筑波研究学園都市研究学園地区建設計画

研究学園地区建設計画

(平成10年4月 国土庁)
平成10年4月20日内閣総理大臣決定
平成10年4月27日総理府告示第15

序章

1 計画の性格

この計画は、筑波研究学園都市建設法に基づいて作成したもので、同法に基づいて作成される周辺開発地区整備計画とあいまって、筑波研究学園都市の建設に関する総合的な計画となるものである。

2 計画の対象区域

この計画は、筑波研究学園都市の地域のうち、筑波研究学園都市建設法試行令第1条に定める区域を対象とする。

3 計画の運用等

首都圏整備計画等この計画と関連する主要な計画が改定又は策定された場合その他情勢の変化があった場合においては、必要に応じ弾力的な運用又は見直しを行うものとする。

第1章 都市整備の基本目標

筑波研究学園都市建設法第1条の目的を達成するため、筑波研究学園都市について以下の都市像を基本目標とし、これを踏まえ、同都市の中核となる研究学園地区について、周辺開発地区との連携を図りつつ整備を推進する。

1 科学技術中枢拠点都市

独創的・先進的な研究を生み出す世界的な科学技術中枢都市とする。また、科学技術集積を活かした新産業創出、科学技術理解増進、農業等との連携の拠点とする。さらには、サイエンス型国際コンベンション都市としての機能を備えた都市とする。

2 広域自立都市圏中核都市

常磐新線及び首都圏中央連絡自動車道等の高速交通体系の整備等を背景に、広域的な都市圏の中核都市として、都心機能の充実・強化等により高次都市機能の集積と都市内の高い利便性を実現した都市とする。

3 エコ・ライフ・モデル都市

21世紀の住文化やライフスタイルを提案する都市づくりのパイロットモデル都市として 、地域固有の資源である自然・田園と都市の調和、環境への負荷の少ない循環型の街づくり、緑豊かな居住環境、美しい景観、豊かな文化、多様な住民の交流と街づくりへの参画、次世代を担う子供等に夢を与える環境等の実現した都市とする。

第2章 人口の規模及び土地の利用

第1節 人口規模

研究学園地区の人口は、おおむね10万人を見込むものとする。

第2節 土地の利用

1. 研究学園地区を、研究・教育施設地区、都心地区及び住宅地区に大別し、環境の保全に配慮しつつ、土地の適正な利用を図る。


(1) 研究・教育施設地区
 研究・教育機関等の施設用地は、原則として、文教系機関を北部に、建設系機関を北西部に、理工系機関を南部に、生物系機関を南西部に立地する配置を維持する。
 各機関の施設の維持、更新、増築等に当たっては、研究機能の充実を促進する観点を踏まえつつ、あわせて公害の防止に配慮するとともに、現存する良好な自然環境を極力保全するなど優れた環境と景観を確保する。

(2) 都心地区
 広域自立都市圏の中核都市にふさわしい行政、商業、業務、サービス、文化等の施設を充実する。
 また、常磐新線の導入に伴う土地利用ポテンシャルの向上を踏まえ、再整備及び高度利用を図るとともに、既存の施設についても建て替え時期等を考慮しつつ、再配置についても検討する。

(3) 住宅地区
 住宅地を都心地区周辺部および研究・教育施設地区に隣接した地区に整備し、地区の居住者のための教育、福祉、商業等の施設を適正な配置のもとに、人口の集積に応じて整備する。
 住宅地の整備に当たっては、市民が求める多様な居住スタイルに対応し、景観にも恵まれた住環境を整備する。また、民有地のビルトアップ促進による都市の熟成に向け、定期借地権等の土地活用手法の導入を検討する。

2. 研究学園地区面積2,696ヘクタールの用途別土地利用は、おおむね、研究・教育施設利用地1,465ヘクタール、住宅用地665ヘクタール、公共施設用地446ヘクタール及び公益的施設等用地120ヘクタールとする。

第3章 研究・教育機関等の集積と整備

1 研究・教育機関等の集積及び敷地

研究学園地区に立地させる研究・教育機関等とその敷地は下表のとおりとする。

画像1

注1)各機関の面積は、小数点第1位を四捨五入して表示した。
注2)将来公共施設等の整備に関連して若干の変動のある場合がある。

2 施設の維持・充実等

(1) 科学技術基本計画に沿って、研究内容に対応した研究施設・設備の維持保全や計画的更新・高度化を図る。

(2) 研究情報の流通を促進するため、高度情報通信基盤の整備を図り、国際的な研究情報の受発信拠点を目指す。

3 研究交流等の推進

(1) 外国人宿舎、外国人支援機関等の整備等を図り、海外からの研究者の積極的受け入れ、国際的な研究交流を促進する。
また、外国人研究者、留学生の受け入れの促進のため、インターナショナルスクールの充実など、教育、住宅、医療等家族を含めた外国人の生活環境の整備を図る。

(2) 研究機能を支援するため、研究支援者を充実するとともに、研究支援サービス業の立地の促進を図る。また、研究者養成機能を強化するため、大学院の充実、高等教育機関等の誘致の促進を図る。

(3) 退官した研究職公務員の人材活用、兼業規制の緩和などによる研究人材の流動化等の施策と有機的な連携を持ちつつ、研究交流の支援機関等を整備し、共同研究、研究交流を促進する。

4 国際的研究交流機能の整備

(1) 研究者が互いに知的触発を受けるための諸活動を支援する研究者の交流及び国際的な研究情報の受発信の拠点として、また、国際コンベンションを積極的に開催するための中心的施設として、「知的触発国際プラザ及びつくば国際会議場(仮称)」を整備する。

(2) 国際的研究交流機能の強化のため、国際会議観光都市を目指し、国際会議の企画・開催の支援、国際級ホテルの誘致、標識等の外国語併記による表示、アフターコンベンション機能の強化等を図る。

第4章 科学技術集積を活かした都市の活性化の推進

1 新産業の創出の促進等

研究機関等の研究成果を生かした新産業の創出を促進するため、産業ニーズに基づいた研究開発分野に配慮するとともに、先端的研究開発成果の起業家を促進するためのベンチャー育成施設等の支援、ベンチャービジネスの支援サービス業の立地の促進等を図る。
また、産学官の連携による学際領域における最先端研究を促進する筑波大学先端学際領域研究センター等の研究機関の充実を図る。

2 科学技術理解増進への貢献

青少年及び市民の科学技術に対する理解を増進するため、研究施設や研究機関の持つ展示施設のネットワークの形成、科学技術の体験学習機会の提供等を推進する。また、科学技術博物館の整備について検討する。

3 地域社会への貢献

研究機関での農業・生物分野等での研究成果を地域農業等へ活用するための条件整備を進めるとともに、地域農業と都市住民との交流の場づくりを推進する。

第5章 都市機能の充実

1 広域自立都市圏の中核都市としての機能の集積

常磐新線及びその沿線開発並びに首都圏中央連絡自動車道の整備により人口の増大が見込まれる筑波研究学園都市の中心となる都市地区に、周辺開発地区の葛城地区と連携した土地利用及び東西軸の計画的形成を図りつつ、商業、業務、宿泊、文化等の高次都市機能を集積させる。また、広域的な観点から、土浦市及び牛久市との適切な機能の分担と連携を図る。

2 交通関連施設の整備

学園中央通り線に常磐新線つくば駅(仮称)が整備されることに伴い、駅前広場及び駅舎と一体となった商業施設を整備する。また、中心市街地内に本都市にふさわしい短距離交通システムの導入を検討する。同駅周辺の道路交通の円滑化を図るため、駐車場の整備や幹線道路の整備を図る。これらにより、適切なモビリティが確保された交通体系の形成を図る。
さらに、土浦市、牛久市との連携を強化するため、本都市と両都市とを結ぶ交通システムの整備を検討するとともに、新東京国際空港とのアクセス性についても向上を図る。

3 情報通信機能の整備

情報化の進展に対応し、産業分野への研究成果の移転等を支援するための情報化並びに生活利便性向上及びコミュニティ形成のための情報化の促進とCATV等の情報通信基盤の機能の高度化を図る。
また、本都市の都市づくり等についての市民等の理解を深めるため、つくばインフォメーションセンターにおける的確な情報提供に努める。

4 公共・公益施設の維持・充実等

モデル都市として計画的に導入・整備された先端的都市施設、公共施設の適切な維持管理、計画的更新を図る。
また、住民のニーズに対応した公益的施設の段階的な充実を図る。

第6章 良好な環境の確保と文化の形成等

1 環境共生型都市づくりの推進

本地域の重要な地域資源である自然的・田園的環境と計画的に作られた都市環境との調和を図り、人と自然とが共生した都市づくりを進める。
また、廃棄物の発生抑制、リサイクルの推進などにより環境への負荷の少ない都市づくりを推進する。さらに、環境技術に関する研究開発成果の積極的な地域社会への還元を図る。

2 つくばらしい景観と文化の形成
研究学園都市にふさわしい落ち着いた都市環境と、木々の緑等と調和したアーバンデザインを考慮した風格ある街並みの形成を図る。
また、地域の伝統的行事や芸能、外国人居住者の持つ各国文化の交流、さらには、科学技術の地域への還元などを通じて豊かな自然環境の中に科学技術と生活が調和した本都市の独自性のある文化の形成を図る。

3 多様なライフスタイルの共生

街づくりへの住民の参画を勧めるとともに、多様な住民層の間の交流等により、一体感のあるコミュニティの形成を促進する。また、情報ネットワーク上の生活コミュニケーションの推進を図る。

~ 以上 ~

以下、関西文化学術研究都市の諸計画(国の基本方針、府県の建設計画など)と比較した場合の特徴的な事項や、先行事例として今なお参考にしたい事項などを順不同でメモします。

▼序章にて、周辺開発地区整備計画と並ぶ計画(2つ合わせて総合計画であること)の位置づけがなされています。

▼第1章「都市整備の基本目標」では、たいへん明確でわかりやすい言葉遣いにより3つの都市像が記述されています。

▼都市像「広域自立都市圏中核都市」では、同地区の概成を目前に控えていた昭和53年以降、茨城県を中心に「自立都市」づくりが目指されるようになったとされるように、広域市町村圏制度における「中核都市」とミックスすることで、国の支援策並びに県政における推進施策の位置づけが強化されたのではないかと考えられます。

▼都市像「エコ・ライフ・モデル都市」での特筆すべき事項として、「パイロットモデル都市」を目指すことが明確にされていること、開発と保全(都市と自然)の調和、住民の交流とまちづくり参画、子どもに「夢」を与える子育て環境など。とりわけ「夢」という言葉遣いは同都市の成長過程の中で、アウトリーチの一つの発展形として関係者間で認識され、同都市の性格を際立たせるものになっていった考えられます(各施設公開や各施設を連携させる子ども向けのスタンプラリー、バスツアーなどが実施されている)。

▼第2章第1節「人口規模」では、周辺開発地区整備計画における25万人と合わせて、筑波研究学園都市(つくば市)全体の人口フレームを35万人とすることが都市計画の最上位に位置づけられることになります。

▼第2章第2節「土地の利用」の「(3)住宅地区」では、研究・教育施設地区に「隣接」させることが定められています。一般的な「職住近接」に留まらず、「隣接」という言葉遣いがなされている背景には、パイロットモデル都市においては都市住民と研究機関との敷居は極力低くすべきとする都市像から導かれた考え方があったものと考えられます。

▼第3章「研究・教育機関等の集積と整備」では、同都市が国研施設の集団移転を目的として整備された都市であることから、個々の施設立地についても特措法に基づいた計画上の位置づけがなされています。

▼第4章「科学技術集積を活かした都市の活性化の推進」では、同都市の周辺開発地区において整備された研究開発型工業団地を念頭においた新産業創出への寄与を明確に表明しているほか、「青年及び市民」を対象としたアウトリーチ諸施策の展開、研究成果を活用した地域農業への貢献など、具体的な取り組みが表明されています。

▼第5章「都市機能の充実」の「1 広域自立都市圏の中核都市としての機能の集積」では、同都市のうち同地区に「高次都市機能」を集積させる方針が示されています。

▼同「4 公共・公益施設の維持・充実等」では、同地区の高次都市機能として整備された都市施設等の維持管理や更新には多額の費用を要することが想定されることから、国が関与するものであることを明確に示しています。

令和3年(2021年)5月13日現在

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