コーヒー屋の仕事をしていて嬉しく感じる、3つの「人」との関わり
僕はコーヒー屋という仕事をもう8年しています。
毎日本当に楽しく仕事ができているなと実感しているのですが、それはコーヒーそのものが好きだからという趣味の延長の話ではなく、「はたらく」という意味でも楽しさを感じています。
何のためにはたらくのか。学生を終えてからの大半が仕事をしている時間で、いろんな仕事や関わりがあるからこそ、ふと悩んでしまうことも多いと思います。
「好きなことを仕事にする」ことを目指したり意識する人も増えてきて、僕もどうやったら好きなことで仕事ができるのかと質問をもらったり、モヤモヤや悩みを目にすることも多くなった気がします。
今日は、僕が好きなコーヒーを仕事にしていて、どんな時に楽しさを感じるのか。もっと言うと、誰を見て仕事をしているのか、そんなことを3つの「人」を取り上げて書いてみたいと思います。
みんなが仕事を楽しむための見方の1つになったら嬉しいですし、このnoteを読んで何のためにはたらくのかを考える機会になったら嬉しいです。
飲んでくれる人
まず1番に、コーヒーを飲んで「おいしい」と言葉をもらえたり、表情が見れた瞬間に嬉しいと感じます。
これは当たり前といえば当たり前なんですが、僕たちはおいしいコーヒーを、飲んでもらうためにつくり伝えています。だからこそ、自分たちのコーヒーが伝わった瞬間は何よりも嬉しく思います。
コーヒーを淹れてお渡しして、自分たちが伝えたいおいしさに気づいてもらえると、「だよね!コーヒー面白くない?」といった感じで、一緒に楽しむ仲間が増えた感じがしますし、やっててよかったなーと思える瞬間です。
何のためにはたらくのかって考えると、どんな仕事であっても必ず、きっと誰かのためにはたらいているはずです。
自分の仕事が会社にとって価値があるからこそ給料が生まれ、会社の仕事が誰かにとって価値になっているからこそ売上が生まれているんだと思います。だからこそ、最終的に価値を感じてくれている人に触れられた時に、「やっててよかったな」と思えるんだと思います。
バリスタの仕事の場合、自分の仕事がすぐに目の前のお客さんの幸せに直結して、そのリアクションもその場で返ってきて感じることができるという、少し特殊な環境なのかもしれません。でも1歩裏の仕事をしている、豆の仕入れの担当であったり、焙煎をしている人であったり、オフィスや配送の業務をしているメンバーも、何より飲んでくれてる人が楽しんでくれている様子を見ると1番やる気がわいてきます。
僕も最初はバリスタとして店頭に立っていたのですが、運営の役割でデスクワークも増えてきて、お店に立つ時間はほぼ無くなってきました。それでも土日にお店に寄ってお客さんが楽しんでいる様子を見たり、SNS上で「苦手だと思ってたコーヒーが好きになった」とか「おいしいコーヒーがあって毎日が楽しくなった」といった感想を見て、届けたいと思っていたことが届いていると実感できた時、「おっしゃ!!!」と、嬉しく楽しく思います。
自分の仕事が誰かにとっての価値になっていると実感できる瞬間は本当に大切です。自分が変わることって簡単だと思うんですが、誰かに影響を与えるとか、誰かの感情を動かすって、なかなかできない難しい貴重なことなんじゃないかなと思うんです。
コーヒー屋はこうして幸運にも、つくる仕事でありながら、伝える仕事でもあるので、飲む人に直接触れる機会が多く、やりがいを肌で感じられる最高な仕事です。
どんな仕事であっても、必ずどこかに、その価値を感じてくれている人や幸せになっている人がいるはずです。そんな、価値を最終的に届けたい相手だったり、消費者の方だったりを想像するだけで、仕事の意味を感じられるし、もし悩んだり行き詰まったりしたら実際に見に行ったり触れに行ってみると、気持ちも考えも視野もゴールも広がるんじゃないかなと思っています。そこの実感がもっと欲しかったら、触れられる現場の仕事に変わるのも、分かりやすくアリだと僕は思います。
つくってくれる人
次に、コーヒーをつくってくれる生産者さんの楽しさに関わったと実感できた時、嬉しいなと感じます。
2019年、僕らがコーヒーを買わせていただいているベトナムのコーヒー生産者さんを東京に招待して、フェスのブースで一緒にコーヒーを提供したり、お店にきてもらったり、東京を案内したりしました。
お蕎麦やお寿司を食べたり、いろんな東京のコーヒー屋を回ったり、景色を見たりして楽しんだんですが、最後に彼らを見送る時に何が一番楽しかった?と聞いたら、「私たちがつくったコーヒーを飲んで喜んでいる人の表情を見れたのが一番嬉しかった。」と言ってくれました。
そこで僕ははっとしたのですが、コーヒーの素材や生産のことを飲み手に伝える一方で、飲む人のことは生産者さんに伝えていなかったなと、反省しました。そりゃそうですよね、コーヒー生産者も僕らバリスタと同じく、どう楽しんでいるかを見てやる気がわきますよね。トレーサビリティと言って情報の透明性を語ったりすることが多いコーヒーですが、どう楽しんでいるかを生産者に伝えてやりがいを感じてもらったり、消費を意識しておいしさを工夫してみたりと、橋渡しとして生産者にも情報を伝えたり、できることはもっとあるなと思うきっかけでした。
そして、コーヒーをおいしさで買い、伝えていくこと自体にも、生産者さんにとってポジティブな意味があると感じています。
コーヒーは世界中の赤道付近の生産地で農作物として育てられ、基本年に1回ある収穫期に、赤く熟したコーヒーチェリーが収穫され精製されコーヒー生豆となり、消費国で焙煎・抽出されて楽しまれています。
収穫の時の熟度だったり、皮むきや発酵や水洗といった精製の1つ1つの仕事をどれだけ丁寧にやるかなどで、美味しさは変わります。農家さんが頑張った分コーヒーはおいしくなり、そのおかげで僕らはコーヒーをおいしく伝えることができるんです。
どんなコーヒーであってもその買付には生産者さんにとって意味があるのですが、僕らのコーヒー屋が扱う「シングルオリジン」というコーヒーは特に価値が分かりやすく、生産者ごとに分けて直接仕入れ品質に応じて値付けがされています。量だけでなくおいしさで評価するため、買取価格もダイレクトに反映され、時には一般的に流通する大きなロットのコモディティと呼ばれるコーヒーと比べて、2倍や3倍、特別なものだと10倍以上の価格になったりします。
だからこそ、おいしいコーヒーをおいしさに見合った価格でたくさん仕入れるほど、金銭的にも持続性としても生産者さんに良い影響を与えることができるはずです。いつも買ってくれてありがとう、と生産者さんからインスタでDMをもらったり、僕らがコーヒーを出している様子をリポストしてくれたりするのを見て、僕らの仕事で彼らにも少なからず価値を伝えられているのかなと思ったりしています。
過去にシングルオリジンの意味についてもnoteに書いたので、一般的な大きなロットのコーヒーと比べてどう違って、なぜおいしくなるかについてはぜひ読んでみてください。
一緒にはたらく人
そして何よりも、一緒にはたらくメンバーが楽しそうにしている時、僕は嬉しく思います。
人は何のために生きるのか。いろんな考え方があるかもしれませんが、僕はいろんなことをひっくるめて、「楽しむため」だと思います。
ライフワークバランスという言葉が少し前によく言われていて、今はもはやあまり言われないかもしれませんが、はたらく時間と人生の時間を分けて考えていることが、まだ多いのかなとも思ったりします。
でもワークの時間すらライフの一部であって、はたらく時間も絶対に楽しいものであるべきだと思います。というか、きっと本来は、楽しむためにはたらくものだと思います。
「もっとおいしいコーヒーを伝えたい」っていう思いだけで勢いで始めたお店で、本当にまだまだ小さいチームですが、数ある会社やお店の中から、僕たちの感覚に共感してくれて、そして一緒にコーヒーを伝える仲間になってくれただけでも僕は嬉しくて、ふと泣きそうになります。
その中で、仲間が楽しんでいるって僕にとっては本当に何にも変えられない嬉しいことです。感謝していますし、始めて良かったなと感じます。
自分が良いと思ったことを同じように良いと感じている仲間、自分の仕事の意味を理解していたり自分と同じ価値をつくりたいメンバーがいること。それが会社というチームではたらく1番の意味なんじゃないかと僕は思います。
人がいるからはたらける
仕事は人、という言葉でまとめるにはすごい勿体ないかもしれません。
でもやっぱり、自分が関わったモノやサービスを楽しんでくれる人や、そして自分が関わる素材をつくる人への影響を意識したり、一緒にはたらく仲間含めて自分の感覚や意識が合うか、ということがきっと仕事を楽しくするんだと思います。
僕は、この3つの「人」との距離感や感覚が、自分のやりたいことに合っていると感じますし、コーヒー屋という仕事をやれていてとても楽しいです。
そして、このはたらく楽しさって、周りにも伝搬すると思うんです。
コーヒー屋に行って、楽しそうに淹れているバリスタのコーヒーの方が飲みたくなるし、心地良く感じますよね。笑顔が多い仲間と一緒にはたらきたいですよね。楽しいと感じるポジティブさは、みんなを明るくするはずです。
みんなで「はたらく」を楽しんで、人生をもっと楽しんでいけたらいいな。
川野優馬
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