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秋田旅行1日目

 両親と妹が秋田にやってきて、一緒に秋田県内を旅した。

 両親に会うのは1年半ぶり、妹に会うのは3年ぶり位である。

 待ち合わせは角館。台風が近づいている影響で生憎の雨だったけれど、秋田から1時間以上車を運転して角館に着き、無事三人と合流したときにはうまい具合に雨が止んでいた。

 駅前に車を止めて外に出るが、どんな風に待っていればいいのか迷う。駅の方を向いて待つのはいかにも待っていましたという感じで格好が悪い。結局駅から少し離れた所にある角館の町案内マップのようなものを見てぼんやりと待つ。

 到着予定時刻を過ぎたけれどなかなか3人は現われなかった。新幹線は到着していて、他の乗客はすでに降りているようだ。
 にも関わらずなかなか姿を現さない。

 案内マップを見るフリをしつつ駅の方をチラチラと窺ったりしていると、ふいに大きく舌を鳴らす音が聞こえた。

 見ると、両親と妹のご一行様が姿を現していた。

 大きく舌を鳴らしていたのは母親だった。

 母親は、家族の誰かを呼ぶときいつもそんな風に丸めた舌を打ち鳴らすようにして、大きく舌を鳴らす。

 子供の頃、スーパーで家族の誰かが行方知れずになったとき、そんな風にして呼び寄せていたものだ。

 両親はそんなに変わりないように見えたけれど、久しぶりに見た妹は少し老けたな、と感じた。

 駅前の駐車場は30分以内のご利用で、とのことなので場所移動し、すぐ近くの広めの無料駐車場に車を停め、いざ角館散策。

 13時前位の時間だったので、とりあえずランチということになる。

 妹はきりたんぽ鍋が食べたいと言い、母親もそうねと言う。父親は無言で歩く。
 
 ランチ選びは僕の得意分野である。前回角館に来たときに諦めた店のひとつ、食堂いなほに向かう。

 母親は旅行ガイドを読み込んでいた為、店の名前を告げるとそれだけでどんな店か思い浮かんだらしい。

「がっこ懐石のお店か」

 そう言われて思い出した。確かにそこはがっこ懐石が有名なお店である。名前だけは覚えていたけれど、メニューまでは憶えていなかった。

 母親はがっこには興味がないらしく最初難色を示したが、店の前まで来ると、きりたんぽ鍋などのメニューが書かれた看板が立っていて、がっこ懐石以外のメニューも色々ありそう、ということで食堂いなほに入る。

 僕と父親はがっこ懐石、母親と妹はきりたんぽ鍋を注文する。

がっこ懐石

 運転手役なので飲めなかったけれど、お酒が合いそうな料理だった。いぶりがっこ丼が面白かったな。

 父親と妹は枝垂桜という角館の地ビールを注文して飲んでいた。普通なら羨ましいと思ったりするような気がするのに、そんなこと何も思わなかったのは何でだろう? やせ我慢とかではなく、僕は家族といるときはお酒を飲みたい欲があまりなくなる。

 ということは僕が普段お酒をよく飲むのは寂しいせいなのかな? そんなことをぼんやり考えながら見ていた母親の顔は、確かに2年前よりも老けた気がして、時の流れを感じた。

 外に出るとパラパラと雨が降っていた。

 武家屋敷の方に向かい歩き出すと、後ろの方で母親が何かブツブツと言っている。

 どうも車の中に傘を忘れてきたらしかった。

 しょうがないので母親と相合い傘をして歩いた。

 新緑の武家屋敷は晴天の中歩けば目に眩しかったのかもしれないけれど、雨が降っていたせいであらゆるものがくすんで見えた。

 秋田は曇り空が多いから自殺者も全国で一位、みたいな話をする。陰険な人が多いみたいね、と妹も返してくる。

 角館には桜の時期にも来たことがあるけれど、その時も雨が降っていた。晴天の角館を見たことがない。

 だから僕にとって角館は雨の街の印象すらある。


雨の日の角館の桜

 ぶらぶらと歩き、武家屋敷の中では1番見所の多い青柳家に案内する。

 鎧や刀が展示されていたり、漫画みたいな解体新書が展示されていたり、見所は多いけれど、個人的に面白いと思ったのは、江戸時代末期や明治時代の写真がたくさん飾られているコーナー。

 昔の人なのに、今とあまり変わりのない顔をしている。男は顔も髪もちゃんと整えられていて、ジャニーズみたいにキリリとした顔のイケメンもいた。

 青柳家を出て、さて次はどこの武家屋敷に行くのかと思ったら、母親は武家屋敷にはもう満足したらしく、後はcafeにでも入って次なる目的地田沢湖へ行こう、とのこと。

 角館の武家屋敷にはずっと行ってみたかったと言っていたのに、満足するのが早い気がする。角館にはまだまだたくさんの武家屋敷があるでも、確かに雨の街を歩くのは疲れる。
 そのプランに何ら異論はなかった。

 母親はパフェやケーキが好きなのでそういうカフェに行きたがったが、僕は前回角館に来たときに行けなかったカフェがあったので、自然にそちらのカフェに誘導した。

「あっちの方に良い感じのカフェがあるらしいよ」


チーズケーキ
有頂天喫茶

 有頂天喫茶は予想通り落ち着くいい雰囲気のカフェだった。
 チーズケーキもちょうどいい大きさで、「ちょうどいい」と家族みんなで盛り上がった。
 夜はホテルでバイキングの予定だったので、あまりお腹いっぱいになるのも良くない。いろんな意味でそのチーズケーキはちょうど良かった。

 その後は車に戻り、田沢湖へ向かう。

 


 




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