熱砂



ごうごうと 見えない炎が燃えている
働き者の太陽のせいね
ずっと遠くに城が聳え立つ
たどり着く日は近い


のっぺりとした
白い壁


きっと雨は降らない
サボテンの佇まい
いまここに 在るということ


このせかいのこと
誰も知らないといいな 


思考の鍵を握るのは真夜中のゆめ
懐中時計は動かない
胸もとにしまっても
秒針の軌跡を感じる


じかんの存在をわすれていたが
ここでは 在ってないようなもの


口は渇いて 声はでない


くるしみながら
目を閉じて 開けるとそこは砂浜


のっぺりとした
白い壁


貝殻のふた 開けたりとじたり
こころの動きに重ねる
ここで
息をするということ


たのしかった記憶はそこにいたんだね
たのしい音がきこえてきて
思わず
かたちのない砂をにぎった


かなしいかぜにふきとばされても
手のなかに
その砂はある


このせかいのひみつ
いくつ知っている?


旅人は
さらさらの熱い砂にまぎれて歩く
砂まみれのヒトデと
砂丘に埋まった砂時計と



ときは止まったままだ

すこし安心して
今度はゆっくり目を閉じた


果てしない
のっぺりとした
白い壁


はるか昔から
このせかいのことを知っている

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