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OLD AND NEW

あまり外出は推奨されないような2020年の夏でしたが、正直私はお構いなしにふらふらと出歩いてしまいました。
少し間が空いてしまいましたが、そんな夏の旅の思い出をつらつらと書き連ねていきたいと思います。

まずは、金沢。
何だか金沢に来たのはずいぶん久しぶりな気がします。何年ぶりだろう。少なくとも4年は経っているはずで、そんなに行ってなかったのか、というのが正直な感想。愛知から金沢ってそんな遠くもないのにね。

というわけで、金沢21世紀美術館に到着です。

この日は時折雨がぱらつきながらも何とか持ちこたえて傘を差さずに済んだ一日でした。
まずは楽しみにしていた、内藤礼「うつしあう創造」。最初はぼんやりとしていたものが徐々に解像度が上がって細かいものまで視界に入ってくるようになって、とても素晴らしい鑑賞体験でした。風に吹かれて糸がなびいている、ただそれだけのことが妙に幸せに感じたりするんですよね。
個人的には豊島美術館のこともたびたび思い出しました。床から水がぽこぽこ湧いてくるさまや表面張力で丸まった滴、その滴の光の反射、そして緩やかな傾斜を勢いよく流れて大きな水たまりになっていく様子。それらひとつひとつが見ていて飽きなくて何だか楽しくて、多幸感に包まれていたあの感覚を金沢でまた思い出していました。
また、日が傾いてくると電球の作品が点灯されるそうで、そうなるとまた見え方が全然変わってくるでしょうね。その状態も見てみたかったです。

続いては「de-sport:芸術によるスポーツの解体と再構築」。スポーツと芸術の関係についてをテーマにした展覧会、という感じでしょうか。
そのなかで印象に残ったのは、まず、クリスチャン・ヤンコフスキー「重量級の歴史」。ポーランドの重量挙げの選手(結構実績のある人たちっぽかった)を集めてワルシャワにある銅像を持ち上げるという映像作品。レポーターが実況してTV番組風にコミカルに進んでいって、ヤラセっぽい嘘くささに笑いつつも、銅像という権威を軽やかにひっくり返そうとするような試みが面白かったです。こちらは2017年にヨコハマトリエンナーレでも見た作品。思いがけない再会に懐かしく思いながら拝見しました。
懐かしいと言えばこちらもそうかもしれません。西京人「第3章 ようこそ西京にー西京オリンピック」。小沢剛、チェン・シャオション、ギムホンソックの日中韓の3人のアーティストが集まって「芸術を愛する人々が住む国=西京」という架空の国家について語るプロジェクトです。この21世紀美術館では2016年に個展「西京人ー西京は西京ではない、ゆえに西京は西京である。」が開かれました。そのときに出ていた作品がどうやら収蔵されたようで今回また見ることができました。オリンピック種目であるさまざまな競技を身の回りにあるもので代用してやってしまう、そのユルさに何度も吹き出して笑ってしまって。トータルすると結構長い映像作品ですが、つい長々と居座って見てしまいました。

2つの展覧会のほか常設で人気のレアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」もそばで拝見。雨がぱらついているときはクローズしていたのですが、晴れ間が見えたらすぐにオープンしていて近づくことができました。

ちなみに水の下のスペースは感染拡大防止のため入場不可でした(泣)。

この状況下で客足は通常より鈍っているのでしょうが、それでも他の美術館よりは人が多くて賑わっている印象を受けました。さすが観光地化しているだけあるなあと感心。もっとも地元の人にとってみたら複雑な部分もあるんでしょうが。

21世紀美術館のあとは、近くのこちらのスペースへ。

KAMU kanazawaです。こちらはコレクターさんによる私設美術館で、6月にオープンしたばかり。3階建の建物で各階にひとりの作家の作品が展示されていました。
2階のステファニー・クエール。イギリスのマン島出身の作家です。

はじめて拝見する作家でしたが、面白いですね。粗さを残しながら動物の動きや特徴はしっかり捉えています。階段の踊り場とかにもこっそり隠れていたのも愛嬌を感じてかわいらしかったです。

3階は桑田拓郎。

大小さまざまな作品が造作なく展示されていてそのあっさり具合が非常に格好よかったです。

1階はレアンドロ・エルリッヒのインスタレーションなんですが、昨今のこの状況のせいで設営が遅れていて開館には間に合わないとアナウンスされていました(私が行ったのは7月末)。
まあ当分かかるんだろうし仕方ないと思っていたら、数日後に公開がはじまると知ってちょっとガッカリ。まあ、金沢にはまた来ることがあるでしょうから、楽しみは次に持ち越しということで。

さて。金沢にはこれまで何度も来ていますが、あまり観光らしい観光をしたことがなかったので、今回はベタな観光をすることにしました。
ということで、金沢を代表する観光地・兼六園に到着。すばらしい日本庭園を堪能しました。
根上の松や琴柱灯籠もしっかりと見てきました。

これまであまり気づいていませんでしたが、金沢の街も地形の起伏がなかなか激しいところなんだなあ、と。園から足元に街が広がるのを見て結構驚きました。

その後は暑くて汗ダラダラでしたが、歩いてひがし茶屋街まで行ってみました。

ここはさすがに観光客もまばらでちょっと可哀想になるぐらいでした。街の雰囲気を感じて歩くにはちょうどいいぐらいでしたけれどね。

他にお寿司を食べたりしながら一日かけて金沢を満喫しました。
古いものがしっかりと残る一方で、現代美術の新しい動きがあって、そのふたつが共存しているということでやはり金沢はとても面白い街だな、と改めて思いました。それはきっと古き良き文化を大切にする懐の深さから来ているのではないでしょうか。今度は近いうちにまた来たいと思っています。

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