第0003撃「メタ氏、甲村も写真部へ引きずりこむ!!」の巻

小生は幼稚園と小学校こそ違えども、
2歳くらいの頃からの幼なじみである、
元橋ゆきみちゃんとは入学してからも会っていなかったので、
マンションフォーエバーの9階へエレベーターに乗り挨拶に向かいました。
ベルを鳴らすと早速「はいー?」とゆきみちゃんの声がしました。
ドアが開くと、小生の突然の訪問に驚いたようでした。
「どしてるかなと思って」と訊くと、
家の奥からの複数の女の子の声が耳をかすめました。
これはいけない、「またにするわ」と言って、
小生は逃げるようにしてエレベーターも使わず、
すぐそばの階段を駆け降りました。
階段を素早く降りながら、
内心久しぶりにゆきみちゃんの顔が観れたことに、
興奮を隠せませんでした。

小生は芝嶋中学へ入学する前後に、
本屋で「中一時代」と「中一コース」という、
ぶ厚い雑誌を見つけたので、
それを買って生き様のバイブルのようにして、
貪るように愛読してました。
それらの雑誌には中学生らが学校生活を、
エンジョイしてる漫画なども連載されてました。

そのおかげか、
中学生活を送るにおいて、
部活とはなくてはならぬものであり、
(クラブ活動という軽い言い方はせず、あくまで部活!!という)
頭の中には帰宅部という選択肢は考えに入れておらず、
いわば青春を謳歌するためには必要不可欠なもの、
という風に自覚してました。

小生は芝嶋中学、つまり芝中の写真部に入部して、
まずはその生き甲斐を一つ掴み取ったのでした。
その頃、校舎の隣の二階にある体育館で、
一年生を集めての何らかの集会がありました。

皆が三角座りをしています。
小生の隣には多坂が座りました。
しばらくすると多坂が誰かとふざけあっています。
その生徒は次第に小生の背中をいじったりしてきました。
何事かと振り返ると、
彼は「おお!」と挨拶をしてきました。
前に向き直って少しするとまた背中を這い回る動きがあります。
少々苛立ち再び振り返ると、
彼が「おお!」と声を掛けてきます。
小生も「おお!」と返事をしました。
「俺、甲村や」と彼は笑いながら自己紹介してきました。
「俺は夢野やで、よろしくな」
「おう!」
甲村健一は黒人にも見紛うような浅黒い肌をしていて、
眼鏡をかけた体の細い生徒でした。

集会のあと体育館を降りてすぐの
外の花壇に腰掛けたり花壇の上に上がったりして、
多坂と甲村と三人で話をしました。
小生と多坂と甲村は違うクラスでしたが、
小生はフォーエバーの二号館に住んでましたが、
甲村は三号館に住んでるらしく、
同じく三号館に住む多坂とは元々知り合いとのことでした。
そういえば、
小学六年のときにフォーエバーの巨大なマンションの周りを、
自転車でぐるぐると延々走り回った仲間に、
一学年下の甲村というのがいましたが、
兄弟とのことでした。

甲村健一は卓球部に入部してましたが、
まだ一度も参加してないということでした。
「それやったら、俺らと一緒に写真部入ろうぜ!なァ!」
小生と多坂はあまり品のよくない笑みを浮かべて、
放課後になると甲村を写真部の部室へと連れて行きました。
部長の渡瀬さんが喜んで歓迎してくれました。
やはりというか、カップヌードルのカレーを三人ともよばれました。
渡瀬部長は甲村にも、
「入部するしないは自由やけど、
楽しい毎日が待ってるかもしれんでえー」
と、まさに入れといわんばかりにニヤリと笑いました。

どうやら甲村も写真部の自由な雰囲気に興味を持ったとみえ、
すぐに写真部への入部届けを提出しました。
多坂と多坂も、
顧問の出口先生の放つ厳格な威圧感に緊張を感じていたので、
甲村が出口先生から「しっかり励めよ」、
と許可を得られたことはこの上ない喜びでした。

続く。果てしなく続く……。

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昭和50年代に大阪市に生まれた男が描く、 すぐに読めるライトエッセイ(軽い読み物)を お楽しみいただけると幸いです。 平成時代の穏やかな…

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