ブッククラブ〈Language Beyond〉 #33—庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』

○開催日時 2024年3月30日(土)17:00〜18:30(jitsi meetでオンライン開催)
○課題本 庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』
◯参加者 7名

開催メモ(担当:吉川祐作)

庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」は、都立日比谷高校3年の「薫くん」が、学生運動で東大入試が中止になるという社会状況の中、考えや悩みを書き綴った作品です。

まず、文体が柔らかく、「1969年発表の作品とは思わなかった」という声など、現代でも違和感なく読めることに驚いたという参加者が多くいました。

その一方、ところどころに出てくる(特に女性に対する)言葉が非常に強く、違和感を持った人も。当時こうした表現が抵抗なく受け止められたのであれば、社会の意識自体が当時から変化したのだろう、という話になりました。

また、薫くんが作中で表明する政治的な立場は、学生運動などとの関わりを避ける「ノンポリ」的なものですが、現代の「ノンポリ」とは違う。現代の「ノンポリ」は、むしろ政治的なものを憎んだり、恐れたりしているようだ、という議論もありました。

(東大入試が中止になったことで、大学に行かないという決断をする薫くんは、たとえそれが直接の理由ではなくても、非常に「政治的」な人だなと今ふと思いました。「ノンポリであろうとする」ことにも、本当は、力や決意が必要ですよね)

あとは本書を推した三島由紀夫の話題であったり、1969年という時代は世間からの逃走が注目される過渡期だったという知見であったり、政治的なものが吹き荒れる中で個人的な幸せの大切さを示したことが本書の価値であるという意見であったり、今回もいろんな方々と深い話ができて、とても面白かったです。

個人的には、この文体や結末をあまりに違和感なく「読めてしまった」ことに、自分の思考の枠のクセのようなものが見えてくる、鏡のような作品でした。一冊の本に、人の数だけ読み方があるということを改めて気付かされる読書会でした。

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