ゴミ箱からは家族の姿がよく見える


以前『感情のゴミ箱にされている』という毒親持ちの人のツイートを見かけた。

『家族の愚痴を聞く役に気が付けばなっているけど、それは家族にとって感情のゴミ捨て場にされてるだけだよね』というような意味だったと思う。私もそれだなと思う。ただこれ、『家族』と書いたけど、基本的には『子どもが親の愚痴を聞く』場合はそうなるのかなと。
これが『親が未成年の子どもの愚痴を聞く』のは子育ての範疇で『ゴミ箱扱い』ではない。親子関係は対等ではなくて権力差があるから。子どもが成人しても親が(過剰な)愚痴を聞いている場合は……子育てのどこかでエラーが起きているのかなと。


というわけで、私の家では私がゴミ箱なのだけど。
ゴミには情報がたくさん詰まっていて、ゴミ箱役は一番家族の形が見えるのではないかと思う。形……というか、歪み。

そもそも、正常な家族は『ゴミ箱』が要らない。だって、感情は『消化』するもので誰かに押し付けるものではないから。ゴミ箱役がいること自体がその家族が歪み切っている証だと思う。

あと、家族に対する対応が『その人の本質を一番よく表している』のだと思う。良くも悪くも。
毒になる人ほど、この『自分の本質』と向き合えないので家族の中でも一番弱い存在に全てを押し付ける。これ『親』になった時が一番わかると思うんだよね。だって親子の権力差はエグイから。その権力差を無意識に利用して子供を都合よく仕立てるのは楽なのだろうなと、妹と妹の子どもの権力差を目の前にすると思う。

恋人に優しい人も『自分の母親は無下に扱う』かもしれない。その場合、『親子間で何かあったんだ』と思うよりは『家族の歪みが現れていて、この人と家族になったら自分も同じようにされる可能性』の方が高いと考えた方が有益だと思う。
『家族だから大切』って、ある意味幻想でむしろ『家族だから、自分と同じハズ』と思ってる人の方が多い。実際はそんな事なくて、家族のメンテナンスが一番、人生の中で厄介でメンドクサイ。

『夫婦喧嘩をしたことがない』とか『反抗期がなかった』みたいな話も、一見良い事みたいに思いがちだけど、単に『話し合いをする関係性にない』という関係でもそうなる。
そしてこの『話し合って決めている』という話すら、『一方が我慢して相手に合わせている』という可能性がある。

これが『そこまでこだわりがないから相手に合わせているだけ』だったものが、『こだわりたい点が出てきて、自己主張する』ようになったりすると『なんでいまさらそんなこと言うんだ。今まで自分に合わせてくれたんだから、自分の言うことが通って当たり前だろ』と子供みたいなことを言い出すのもある。あ。これ、うちの父親の話ね。
うちの父は『自分の意見が通らなかった時、相手の意見を否定して自分の意見を通そうとする』それにうんざりした家族がそれに合わせるというのを続けてた。
こうやって言語化すると『ヤバい』ってわかるけど、これ、言語化されずにただ家族の不満だけが溜まったので、今、父は誰にも相手にされない孤独を味わっている。いや。私はゴミ箱なのでそれが見えちゃって『かわいそうだな』とか思って相手にするようにしてるけど。

これ、父親に伝えても今更、理解できないよなぁ……。でも、家族の不満も分かるし、私も正直ウンザリだし……どーするべ。←今ここ。


裸の王様は『裸だよ』と指摘してくれる子供がいて、周囲も『裸』であることがわかっていて、さらに、王様も『裸なのでは』と疑問を持っていたから『自分は裸である』と気が付けたけど。

父の場合は、『自分が無視されてるのは母(妻)のせい』と責任転嫁してる。なぜなら『子育てをしたのは母で、母が子どもたちに自分を無視するような事を言ってるせいだ』と思ってるから。
子どもはみんな成人して、私以外は子供(孫)までいるわけ。親になってる人間に対して『親の言葉を信じて行動しているはずだ』っていうのは、子どもが親になってる事がわかってないよなと思う。
で、なんでそんな事を思うかと言えば、『子供が成長したことに気が付いてないから』なんで、気が付けないかと言えば『子育てをしてこなかったから』

私は父が子育てしてこなかったことも、『俺の言うことを聞け』というのもそういう時代に育てられているし仕方ない部分もあるとは思ってる。でも、父自身はそこに気が付けないし、その歪みが見えてない。

で、私はゴミ箱で『見えてるから可哀そう』と思ってるけど、それだけじゃなくて、私が父に少しだけ優しくするのは父の母……つまり、私の祖母が母を可愛がっていて母は祖母を好きだったから。母は祖母の愛を受け取ってその一部を父に返してるし、その一部を私も受け取って父に渡してるだけ。
父が私を育ててくれたからとか、愛してくれたから優しくしてるというつもりは一切ない。

父が完全無視されてないのは祖母の愛のおかげだと思うんだけど、たぶん、父はそれにも気が付けない。だって『家父長制』で『男を立てるのは当たり前。男が浮気するのは当たり前』の世界で育ってるから。祖母は浮気をしてた時期があったらしいので、「男を馬鹿にしていた」とでも思ってるのだろう。
今の時代の感覚で言えば、祖父だって色々やらかしてる人っぽいけどその辺りは全て『男だから』で許されていて父の中にはないのかもしれない。
(祖父母の話は全て母から聞いた話で、私が物心つく前に祖父母は亡くなっている)


私はたぶん、父を許せないし、許さないと思うけど、それと『だから父を無視する』というのは別の事。許せないし赦さないけど、別に無視したいわけじゃない。それは父を愛してるわけじゃなくて、私の中に『一緒に暮らしている人間を無視する』という選択肢がないし、それをするくらいなら『別に暮らす』という選択肢を選ぶ。
私はそういう人間だというそれだけの事。

現実問題、一人暮らしするだけの資金も気力も体力もないというのもあるけど。

でも、うちの家族は『一緒に暮らしても無視する』という選択肢がある。それだけ、父は関わりたくない人間という事だし、それだけうちの家族は歪んでるということ。

まぁ。でもこういうのは60代以上の男性にはよくある事なんだろうな。無視されてる当人は『自分は悪くない』と思ってる。……そう言う人間に「こことここがダメで……」と逐一説明しても、「いや。これはこうじゃない。向こうが勝手に勘違いして……」と言い訳に次ぐ言い訳を並べて結局理解しない不毛な時間だけが残る。


「相手の言葉を黙って最後まで聞く」が、まずできない。
それが出来たとして
「相手が自分を悪く言っている」とだけ受け取って、『自己擁護』の言葉だけをはく。
最後に「やっぱり、自分は悪くなかった」という帰結になって、何も伝わらない。

……こういうのは5歳児の男の子なら可愛いし、5歳児ならまず『あなたは傷ついたんだよね』という相手の気持ちに沿った言葉から始めるけど、
60代に「あなたは傷ついてるんだよね」という言葉から始めたら、バカにされたと思って、それ以降の話が全く入らない事態になるんだろうな。

歳とればとるほど話の切り出し方は難しくなるし、『自分が悪いことをする人間だなんて思いたくない』という人ほど、「ここがダメなんだよ」が伝わらない。

そして、こういうのは『家族だから伝わらない』という事が多くて、むしろ『外から話を聞いただけの人の感想』みたいな話の方が聞けたりする。家族への期待値って高すぎて、難しいんだよな。

父の時代は『暴力当たり前』の世界だから、父自体は『妻子に暴力を振るわない=良い父親』だと思ってるのも分かる。でも、暴力を振るわないのは当たり前で『良い事』として褒められる時代は終わってる。

父の中の『良い父親像』と他の家族の『普通の父親像』の落差が現状の『無視』になってる。


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