卒展に思うこと

今年もあっという間に卒展のシーズンが訪れ過ぎていきました。
SNSでは年を重ねるごとに盛り上がっているような印象を受けます。東京の各美大で気になった学生の作品がアップされるのはもちろん、関東のコレクターさんが京都まで足を運ぶことも普通になりました。
これもひとえに京都造形芸術大学の努力の賜物だと思います。作品を買えるようにしてまるでアートフェアのようになっていて今年も赤丸がいっぱいついていました。学内の方が喋っているところを盗み聞きしたところ「完売した人は100万売り上げている」のだとか。
いやはや、隔世の感がありますね。

そんな青田買いのような盛り上がりとは対照的に、私は卒展への情熱が自分のなかでここ数年、確実に冷めてきているのを感じています。
その理由のひとつが、まず、ピンと来る学生さんが少なくなったということ。
これは学生さんの質が以前より落ちたとか、そんなことを言いたいのではありません。どんどん自分が歳を取っていって、学生さんとの年齢差は広がるばかり。20代前半と30代後半では面白がれるものが違っていて当たり前で、自分がそのときどきの流行についていけていないだけかもしれないですし。

そして、こちらがいちばん大きな理由なんですが、作家は学校を出てからが勝負なんだと思うようになったこと。
私も過去に京都造形芸術大学の卒展で作品を購入したことがあります。2015年だったから「買える卒展」だの「卒展がアートフェア」だのと評判になってきたころです。見に行く前からSNSで話題になっていて、実際に見たらとても良かった。結局出ていた作品は全部売れたんじゃないでしょうか。
しかし、そんな彼女が卒業後、作品を発表しているという話は聞こえてきません。風の噂では、就職先が個人名を出して活動するのを禁止しているからだと聞きました。

「アトリエや機材など環境を整え、経済活動と両立させながら作家として制作を続けていけるか、それは学校を出てからじゃないと分からない。」
卒展を見に行かない理由としてあるギャラリーの方が語っていた言葉が今ではよく分かります。
卒業される方には、今後もぜひ制作を続けて欲しいと思います。そしてギャラリーかどこかで展示があったときに「あ、あのときの卒展で見た人だ」と再会できたらいいなあと願っています。

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