奥田懇第1次提言(抜粋)

関西学術研究都市についての第1次提言

昭和53年12月
関西学術研究都市調査懇談会

3-2 主たる計画内容

(1)新たな学際的研究機構

日本の未来、ひいては人類の未来にかかわる研究に長期的視点で取り組むため、新たな学際的研究機構を設置する。現時点で構想している新しい学際的研究機構を例示すれば以下のとおりである。
これらの研究機構の内容、優先順位、形態等、その具体化については、今後、さらに検討を深めねばならない。

① 資源エネルギーに関する研究機構

○核融合の将来性に関する総合的研究の調整
○未開発エネルギーの開発探査の研究
○新資源の開発、探査の研究
○省エネルギー、省資源のシステム的研究
○代替エネルギー、代替資源の開発研究

② 食糧問題に関する研究機構

○食糧資源の研究
○食糧の生産と配分の研究
○食糧技術開発の研究
○200海里水域の活用に関する研究

③ 情報文化に関する研究機構

○情報ヒッチング(Hitching)システムの研究
○情報検索システムの研究
○コミュニケーション・システムの研究

④ 将来産業に関する研究機構

○将来技術の研究
○技術開発システムの研究
○産業組織の研究
○中小企業の将来展望と技術開発研究
○創造理論の研究

⑤ 人間科学に関する研究機構

○文化の創造と伝承に関する研究
○生命科学の研究
○社会福祉の研究
○高令化、高学歴化問題の研究
○生涯教育問題の研究
○余暇利用の研究

⑥ 将来都市に関する研究機構

○T・H・E(技術、人間、環境)アセスメントの研究
○都市コミュニティの計画と研究
○土地、水、環境等を含むスペース・プラニング研究
○交通問題の研究
○比較都市の研究

⑦ 南北問題に関する研究機構

○文化問題の研究
○技術移転の組織的研究

(2)新しいコア機構ならびに共同利用施設の設置

① 新しいコア機構

上記7つの研究機構は、それぞれ自然科学系、人文科学系、社会科学系のスタッフを含み、国際的にも開かれた学際的研究機構として構想されているが、これとは別に、大規模研究のシステム化、統合化を主目的とした新しい学術研究のコア機構を設置する。このコア機構は、必要に応じこれら7つの研究機構を横断した強力な学際研究の組織化、国内、国外、あるいは官、民の研究交流の促進等を通じ、研究の効率化、統合化をはかり、また付帯サービス機能の共同化の推進を通じて学術研究都市の発展に寄与するものとする。
コア機構の役割
(イ)国内、国外の共同研究テーマの決定とプログラム化
(ロ)共同プロジェクト研究の実施
(ハ)新テーマの研究の推進
(ニ)内外の大学、研究所の参画体制の確立
(ホ)学術研究都市の発展方策の企画、研究
(ヘ)共同利用施設の維持、管理、運用

② 共同利用施設

学術研究都市に立地する個別の研究機関の重複投資を避け、施設整備水準を高める目的のほか、共同利用を通じて、所属を異にする研究者相互間の交流や相互啓発の機会向上をはかるため、先に述べた共同利用施設について高水準の整備を進める。

(3)既存施設の移転、拡充等の受け入れ

既存の大学、研究施設等の中に、施設更新、拡充、新規付帯施設の設置等の動きがあることに積極的に対応し、これら施設の受け入れをはかる。
これに関しては、可能な限り、別項に述べる共同利用施設の運営への参画を求めるものとする。
○受け入れをはかる学術、研究施設・国・公・私立大学、同付置研究所
・国・公立試験、研究機関
・民間研究所等

(4)その他の都市施設等

都市の活力そのものが、学術研究にとっても重要な要素であることに鑑み、住宅はもとより上下水道、学校、公園等の通常の都市施設のほか、水準の高い医療施設、文化施設等の都市的魅力の創出につながる各種施設についても積極的な整備を進める。

~以上~

以下、基本的な認識をメモします。

▼関西学術研究都市調査懇談会(通称「奥田懇」)の第1次提言では、けいはんな学研都市が取り組むべき人類的課題の例示と、それら課題解決にあたる7つの学際的研究機構の提案が行われました。

▼その当時、第一に位置づけられていた分野が「資源・エネルギーに関する研究」であり、さらにその中でも筆頭が「核融合の将来性に関する総合的研究の調整」でした。

令和3年(2021年)8月28日現在

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