山王の横断幕の漢字が気になったので調べてもらった話

一意専心

身内に漢字大好き漢字博士がいまして、スラムダンクは主人公の名前とバスケがしたくて泣いてる人がいることしか知らないという程度の知識ですが一緒に映画を観に行ってくれたんですよね。
それでその時は話題に上がらなかったけど、この前思い出したかのように
「そういえば、山王の横断幕の文字ちょっと変わってたよね」とか言い出しまして。
えっ、一意専心じゃなかったっけ?と思ったんだけど、グッズの写真とかをみたら

※画像は公式グッズサイトより

た、たしかに専の字にてへんがついてる...
(ぜんぜん気にしてなかった)
でもそういう書き方もあるんじゃないの?
と思ってググったらこんな感じで書いてありました。


一意専心(いちいせんしん)の意味・使い方 - 四字熟語一覧 - goo辞書

ただ、やはりてへんがついた専を使うのはスタンダードじゃないのでは?とのこと。
そんなわけで、一意専心について調べてもらうことに。
以下、箇条書きで検索してもらったものをあげています。


中国の戦国時代の『管子』にある言葉


※画像は明の時代の注釈書

・日本国語大辞典「一意専心」
一意専心「ひたすら一つの事に心を集中すること」
日本国語大辞典では1922年などの用例を挙げている。ほかに
管子‐内業「四体既正、血気既静、一意摶心、耳目不淫、雖遠若近」
とあって、中国古典の用例も挙げている。しかし、ここでは「一意摶心」という形。

・日本国語大辞典「専心」
専心「心をひとつの物事に集中すること」
※摶心は辞書ではヒットせず
往生要集や教行信証など平安鎌倉の用例を挙げており、古くからあることがわかる。
孟子‐告子・上「今夫奕之為数、小数也、不専心致志、則不得也」
とあって、中国古典での用例がある。

・国立国会図書館デジタルコレクション(主に明治以降の日本の文献)
一意摶心で検索すると19件。ほぼ管子の引用
一意専心で検索すると32995件。圧倒的にこちらが多い。明治時代はじめの用例もたくさん見つかる。

・漢籍リポジトリ(主に近代以前の中国の用例)
一意摶心で検索すると5件
一意専心で検索すると0件

・全訳漢辞海
摶 セン 集中する、もっぱらにするという意味で載っている
摶心は史記にもある

◯まとめ◯
中国の古典に出てくるのは「一意摶心」という形。むしろ「一意専心」ではヒットしない。一方で「専心」という言葉は古くからある(『往生要集』とか)から、一意専心の形が多くなったのかも。今は一意専心がスタンダード。

「一意專心」という表記は明治以降の日本でみられる表記の可能性。

では、どうして作中では「摶」を用いたのか、というのはハッキリわからなかったのですが、考察としては

摶は專と同じような意味も持っているから、
①本来の表記を追求したか、
②やはり「手」に「心」を込めるという意味で扌をつけたか
ということではないかと。

個人的にはバスケは手を使ってするスポーツなので、扌をつけた方を選択したのではと思いたい。こればっかりは作者に聞かないとわからないですが....

原作には山王の横断幕が出てこないと思うので、
これに関して何かご存知の方あれば教えていただきたいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?