【雑】ノスタルジーと夢と溜め息とビー玉

例えば、数多の竜宮城が生まれては消えていった、母の読み聞かせ。光あれ。記憶に染み込んだその世界は、成長と共に現実と剥離し、夢でのみ再び汁となり垂れる。眠りの水面に落ちる雫が作る波紋は、逆さまに存在する己には空が割れたように見える。それをただただぼんやり見つめるだけで何をしようともしなかったが、うっかり漏れた溜め息が現実を引き込み、世界が流れ入る。水面は荒れ、波紋は失せ、静かに垂れる世界はもう見えず、溢れ入る世界には注視する価値は無く、もう下を向き、頭上の渦はどこへやら。足下にあったのは、星を象るビー玉三つ。しゃがみ込み、拾い、手のひらでコロコロと回し、中に見える懐かしい思い出をこぼさぬように覗き込む。落ちた雫は、たぶん、世界ではなく涙かな。

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