hitotemaの心地よさ

昔話からはじめます。
愛知県は春日井市にある文化フォーラム春日井という施設でかつて「美系優秀」という展示が行われておりました。愛知県にある3つの芸大(愛知県立芸大、名古屋芸大、名古屋造形大)の学生を選抜して行われていた展示です。
2003年から3年に一度のペースで行われていて2012年に行われて以降まったく音沙汰がなくなってしまったのですが、最後の回は私も足を運びました。
そこで印象に残った作家が、今回ご紹介する田中翔貴さんです。

当時はまだ名古屋芸大の学生だったか院生だったかでしたが、個展やグループ展などで拝見しては作品をいくつか購入してきました。
そんな田中さんが三重県のいなべ市へ「地域おこし協力隊」として移住するという話を最初聞いたときはびっくりしましたが、縫製工場の倉庫だった建物をリノベーションしたアトリエを拠点に活動されています。

ご結婚されて奥様と一緒に運営している「アトリエhitotema・人手間」には二度ほどお邪魔しました。

2018年の1月にお邪魔したときにアトリエの前で撮らせていただいたもの。田中さんです。

2018年8月にお邪魔したときの画像をスマホから引っ張り出してきました。このときは木彫の作家さんと田中さんとの二人展がアトリエで行われていました。

そして今回、岐阜市にあるギャラリー・なうふ現代さんでは、アトリエhitotema展として田中翔貴さんと秋保久美子さんのご夫婦による展示が行われています。
まずは田中翔貴さんの作品を。

ゼラチンシルバープリントによる写真の作品です。感光剤を紙に塗って現像しているので、作品によっては像の出方にムラやカスレがあるのですが、それがまた味となっています。それにメタリックな質感が面白いんですよね。
この作品は光と影のコントラストがとても美しくてついつい時間を忘れてじっと眺めてしまいました。
秋保久美子さんの作品。

セラミックでできた植物がレトロなガラス瓶に差してあってかわいらしい。瓶はアトリエ近くに遺棄されていたものを拾ってきたそうです。

hitotemaとしては葉っぱを布に乗せて叩くことで染める「たたき染め」という手法で作られた布の作品を主に出されていました。植物の持つ色がとても鮮やかで引き込まれました。
ちょうどおふたりも在廊されていて久しぶりにお会いすることもできました。今回はオープンアトリエを見に来られたなうふの武井さんがアトリエの雰囲気をそのまま持ち込んだような展示をというオファーをして実現したそうですが、確かに山のふもとの豊かな自然に包まれているかのような心地よさがあって楽しかったです。

田中さんは佐久島で個展も開催中なので暖かくなったら是非と思っているのですが、ちょうどお目にかかった日の夜にコロナウィルス感染防止のために展示室が閉鎖されることが発表になってしまいました。会期はまだあるので現地で見られることを期待したいです。

【展示概要】
アトリエhitotema(田中翔貴+秋保久美子)「つくりかけらの束」
2020年3月7日〜3月29日
なうふ現代(岐阜県岐阜市)

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