人の鬼役の角が花に変わらないというハプニングが発生。

なんと、鬼役の役者の中に本物の鬼が混ざっていた、、、!

そう、このショーの一番の見どころは
「鬼」
である。

鬼といえば桃太郎をはじめとする様々な昔話において悪役として描かれてきた。
ところがKAWAII KABUKIにおける鬼は違う。

最初、ハローキティ一座のメンバー達は、本物の鬼ということで彼が悪であると決めつけてしまった。
しかし、彼が一座に紛れ込んでいたのには理由があった。

人々を笑顔にするハローキティ一座に憧れていた鬼のゴロウ。
鬼役ならば自分でも紛れ込めるかもしれないと思っての行動だったのだ。

彼はみんなから怖がられ、嫌われる「鬼」でありながら、人々を笑顔にしたいという夢を密かに描き続けてきたのだった。

正体がバレて、みんなを怖がらせてしまったゴロウは夢破れ、一座のもとを後にする。


鬼ヶ島に戻ってからも、仲間から夢を笑われ、ゴロウは絶望し、嘆き悲しむ。
自らの角を切り落とそうとするシーンでは胸が締め付けられる。
その姿はまるで現代における「弱者男性」だ。


鬼だからってみんな悪役じゃない。
鬼だって私たちと同じように夢を持っているかもしれない。
それなのに私たちは、、

多様性の時代。特に最近のピューロランドは私のように1人で訪れる人も多く、家族連れに限らず男性の割合もかなり増えている。

ゴロウの境遇に自分を重ねてしまう人も多いのではないだろうか。


そこでハローキティ一座の皆さんは鬼ゴロウを迎えに鬼ヶ島までやってくる。

彼の個性である「角」を讃え、同じ夢を持つ者として、仲間になろうと提案するのだった。

ゴロウを迎えた後のハローキティ一座のパフォーマンスが実に素晴らしい。

鬼であるからこそ、ゴロウだからこそ出来ること、与えられた役割がそこにある。

ハイクオリティなパフォーマンスはまさに
ピューロランドの真骨頂といったところである。
(隣で鑑賞していた女性たちも、終演後に「宝塚かと思った!」「これは刺さる人が多いのも分かるわ!」と大絶賛しておられた)

これは是非、見に行ってその場で体感して頂きたい。


サンリオの企業理念である「みんななかよく」

それをファンタジーの中での綺麗事で済ませず、闇の部分にもスポットを当てて見る者の心に訴えかける。

そんな世界観がピューロランドのショーではしっかりと描かれている。

かわいいだけでは留まらない。
ピューロランドは子供のためだけの場所ではない。

大人になってもずっと見守っていきたい。もっと応援したい。

改めてそう強く思った。


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