岐阜県美術館へ

風が強く雨が降ったり止んだりという天気のなか岐阜県美術館に行ってきました。

すごく久しぶりな気がするというのもそうで、昨年は改修でほぼほぼ閉館していました。なのでおよそ1年半ぶりの来館になります。

メインの展示は「第10回円空大賞展 -希求、未来への創造-」。岐阜県が各方面の作家に授与している賞です。
今年の大賞はTara Ocean財団。世界規模で海洋調査を行っていて、その調査船に作家も乗せて制作をさせているのがユニークなところ。
そういえば昨年の瀬戸内国際芸術祭では粟島で(この美術館の館長である)日比野克彦氏と一緒に展示してたから、そういうこと?違うか。

ロビーに展示されていた大小島真木さんの作品もそのひとつ。

そのほか円空賞に、池田学さん。

紙にペンで細かく描き込んで緻密な世界を作り出していて圧倒されました。佐賀県立美術館が所蔵している「誕生」も展示されていました。借りるの大変だっただろうな。

そして印象に残ったのが羽田澄子さん。不勉強にして存じ上げていなかったのですが、ドキュメンタリー映画の監督として数々の話題作を発表されています。
今回は岐阜県の根尾谷にある薄墨桜をテーマにした「薄墨の桜」が上映されていたのですが、これがかなりのインパクトだった。

公開されたのが1977年だからその辺りの時代背景もあると思うのですが、桜の世話をする近くの集落に住む人たちを紹介するのに「土方」や「日雇い」といった言葉がさらっと出てくる。決して裕福とは言えない暮らしをありのまま撮ろうとしていて住人の方も素直に受け入れていているのに驚きました。
また、桜に監督の死生観を重ねているせいか(構想段階で妹さんを癌で亡くしている影響もあるそう)、どこかおどろおどろしい不気味さが全編に漂っています。集落の墓が映し出されたり、桜の下から埋められた骨が出てきたエピソードを挿入したり、その骨を持ち帰った医者がかつて住んでいたという廃墟(医者は既に亡くなっていて家族も今は住んでない)を念入りに撮ったり。
加えてぼそぼそとつぶやくように語られるナレーションも、そんなおどろおどろしさを強調するかのように、ほの暗い狂気を感じさせるものでした。
自分がこれまで見てきたドキュメンタリーなる物とはまったく様相が違って、自分がいかに現代のクリーンな映像物に慣れてしまっているかをまざまざと感じてしまいました。昔の日本の田舎はどこも仄暗いものがあったって言われたらそれまでですが。
当時は常識であっても今となっては過激な表現って多々あると思いますが、この作品もまあそうなんでしょう。思いがけず今回触れることができてとても良い経験になりました。

コレクション展は「カラー・マジック 田口コレクションと安藤基金コレクションから」。この安藤基金がすごかった。県内の実業家から寄付された5億8千万を元に運用し、その収益の8割を作品購入に当て、残り2割を基金へ入れることによって現在の残高は6億4千万。この基金で購入するものは1950年代以降の現代美術限定と基準を作って60作家147件の作品を収蔵できているそう。確かに錚々たる面々の作品が並んでいてその充実ぶりが窺えました。

そのほか、岐阜県内の文化施設(みのかも市民ミュージアムや可児市文化創造センターなど)で行われているレジデンスプログラムを紹介する「アートまるケット アーティストがワタシんトコにやって来た! 岐阜県の滞在制作レビュー」、本館から少し離れたところのアトリエ棟でも「アーティストインミュージアム AiM2020三輪祐子」が行われていて盛りだくさん。とても充実して楽しい時間でした。

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