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霞ヶ丘三丁目



雨だれが地面に落ちる音と
ビー玉がコップの底に落ちる音が

同じだと気づいたあなたは
晴れの日に傘をさして歩く


くるくると傘をまわす様子は
まるで 見えない雨だれと遊んでいるようで
たいようもご満悦である


「前髪がすこし目にかかって
目が悪くなってきているかも」


遠くから薄暗い雲がやって来る

「雨だ」

あなたはビー玉の音をきいた
あか、あお、きいろ、みどり
たくさんのビー玉


いつでもそこに行ける
水たまりの裏側の世界

石けんの香りがする
水中にはさかなが泳ぐ
不思議と息ができる

「特に雨がすき」

「水たまりの向こう側を知っているから」

爽やかな日
そよそよ さらさら しゅわしゅわ
たいようが出るまで
サイダー色の水の中

「わるくない、どんより空も」

「雨だれ淀んで、水たまりとなる」


雨の日、ビー玉の音
それが合図
さあ、水たまりのなかへ

わすれないよ


霞ヶ丘三丁目のひみつ

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