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まどろんだ



羽音が大きくなってきて
もう近くにせまってきていることを知る
ろうそくの火を消した彼女は
ドアノブに 手をかける

ほんとうは 前に天使のかげをみた
みていないと思い込むことにした

思っていたとおり そこには天使がいて
頬は陶器のようで
白く もろく すべすべしている
すべてわかっている眼差しで
彼女をみている

彼女のゆめは 満月をみること
しかし
編みかけのゆめは 三日月のまま
満月にならなかった

喉につまる憂鬱を
のみこんで ごまかして
やがて 祈りになった

翼の準備なら できていた
ひかりの輪は 道になった
彼女にだけ みえるの

天使が微笑むと
つられて笑う

あの時 かげをみました
知らないふりをしました

ゆめを編みつづけなさい
天使は コロコロとわらった
しあわせの鈴を鳴らした

何事もなかったかのように
そこでは ろうそくの火がゆらいでいて
さっきの出来事は
祈りがつくり出したんだと
彼女は火を消しながら ささやき

まどろんだ


4/8

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