筑波研究学園都市建設後期計画(案)

筑波研究学園都市建設後期計画(案)

(昭和55年3月 国土庁)


筑波研究学園都市建設後期計画の意義と目標

■現状
筑波研究学園都市は、昭和38年にその建設が決定されて以来、東京及びその周辺から移転し、又は新設する国等の試験研究機関及び大学を核として、高水準の研究、教育のための拠点を形成し、科学技術、学術研究及び高等教育に対する時代の要請にこたえるとともに、環境良好な田園都市として整備し、あわせて、東京大都市地域における人口の過度集中の緩和に寄与するなど、首都圏全体の均衡のとれた発展に資することを目的として建設が進められてきたところである。昭和54年度、移転又は新設する43の国等の試験研究・教育機関等及び先行的に整備すべき公共・公益的施設が概成した。
しかしながら、現状は、研究教育活動及び日常生活に必要な最小限の施設が整備されたというにとどまり、都市づくりそのものは、なお今後の課題として残されており、昭和55年度は、いわば筑波研究学園都市建設の後期段階に入ろうとする時期である。

■意義
国土庁としては、この時期に当たり、筑波研究学園都市建設の今後の課題、実施すべき施策等を後期計画としてまとめ直し、明示することが必要であると考えた。
後期計画は、従来の首都圏整備法、筑波研究学園都市建設法、筑波研究学園都市建設に関する閣議決定、研究・学園都市建設推進本部決定等に定められた目的、方針又は計画に基づき、今後に残された主要な課題及び実施すべき施策等を、昭和55年度以後の後期段階に遂行すべきものとしてまとめたものであり、これからの都市建設推進に当たっての指針とするものである。

■基本的課題と目標
本都市が筑波研究学園都市建設法第1条にいう「試験研究及び教育を行うのにふさわしい研究学園都市」となり、「均衡のとれた田園都市」となるためには、今後、更に円滑な研究、教育活動と快適な日常生活に必要な文化教育機能、商業娯楽機能、交通機能等が確保されることが必要であり、それを支える人口と産業の集積が不可欠の条件である。
また、本都市が一体的にまとまり、かつ、自立した都市として、総合的に整備・管理運営が行われるよう、都市の経営基盤を充実・強化する必要がある。

以上のような認識のもとに、

筑波研究学園都市を試験研究・教育機能を中核とした総合的かつ均衡のとれた都市機能と国際的な研究交流機を有する行財政的に自立可能な良好な環境の人口20万人の都市とすることを目標として、後期における都市建設を推進する。

■施策の遂行
後期計画においては、前期から継続する都市建設事業を完遂し、また、造成住宅地等の処分を都市建設の状況等を十分配慮しつつ計画的に進めるほか、国・県・関係町村及び住宅・都市整備公団が一体となって、以下の諸施策を推進するものとする。
これらの諸施策に、筑波研究学園都市を均衡ある都市として速やかに自立発展させるため、できるだけ早期に終結させる必要があるが、諸般の情勢も考慮して昭和65年度までにこれらの施策を終えることを目標とする。


施策の基本的方向

■試験研究・教育機能の充実
筑波研究学園都市を我が国における試験研究・教育の中心地として育成し、高水準の試験研究・教育機能を維持し、及び増進するとともに、試験研究・教育におけるその国際的役割を果たさせるため、国の試験研究・教育機関の充実、民間の研究機関等の導入、国の内外を通じた研究・教育の交流を促進するための施設の整備等を図る。

■人口の定着と都市の均衡ある発展
研究学園地区への人口の定着及び周辺開発地区の整備を図り、均衡ある都市機能を確保するため、生活基盤及び産業基盤の整備と産業の導入を推進する。
また、試験研究・教育機能以外の首都機能を分担させることも検討しつつ、都市の建設を進める。

■研究学園都市にふさわしい良好な環境と利便の確保
研究学園都市にふさわしい都市機能を確保するため、広域的な交通体系の整備、都心の業務・商業施設、文化・レクリエーション施設等の整備を図る。
また、市街地が優れた環境と景観を有し、かつ、周辺の自然的環境と調和した田園都市として整備する。

■都市の一体化と自立の促進
筑波研究学園都市の総合的な整備・管理運営体制を確立し、都市の自立を促進するため、都市の行政的一体化と経営基盤の充実・強化を図る。


後期における主要施策

■試験研究・教育施設の整備等
(1)試験研究・教育機能の充実のため、国の試験研究機関及び大学並びに研究交流促進のための施設の整備を図るほか、民間の研究機関等の導入を図る。
(2)研究・教育の国際交流を促進するために必要な施設の整備を図る。

■人口・産業の集積の促進
(1)人口の集積・定着を促進するためのきめ細かな施策を講じるものとし、住民の利便を確保するため、研究学園地区に建設を予定している公園、学校、保育所等の公共・公益的施設を人口の集積に応じて調整する。
また、試験研究・教育機関及び産業の就業者等に対して良好な住宅を提供するとともに、民有宅地の適正な利用を促進するため、公的機関等による賃貸・分譲住宅の建設、住宅融資、土地情報の提供等の施策を推進する。
(2)民間研究機関、試験研究・教育機関に関連する産業、試験研究・教育機能の高度活用が図れる産業及び都市活動・都市の発展に必要な産業等の導入のための施策を講じる。
また、首都機能分散のための行政機関の移転、国の試験研究・教育機関の追加移転の受入れ等についても検討する。
(3)周辺開発地区において民間研究機関、産業等の導入を図るため、県、住宅・都市整備公団等が中心となって必要な新市街地の開発を行うとともに、産業基盤の整備のため、公共・公益的施設の整備を図る。
(4)周辺開発地区において、農業等の地域産業の振興を図るため、農業生産基盤の整備その他の施策を推進する。

■交通体系の整備
(1)首都との交流の円滑化のため、国鉄常磐線、常磐自動車道等の整備を図る。
(2)研究・教育の国際化に対応するとともに、新東京国際空港をはじめとする首都圏の各地域との円滑な交流を図るため、首都圏中央連絡道路(仮称)等の整備を推進する。
(3)都市内相互及び土浦等の近隣都市との連絡強化のため、主要地方道等の整備を推進するとともに、バス交通網の整備、駐車場、バスターミナル及び新交通システムの整備を推進する。

■都心の整備
人口約20万人に対応した総合的な都心機能を確保するため、都心地区において、行政施設、学園センタービル(仮称)及び総合交通ターミナルを整備するとともに、総合病院、博物館、大規模小売店舗その他の民間商業施設等の整備を推進する。
更に、公害防止機能等都市機能の充実を図るため、真空集塵、地域暖冷房、受信障害対策施設(CATV)等の整備を推進する。

■良好な環境の確保
(1)快適な居住環境及び良好な市街地景観の整備を図るため、歩行者専用道路の整備、地域地区制のきめ細かい指定、建築協定・緑化協定の締結、都市標識の設置・表示の統一等の施策を推進する。
(2)周辺開発地区において、住民の生活環境を確保するため、地区の特性に応じて、必要な公共施設等の整備を推進する。
(3)市街地と自然的環境との調和を図るため、良好な自然緑地等の保全及び自然的環境と調和した市街地景観の確保に努める。

■都市の整備・管理運営体制の確立
(1)都市の行政的一体化を図るため、県及び関係町村は、必要な諸条件の整備を進める。
(2)国・県・関係町村及び住宅・都市整備公団で構成される筑波研究学園都市協議会(仮称)において、後期段階における都市の整備・管理運営の進め方の検討並びに諸施策の実施に関する連絡協議会を行う。
(3)都市の自立の促進と、都市の財政基盤の充実・強化を図るための施策を推進する。
(4)住民に対する利便等の維持・増進のため、第三セクターの機能強化とその活用を図る。

■国際科学技術博覧会への対応
昭和60年に筑波研究学園都市において、21世紀を創造する科学技術ビジョンを内外の人々に示し、科学技術に対する理解を深めることなどを目的として、国際科学技術博覧会の開催が計画されている。
博覧会会場の位置の選定、博覧会の施設及び関連公共事業に関する計画の策定に当たっては、博覧会の開催と筑波研究学園都市の整備・育成との斉合性を十分考慮するものとする。

(注)この「筑波研究学園都市建設後期計画」(案)は、国土庁が筑波研究学園都市関係各機関と調整のうえ、とりまとめたものである。

~ 以上 ~

以下、関西文化学術研究都市の概成に必要な周辺地区(筑波研究学園都市では「周辺開発地区」)整備の重要性について、関係機関の共通理解としたい筑波研究学園都市の先例において参考となるポイントなどを順不同でメモします。

▼本計画案は、茨城県による「筑波研究学園都市自立計画(案)」(昭和53年3月)の強い働きかけを受け、研究学園地区概成後、国(当時の国土庁)が国の概ね10年間の政策としてとりまとめたプロセスの記録であると考えられます。

▼基本的には県の「筑波研究学園都市自立計画(案)」と同様、周辺開発地区を合わせた20万人の人口フレームと自立都市建設を目標としてます。

▼「都市の一体化と自立の促進」として「筑波研究学園都市の総合的な整備・管理運営体制を確立し、都市の自立を促進するため、都市の行政的一体化と経営基盤の充実・強化を図る」のくだりでは、筑波研究学園都市を将来にわたり管理運営する主体は基礎自治体であること、そして、その任に耐えうる基礎自治体を建設するため、6町村の合併促進を明確に意図することになったことが窺われます。

▼後期の新たな10年間の主な施策の2番目「人口・産業の集積の促進」として、周辺開発地区も合わせて後に言う「人口の定着」と「産業の集積」を図ることが明確に示されています。

▼さらに周辺開発地区における面整備と関連公共公益施設の整備主体は県並びに住宅・都市整備公団(現UR都市機構)等が中心となることが明確に示されています。

▼「交通体系の整備」では「国鉄常磐線(後の常磐新線)」による首都との交流促進が第一義であると位置づけされています。

▼国際科学技術博覧会(つくば博)の開催計画と周辺開発地区の整備との整合を図ることが強く意識されており、後に会場跡地を工業団地として活用することなどに繋がっていったものと考えられます。

▼本計画案で見られるように周辺開発地区整備を重点施策化する考え方が、後の「研究学園地区建設計画」と「周辺開発地区整備計画」との2階建て計画の形態に整理されていく端緒になったものと考えられます。

令和3年6月6日現在

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