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聖地の島へ

夏の思い出シリーズ、まだまだ続けます。

私が現代美術にのめり込むきっかけとなったのが、2010年にはじまったふたつの国際芸術祭です。そのうちのひとつが、瀬戸内国際芸術祭。船に乗って島を巡りながら島の風景と作品を楽しむ、というスタイルの新鮮さには当時非常に驚かされました。
それから瀬戸内国際芸術祭には毎回参加しているのですが、これまで会期以外に訪れたことはありませんでした。が、今年は見たい展示ができたおかげではじめて会期外に島へ向かうこととなりました。

前日の夜に岡山に着いて、この日は早朝に出発。宇野港から船に乗ります。

ほどなくして直島に着きました!
宮浦港では草間さんの赤かぼちゃが出迎えてくれました。当然ですが中に入ったり撮影したりする人でかぼちゃの周囲は賑わっておりました。

電動自転車をお借りして本村地区へ移動。時間があったので辺りをうろうろしてみます。

本村港の待合室。

もこもこと球体が積み上がった形が見ていて楽しい。設計はおなじみのSANAA。

さて、時間となりました。午前中は本村地区の「家プロジェクト」を見て回ります。

まずは南寺。

芸術祭期間中は非常に混雑するわけですが、この日の自分が予約した回は何とひとり。15分ほどとはいえジェームズ・タレルの作品を独り占めできてしまうこの贅沢さ。たまりません!
体験するのはもう何度めかになるんですが、毎回新鮮な感覚を与えてくれますね。

大竹伸朗の「はいしゃ」。

杉本博司「護王神社」。

地下の空間から出てきた瞬間に目に飛び込んでくる「海景」。この日は余韻を味わうようにしばらく眺めていられました。

そしてこの日のハイライトは、内藤礼の「きんざ」でしょう。

要事前予約なこの作品、芸術祭期間中はまず取れないわけですが、この日はすんなり取ることができまして。これでようやく「家プロジェクト」を制覇することができました。
元々は蔵だったのかな。改装されて外の気配がわずかに入り込んでくる建物と作品が一体化していて、作品を見ているんですが自分の内側に入り込んでいくような稀有な感覚を味わいました。

そのほか、The Naoshima Plan「水」にも立ち寄りました。こちらは三分一博志さんが古民家を改修したもので、建物の中央には井戸水を汲み上げて水が張ってあり、そこに足をつけて涼を取ることができます(足湯のようなものですが何と言えばいいんだろう?)。水は冷たくてとても気持ちが良くて、しばらくここから動けなくなりそうでした。

お昼は本村地区のmaimaiさんでいただきました。

香川県の県魚・ハマチのフライにたっぷりのタルタルソースをかけてバンズで挟んだ、島ならではのバーガーです。美味しかった!

午後からはいよいよベネッセハウスの敷地内へと突入です。

まずは地中美術館へ。

ここもやはり人が少なかったので、モネの部屋を独り占めして見られました。あとここでやっぱり好きなのは、ウォルター・デ・マリアの展示室。はじめて足を踏み入れたときに空間の張り詰めた緊張感と美しさに圧倒されてぞわっと鳥肌が立ったことを思い出しました。その感覚は今でも変わっていません。相変わらず畏怖を感じさせる堂々としたたたずまいにひれ伏しそうになりました。

続いてはベネッセハウスミュージアム。ここは2010年以来かもしれません。ブルース・ナウマンの「100生きて死ね(100 Live and Die)」はやっぱり素晴らしい作品だなあとしみじみ実感しました。

そして今回直島に来る動機となったのが、こちら。宮浦港から少し離れた住宅地のなかにある宮浦ギャラリー六区です。

画像は朝に撮ったものなのでまだオープンしていないですけれども。ここは元々パチンコ屋だった場所を改装して生まれたギャラリーです。前に丹羽良徳さんが展示しているのを見たことがあるのですが、現在は下道基行さんが長期計画で展示されています。
昨年の秋会期からはじまった「瀬戸内[  ]図書館」。毎回テーマを変えて、そのテーマに合った書籍や資料を集めて、ここを瀬戸内に関する資料ならいちばん揃っている場所にするという壮大な取り組みです。
前回の「緑川洋一」(岡山の写真家。ベネッセが作品を所有している関係でベネッセの方から指定があったらしい)につづいて、今回は「百年観光」がテーマ。80年代90年代のるるぶ等のガイドブックからはベネッセが参入することにより徐々に扱いが大きくなっていく様子がよく分かります。ほかには吉田初三郎の鳥瞰図があったり、どれもヤフオク等で手に入れたものなんですが、吉田初三郎の鳥瞰図もそんなに高値で購入したものではないと聞いて驚きました。まあある程度部数のある印刷物だからでしょうか。
個人的にはベネッセ参入以前にあったという無人島パラダイスというレジャー施設が気になりました(バスの時刻表がギャラリーに展示されていました)。当時はまだ現代美術なんて関わりのなかった時代でしょうから、今の発展ぶりはまさか想像できなかったでしょうねえ。

下道さんとは(このnoteでも書きましたが)壮行会のとき以来。移住された直後に緊急事態宣言が出されて大変だったとは思いますが、充実しているようなのは何より。アーティゾン美術館で行われているヴェネチアビエンナーレ帰国展のお話なんかもさせてもらいました。
この「瀬戸内[  ]図書館」は長期プロジェクトになると思うので、もしかしたら直島にはちょくちょく来ることになるかもしれません。この図書館がどんどん大きくなっていって最終的にどうなるのかが非常に楽しみです。

最後は大竹伸朗「I♡湯」で一日の汗を流してさっぱりと。

はー、気持ちよかった。これで直島の一日は無事に終了。とても楽しい旅でした。

直島を出る直前の風景。

近くの席に座っていた人の見送りらしい。手を振ってくれるひとが自分にもいたら自分の人生はどうなっていただろう、というかそもそも現代美術を求めて動き回ってはいないかもしれない、、、なんてことを考えているうちに船はあっという間に本州に着き日常へと戻っていくのでした。

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