顔拓

「TARO賞」を見に川崎市岡本太郎美術館に行ったのですが、チケットを買って受付に来たところで、見覚えのある方がいて「あれ?」ってなりました。向こうも顔を覚えていてくださったみたいでご挨拶させてもらいました。うれしかった。
いらっしゃったのは若木くるみさん。第12回(2008年)のTARO賞で最高位の岡本太郎賞を受賞されておられる、れっきとしたTARO賞関係者です。

若木さんを紹介するのは難しい。
版画家であり、マラソンランナーでもあり、後頭部に顔を描く人でもある。
最後の「後頭部に顔を描く人」というのが何じゃそれ?って感じだと思うんですが、後頭部を刈り上げてそこに自分で顔を描いているんです。って、ほとんど説明になってないか。

なので説明がてらに私がかつて体験した「顔拓」の 様子をご紹介します。「顔拓」は後頭部に顔を描いてしかもそれを布に写し取るというもの。2018年のART in PARK HOTEL TOKYOで京都のFinch Artsさんのお部屋の浴室を使って行われていて、お邪魔したときにちょうど誰もお客さんがいなかったのでお願いしました。

描きはじめる前のまっさらな状態。

浴室の鏡で私の顔を見ながら手鏡を使って器用に描き進めていきます。

顔がほぼ完成。あまりのそっくり具合に爆笑するFinch Artsの櫻岡氏。笑

自分とツーショット。笑

後頭部に布を当てます。

浮かび上がってきた!

パネルに張って完成です!

いやー、すごい。職人技ですね。
本当なら顔出ししてどれだけ似ているかアピールした方がいいんでしょうがその勇気はない。笑

若木さんを知ったのは、2014年の「六甲ミーツ・アート」。後頭部刈り上げて顔を描いてたりギリシャのスパルタスロンに参加する(何と246kmも走る)って言ってたり、ひとつひとつがインパクト大で若木さんの名前が強烈に脳裏に焼きつけられてしまいました。

2016年の京都のFinch Artsさんでの展示を見に行ったのもDMでその名前を見てすぐに思い出したから。このときはコンビでマラソンに参加している竹内明子さんとこれまでのマラソンの記録をまとめたものだったのですが、それがFinchさんにお邪魔した最初の展示となりました。

2017年「のっぴきならない遊動」(京都芸術センター)は、若木さんに加えて二藤建人さんと黒宮菜菜さんという顔ぶれの伝説の展覧会でした。

アーティスト・トーク中の若木さん。スマホの写真アルバムを漁って見つけ出しました。
このときは「アーホ」というテレビ番組に出演したときの体験をモチーフにした作品が出ていました。そう言えば若木さんはマツコの「アウト×デラックス」にも出られたことがありましたね。

スマホを漁ってもうひとつ出てきました。こちらは2018年の10月に行われた「京都国際映画祭」の一環で行われた展示での一コマ。

元淳風小学校の手洗い場を浴場に、顔拓の作品をお湯に浸かっている人の顔に見立てた作品です。ひょっこりはんが取材に来たとかでひょっこりはんの顔拓も展示してありました。笑
同じく2018年には、残念ながら私は伺えなかったのですが、富山県美術館で滞在制作と展示をされていました。会期中にちょうど行われたのか地元のマラソン大会に武内さんと出場していて、富山県美術館が所蔵するピカソ「座る女」が立って走った!というコンセプトのコスプレで走っておられました。YouTubeでも見られるので是非見て欲しいですが、なかなかシュールで周囲の反応も含めて楽しいです。
そもそも後頭部に顔を描くようになったのも、マラソンで走っているときに後ろのランナーに楽しんでもらいたいという思いからだったと記憶しています。

ここまで書いておいて何なんですが、若木さんが色物っぽく見えていたら嫌だなあ。
2019年に京都のアートゾーン神楽岡さんで行われた個展は木版画の作家としての本領を発揮した展示でした。ユーモアが単なる思いつきに堕さずにきちんと作品になっていて、そこはやはり若木さんの力だなと。展示している作品の点数がびっくりするぐらい多く、版画家としてやっていくという気概も窺えました。これからますます多方面で活躍されるのを楽しみにしています。

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