アジア・アート・ビエンナーレ
ネタがないときに小出しにしていくつもりがなかなか進められなくて焦っている台湾日記、続いてはこちらです。
台湾へ行こうと思った最初のきっかけがこの展覧会でした。昨年のあいちトリエンナーレ2019の豊田会場で素晴らしいインスタレーションを展開したホー・ツーニェンが共同キュレーションを担当するということを知ったので。
会場となる国立台湾美術館は台北ではなく台中市にあります。なので桃園空港に着いてまず高鉄と台鉄を乗り継いで台中に移動しました。
乗り継ぎが良くなかったことに加え、台中駅からも徒歩で30分ぐらいかかったかな。結構時間をかけてようやく美術館に着きました。
キュレーションは先述のホー・ツーニェンと台湾のアーティスト・許家維(シュウ・ジャウェイ)。「The Strangers from Beyond the Mountain and the Sea(山と海を越えた異人)」をテーマに、16ヶ国30組のアーティストが参加しています。
テーマにある「異人」という言葉については、美術手帖の記事から引用します。
「異人」とは、遠隔地からの旅行者だけでなく、霊魂、神、シャーマン、外国商人、移民、少数民族、入植者、密輸者、遊撃隊、スパイ、反逆者をも指す。「異人」という視点を通し、既存の知識体系の限界や現実を理解する枠組みを広げ、鑑賞者の想像力と好奇心を刺激することを目指す。
ちなみに入場料は無料。美術館に入ってまずびっくりしたのがそこでした。
気になった作品をいくつかご紹介。
李禹煥。
ミン・ウォン。
昨年12月に東京のASAKUSAで個展をされていた作家。翌日、台北當代のプレビュー会場にいらっしゃったのをお見かけしましたが、さすがに声はかけられず。
MAYA WATANABE。
(おそらく音圧で)水槽のガラスを破る前後の様子が静かに淡々と映し出されます。
この作品は京都でのレジデンスで制作されたもの。そのときに拝見していたので思いがけない再会に驚きました。日本人っぽいお名前ですが、祖父が日本人というペルーの作家さんです。
アンタリクサ。
インドネシアの作家。宣伝部隊に派遣された日本の知識人の略歴がブラックライトに照らされてぼんやりと浮かび上がっています。略歴が印字されたペーパーは持って帰ることができるのですが、通常の明かりの下では文字が見えず白紙のようでした。
パク・チャンキョン。
韓国の作家。華厳の滝についての京都学派の面々の言葉と特攻隊として出陣した学生の日記が並べて展示されています。
このあたりはツーニェンがあいちトリエンナーレで発表した「旅館アポリア」に通じるものがあります。
ツーニェンはシンガポールの作家ですが、大東亜共和圏と称して日本が侵攻していったアジアの国では、未だにあの戦争での日本が取った行動が何だったのか検証が続いているといった感じでしょうか。「表現の不自由」展に展示された少女像を反日だと騒ぐ日本の当事者意識のなさぶりとの落差にめまいがしそうです。
さて。日本からはひとりのアーティストが参加していました。田村友一郎さんです。
「Milky Bay/裏切りの海」という作品。
こちらは元々横浜での展示のために制作されたもの。横浜で起きたバラバラ殺人、ボディビル、三島由紀夫などなど、いろんな話題へと発展していくモノローグに引き込まれていきました。
また、Milkという言葉から精液へとイメージが膨らみ、精液を意味するsamen、そして横浜にあるSeamen’s clubへと発展していくのはインパクトがありました(会場に設置されたネオンサインはSemen’sになっていましたが)。マッチョ4人がビキニパンツ一枚でビリヤードをプレイしている映像もどこか同性愛的なエロティックさがあって印象に残りました。
閉館時間まで粘って2時間半ぐらいは美術館にいたと思うのですが、映像作品が多いこともあり全部見切ることは不可能で、もうちょっと早く台中に着いていればと悔やみつつ美術館を後にしました。
ビエンナーレだから再来年ですか。また来られればと思っています。毎回台湾でやっているかどうかもよく知らないけれど。
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