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小高い丘の朝


お花畑のなかを歩いている
しっている 菜の花だ
ただ その背中をみている

昼でもないのに あたたかい
まるくふわふわした 空気が
あたり一面に 流れている
ぼんやりとした後ろ姿を
できるだけ みないように
みないように
菜の花をみている

空に目をやる
行き先は内緒さと
くもが浮かんでいる
わたしはそのとき いなくなる

風が吹いた
三つ編みがゆれる
わたしはそのとき あらわれる

スカートの裾
毛先
首元の大きなりぼん
左にゆれる
帽子は飛ばされないように
両手でつかんだ

菜の花は風に身をまかせ
わらうようにゆれている

ふり向かないでほしかったのに
あなたはふり向いた
大きなくちは 半月のかたち

昼でもないのに あつい
お花畑が 永遠につづいてほしい
かすんでいく 背中の残像と
わらっている菜の花

わたしを見つけないでほしかった


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