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幸せな瞬間

私は、仲間のもとへ走っていた。
スタンドの観客は、全員、私に注目していた。

コロナ禍で、スタンドでの応援は禁止。
全員マスクをし、距離をとっている。

そんな中、私は、仲間たちのもとに飛び込んでいった。
涙を流して喜んでくれる仲間が大勢いた。
こんなに嬉しいことはない。

私は、15年前、陸上競技に出会った。
中学で日本一になった時、夢だったオリンピックが目標になった。
しかし、高校では全国大会最下位。天国と地獄を経験した。
オリンピックが遠ざかっているのを感じた。

自分はなんでもできる。そう疑わなかったが、失敗を経験するたびに、
自信がなくなる。失敗から成長することは、知っている。
だが、自信がなくなる。

辛かったが、自分の可能性を信じ、大学でも競技を続けた。
必死で努力した。すると、支えてくれる素敵な仲間たちが大勢できた。
毎日が楽しい。自分の努力する姿が、人を笑顔にできることを感じていた。

そして迎えた、大学最後の大舞台。
やけに心が穏やかだった。

スタンドには、大勢の仲間が力を送ってくれている。

勝負の瞬間。空気が静まり返った。
ふと空を見上げると、綺麗な青空と真っ白な雲が広がっっていた。
いける。

気がついたら、私は、仲間のもとへ走っていた。

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