ぼくとスモちゃんの夏休み


昨日パパは、ぼくをしこたま殴り、今日ママは知らない男とセックスしてる。

そんないつもどおりの小学六年生の冬。

ぼくがママの高い声を聞きながらアパートの冷たい鉄の階段に座ってると、下の階に住んでるミカ姉ちゃんが話しかけてきた。

「ねえ、ショータくん、エッチなことしよっか?」

ミカ姉ちゃんは中学の制服のまま、ぼくを背中からすっぽりとだっこした。

「あったかい」

ぼくのお腹にふれる手のひらは、冷たくて、すこしぬれてた。

「ミカねえちゃん、学校は?」

「ん?んー、夏休み。うふ。」

ぼくは殴られた次の日、学校を休む。ミカ姉ちゃんは、義理のおじさんにサれた次の日。たぶん、明日も明後日も、ぼくらは休みだ。

「学校いかないと、ロクな大人にならないよ」

ぼくはいった。

「ショータくんのママはロクな大人?」

「たぶんちがう」

「じゃあ無理かなぁ。」

ミカ姉ちゃんから、海みたいなにおいがして、ぼくは青くなったところが痛くなった。

ぼくは目をつむって、ミカ姉ちゃんの手のひらが、ぼくのズボンに入ってくる。

そのとき

「ごっ!」

音がした。声だ。誰かの、すごい、大きな声。

「っっぁん!!」

ゴミ捨て場からだ。ぼくはミカ姉ちゃんから立ち上がった。

ゴミ捨て場に、肌色の、肉の塊がある。ちがう。人だ。これは…

「え…お相撲さん…?」

そう、お相撲さん。力士が、ゴミ捨て場にうずくまっていた。泣いている。

「ごっつぁん…ごっつぁん…」

それが、スモちゃんとの出会いだった。

「ア!!??サタケヤマのガキじゃん!!??ママいねぇの!!??ア!!??」

借金取りのコギーだ。くすりをしていて、きちがいだ。

「ア!!??これ姉ちゃん!!?ワケぇじゃん!!サタケヤマ隠してやがったな!!??」

コギーがミカ姉ちゃんに手を伸ばす。

「ヒッ嫌!」

「やめろ!!」

ぼくはコギーに飛びかかった。

「ア!!??ガキ!!」

コギーは手を振り上げた。

「ごっつあぁん!」

コギーの頭がへこんだ。

【続】

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