筑波研究学園都市周辺開発地区整備計画

周辺開発地区整備計画

(平成10年4月 茨城県)
平成10年4月20日内閣総理大臣承認

序章

1. 計画の性格

この計画は、筑波研究学園都市建設法に基づいて作成したもので、同法に基づいて作成される研究学園地区建設計画とともに、筑波研究学園都市の建設に関する総合的な計画となるものである。

2. 計画の対象区域

この計画は、筑波研究学園都市の地域のうち、筑波研究学園都市建設法第2条第3項に定める周辺開発地区の区域を対象とする。

3. 計画の運用等

首都圏整備計画等この計画と関連する主要な計画が改定又は策定された場合その他情勢の変化があった場合においては、必要に応じ弾力的な運用又は見直しを行うものとする。

第1章 周辺開発地区整備の基本方針

筑波研究学園都市建設法第1条の目的を達成するため、研究学園地区建設計画の第1章の都市整備の基本目標を踏まえ、周辺開発地区の整備を次の方針により推進する。

1. 都市の一体的・総合的な整備

(1) 均衡のとれた都市形成

研究学園都市との適切な都市機能の分担を図りつつ、一体的な整備を進め、全体として均衡の取れた都市形成を図る。

(2) つくばの中枢拠点の形成と都心機能の充実・強化

本都市の成長に対応し、土浦学園線を軸とした東西軸市街地の計画的な形成や、研究学園地区と葛城地区との一体的な土地利用の推進と連携により、広域自立都市圏中核都市の中心にふさわしい中枢拠点を形成し、商業、業務、サービス、文化などの高次都市機能の集積等により、都心機能の充実・強化を図る。

(3) 都市と農村との共生
つくばの持つ豊かな自然・田園環境との調和ある整備、環境への負荷の少ないまちづくりを進め、環境共生型都市の形成を図る。

2. 広域交通体系の整備と計画的な市街地開発の推進
本都市の一層の発展を図るため、本地区において、基幹となる常磐新線や首都圏中央連絡自動車道などの広域交通体系の整備を進める。これらの広域交通体系の整備に伴い計画的な市街地開発を推進し、質の高い居住機能の整備を主体とした複合的な機能を持つまちづくりを進める。併せて、研究学園地区との連携を考慮しつつ、道路、河川、上・下水道、公園などの関連都市基盤の整備を進める。

3. 科学技術集積等を活かした産業の振興
科学技術基本法に基づく科学技術基本計画(平成8年7月策定)における本都市の位置づけを踏まえ、科学技術中枢拠点都市としての一層の育成を図るため、研究開発型工業団地等の整備により、研究開発機関の誘致並びに先端技術産業や知識創造型産業の導入・育成を進めるとともに、国際的な情報の受発信拠点としての高度情報通信基盤の整備を図る。
また、本都市の科学技術集積効果を活かし、起業化を促進し新しい成長産業を育成するため、県内産業への研究成果移転システムの充実・強化、ベンチャー企業団地の整備やベンチャービジネス。育成への支援強化を図る。

4. 都市化を活かした農業の振興と活性化

農業の振興と活性化を図るため、都市化を活かした都市型農業の育成、先端技術を活用した施設園芸等の育成、銘柄米の低コスト生産による稲作農業の育成を行う。

5. 生活環境の整備と環境の保全

研究学園地区との均衡に配慮しつつ、道路、上・下水道の整備を進め、生活環境の整備・充実を図る。また、本地区の整備に当たっては、豊かな自然環境や集落環境の保全並びに公害の防止など環境の保全に十分配慮する。

6. 質の高い住環境と豊かな市民生活の創造

つくば固有の田園景観の保全とあいまって良好な都市景観の創出を図るなどつくばの豊かな自然・田園環境と調和した質の高い居住地域の形成を図る。
また、自然資源を活かしたスポーツ・レクリエーション機能の充実・強化や都市のにぎわいの創出、外国人など多様な住民との交流や市民参加のまちづくりの推進、質の高い文化施設を基盤とした多彩な芸術・文化活動の展開や科学技術集積効果の地域生活への還元など科学技術と生活が調和したつくばらしい文化の形成により、豊かな市民生活の創造を図る。

第2章 人口の規模及び土地の利用

第1節 人口の規模

周辺開発地区の将来人口は、常磐新線沿線開発による人口増加などを考慮して、概ね25万人を見込むものとする。

第2節 土地の利用

1. 都市と自然・田園の調和を基調とした土地利用の推進を基本とする。

2. 広域自立都市圏中核都市の中心にふさわしい中枢拠点の形成を図るため、土浦学園線を軸とした東西軸市街地の計画的な形成と、研究学園地区の都心地区とその周辺及び葛城地区の一体的な土地利用の推進により、計画的に市街地の整備を図る。

3. 常磐新線の建設と研究学園都市としての一層の整備を行うため、常磐新線沿線開発地区(葛城、萱丸、島名・福田坪、上河原崎・中西、中根・金田台地区等を含めた6地区)等において、農業上の土地利用及び自然環境との調和を図り、環境の保全に配慮しつつ、計画的に市街地を開発する。
なお、計画的に市街地を開発する地区のうち、当面、研究開発の用に供する施設を整備する区域(研究開発施設整備地区)については、別表のとおりとする。

4. 既存集落については、屋敷林や家並みなど良好など集落環境の維持・保全を図りつつ、道路、上・下水道などの生活環境の整備を図る。

5. 優良農用地については、蚕食的な市街化の防止を図りつつ、土地利用型農業や都市型農業の推進を図るため、生産基盤の整備及び保全に努めるとともに、意欲ある農業経営体へ農地の利用集積を進める。

6. 豊かな自然環境に恵まれている水郷筑波国定公園や牛久沼等については、水質や自然植生、自然景観の保全を図りつつ、レクリエーション機能の整備を図る。

7. 環境共生型都市を形成するため、良好な林地等の自然環境・田園環境の維持・保全を図る。

第3章 公共・公益的施設の整備

第1節 公共施設

1. 交通施設

(1)東京及び周辺地域との連絡を強化し、良好な市街地の形成と本都市の発展に資するため、本地区において、基幹となる常磐新線の整備を進める。

(2)成田及び首都圏各地域との連絡を強化するため、高規格幹線道路として首都圏中央連絡自動車道の整備を推進する。

(3)本都市と近隣都市との連絡の強化と、都市交通の円滑化を図るため、国道6号牛久土浦バイパス、国道125号つくばバイパス及び県道藤沢荒川沖線、その他常磐新線沿線開発関連道路などの幹線道路を体系的に整備するとともに、その他の生活関連道路についても整備する。

(4)本都市内の交通利便性及び近隣都市との連絡を強化するためのバス網の充実・強化、常磐新線の整備に伴う駅前広場や駅周辺の駐車場の整備を進めるとともに、土浦市、牛久市との連携を図る交通システムの整備について検討する。

2. 用排水施設

(1)水道及び工業用水道

既存集落における生活環境の改善と安定給水の確保を図るとともに、市街地開発に伴う人口増加に対応するため、水道の整備を推進する。
また、工業系の市街地開発に伴う用水需要に対応するため、工業用水道の整備を推進する。

(2)下水道

既存集落における生活環境の改善と公共用水域の水質保全を図るとともに、市街地開発に対応するため、流域下水道及び公共下水道を整備する。

(3)河川

市街地開発に対応するとともに、水害の防止と河川環境の保全・創出を図るため、小貝川、桜川、谷田川、西谷田川及び蓮沼川等を整備する。

3. 公園・緑地等

緑豊かでうるおいのある生活空間の形成を図るため、常磐新線沿線開発関連の公園(地区公園、近隣公園、街区公園)を整備するとともに、筑波山、牛久沼等の優れた自然環境との関連を配慮しつつ、史跡公園、総合運動公園、防災公園、都市と農村の交流拠点(公園)、墓園等を整備する。

4. 廃棄物処理施設等

粗大ごみ処理施設の計画的更新を図るとともに、リサイクル施設の整備、ごみの最終処分場の確保などについて検討する。

第2節 公共的施設

1. 教育施設

市街地開発に伴う人口増加に対応し、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校等を整備する。

2. 行政サービス施設

住民生活の安全確保と行政サービスの向上を図るため、市街地開発に伴う人口増加に対応し、必要に応じて消防、警察、市役所出張所等の施設を整備する。

3. 福祉・厚生施設

老人福祉の向上、児童の健全育成を図るとともに、市街地開発に伴う人口増加に対応し、老人福祉施設、児童福祉施設(保育所、児童館)等を整備する。

4. 社会教育・文化施設

住民生活の文化的環境の充実を図るとともに、市街地開発に伴う人口増加に対応し、公民館、図書館、体育施設、文化施設、国際交流施設等を整備する。
また、科学技術博物館の整備について検討する。

5. 情報通信施設

情報化の進展や市街地開発に対応し、産業の高度化、生活の利便性向上やコミュニティ形成の促進を図るため、高度情報通信基盤の整備を推進する。

第4章 農業の振興と活性化

次の方針により、農業の振興と活性化を図る。

(1)都市化を活かした都市型農業の育成を図るため、収益性の高い葉菜類等軟弱野菜の生産振興、有機栽培等の消費者ニーズに対応した環境保全型農業の展開、地元消費者と連携した産直販売等の推進及び遊休地等を活用した市民農園、都市と農村の交流拠点などの設置による交流推進を行う。

(2)先端技術を活用した施設園芸等の育成を図るため、環境制御温室や養液栽培の導入による高品質栽培、作業機械の導入による省力化を行なうとともに、研究機関と連携し研究成果等を活用した農業の展開を図る。

(3)銘柄米の低コスト生産による稲作農業の育成を図るため、地域の特色を活かした良質米の生産と販売対策及び大規模経営体や生産組織の育成による低コスト稲作の推進を行なう。

別表 研究開発施設整備地区の名称及び区域

画像1

茨城県知事が定める区域を示す地形図は、茨城県企画部地域振興室事業調整課並びにつくば市役所及び茎崎町役場に備え付け、閲覧に供する。

~ 以上 ~

以下、関西文化学術研究都市の諸計画(国の基本方針、府県の建設計画など)と比較した場合の特徴的な事項や、先行事例として今なお参考にしたい事項などを順不同でメモします。

▼序章にて、研究学園地区建設計画と並ぶ計画(2つ合わせて総合計画であること)の位置づけがなされています。

▼第1章「周辺開発地区整備の基本方針」では、同都市全体の都市像は研究学園地区建設計画の規定に委ね、当該計画では周辺開発地区における都市建設の整備方針を定めています。

▼方針「1. 都市の一体的・総合的な整備」では、研究学園地区と周辺開発地区を一体的な都市として整備することが都市建設の第一義であることを謳っています。また、周辺地区に位置しつつも研究学園地区と連坦する地区(葛城地区)を中枢拠点に組み入れる位置づけがなされています。

▼方針「2. 広域交通体系の整備と計画的な市街地開発の推進」では、常磐新線の整備に合わせて計画的な市街地整備(沿線開発地区整備)を進める方針を示しています(周辺開発地区における「人口定着」)。

▼方針「3. 科学技術集積等を活かした産業の振興」では、研究学園地区建設計画の「新産業の創出」に呼応する形で、同都市の一層の育成のために必要な施策として、研究学園地区における研究成果を活かす研究開発型工業団地等を周辺開発地区に整備する方針を示しています(周辺開発地区における「産業集積」)。

▼方針「4. 都市化を活かした農業の振興と活性化」では、研究学園地区建設計画の「地域社会への貢献」に呼応する形で、都市型農業などの育成を行う方針を示しています。

▼方針「5. 生活環境の整備と環境の保全」では、研究学園地区と周辺開発地区との「均衡」が明確に目指され、両地区間に生活環境の格差を生じさせない方針が示されています。

▼方針「6. 質の高い住環境と豊かな市民生活の創造」では、周辺開発地区の住民にとっても同都市住民としての恩恵が享受できる都市建設を目指す方針が示されています。

▼第2章第1節「人口の規模」では、常磐新線沿線開発地区での人口増加を特出ししています。

▼第2章第2節「土地の利用」では、「調和」を基調として、研究学園地区と連坦する地区との一体的土地利用や、新たな市街地整備として常磐新線沿線開発地区となる地区名などを同計画で指定しています。

▼第3章「公共・公益的施設の整備」では、常磐新線の整備を最重要課題として位置づけているほか、公共的施設(見出しは「公共・公益施設の整備」又は「公共・公共的施設」の混同による誤植の可能性あり)として常磐新線沿線開発地区開発に伴う人口増加による各施設需要に対応した整備が示されています。

令和3年(2021年)5月13日現在

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