口内炎の音楽とアーケードの古本屋

口内炎が痛む夜中に聴く音楽は、寂れたアーケードの古本屋を想起させる。店主の眼鏡は指紋がついている。それは怠惰からくる汚れではなく宇宙を見る手段らしい。口内炎を舌の先で弄る。古本屋で見つけたボロボロの岩波文庫。なぜだか懐かしい。音楽が終わり次の曲に。音楽が変わっても古本屋は変わらず。ただ、先ほどの文庫本が見当たらない。口内炎を小指で弄る。店主の眼鏡に指紋が増える。しかめっ面で此方を睨む。この曲は好みじゃない。

ありがとう